虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

春の津久井湖、蝶、蛾、イモムシ編

 京王線、JR横浜線に加えて、リニア新幹線もやってくるという橋本駅。地価も上昇して、にぎやかで便利な街になりましたね。そんな今を時めく橋本の街には目もくれず、昆虫記者はここからバスに乗って、津久井湖を目指します。

 北口の01番のバス停から三ケ木行きのバスで20分ほどで津久井湖観光センター前に到着。バスは休日でも1時間に4、5本あるので、1本乗り損ねても大丈夫。

 キアゲハがたくさん飛んでいました。キアゲハはナミアゲハより発生が早い感じがします。食草のセリ科の雑草が早春から繁茂しているからかもしれません。

f:id:mushikisya:20190430111702j:plain

成虫はこんなにナミアゲハに似た模様なのに、幼虫は姿も餌も全く違うんです。不思議。

f:id:mushikisya:20190430112014j:plain

全体に黄色いだけでなく、上翅の胴体寄りの部分が灰色に塗りつぶされているのがナミアゲハとの違い。

 バス停で降りたところです。

f:id:mushikisya:20190430112805j:plain

 右手に見えているのが、津久井湖観光センター。バス停の目の前の山側の道を上っていきます。

f:id:mushikisya:20190430112838j:plain

 上るといっても非常になだらかな坂道で、小さな子供でも、高齢者でも全く問題ありません。城山の頂上を目指すと、すこしきつい道になりますが、きつい道にはあまり虫がいないので、楽な道を選びます。

f:id:mushikisya:20190430113040j:plain

 上りはじめてすぐのエノキの幼木が、色々なイモムシの集会所のようになっていました。こういう木を見つけてしまうと、昆虫記者はしばらく動けなくなってしまいます。せっかく津久井湖まで来たのに、こんな一般人にとってはどうでもいい場所で、何10分もウロウロしてしまうのです。虫好きと一緒に風光明媚な観光地に繰り出すのは、やめた方がいいですね。きれいな風景など全く見ずに、イモムシだけ見て旅が終わる恐れもあります。

f:id:mushikisya:20190430113234j:plain

上にチャバネフユエダシャク、下にテングチョウの幼虫がいます。

f:id:mushikisya:20190430113313j:plain

チャバネフユエダシャクと言えば、真冬に発生するホルスタイン柄の羽のない♀成虫が有名ですが、幼虫の美しさも特筆ものです。

f:id:mushikisya:20190430113517j:plain

テングチョウの幼虫です。越冬した成虫がバンバン卵を産むので、春には次世代のイモムシが大量発生します。

f:id:mushikisya:20190430113743j:plain

黒っぽかったテングチョウの幼虫が脱皮して、きれいになっていました。

 春先に枝擬態していた茶色のアカボシゴマダラの幼虫が、黄緑と薄いピンクの若葉擬態の姿に変わっていました。

f:id:mushikisya:20190430114153j:plain

エノキの若葉に擬態中のアカボシゴマダラ幼虫。見つけられるでしょうか。

f:id:mushikisya:20190430114327j:plain

拡大してみましたが、やっぱり若葉にみえる。

f:id:mushikisya:20190430114620j:plain

越冬明けのテングチョウ

f:id:mushikisya:20190430114724j:plain

ミスジは終齢幼虫で越冬するので春の発生が早い

f:id:mushikisya:20190430115004j:plain

ミカンの木に産卵するナミアゲハ

f:id:mushikisya:20190430115111j:plain

胴体が赤いクロアゲハはジャコウアゲハ

f:id:mushikisya:20190430115210j:plain

ツマキチョウの♀です。春にだけ発生するツマキチョウはそろそろ姿を消します。

 虫ばかり見てないで、たまには風景も見ないとね。

f:id:mushikisya:20190430115349j:plain

下を見れば津久井湖

  八重桜の花びらが青葉の上に落ちているのかと思ったら、小さな蛾でした。

f:id:mushikisya:20190430115714j:plain

フタホシシロエダシャクのようです。

 モミジの枝先にきれいなヒゲナガガの仲間、と思ったら、顔が無精ひげに覆われていて、汚い。

f:id:mushikisya:20190430120054j:plain

髭もじゃの顔のヒゲナガガは、その名もケブカヒゲナガ

f:id:mushikisya:20190430120209j:plain

こんなに毛深い顔のケブカヒゲナガは♂だけのようです。♀がこんなに毛深かったら不気味ですよね。

f:id:mushikisya:20190430120402j:plain

ケブカヒゲナガの♂に接近してみました。この毛深さがセックスアピールになるのでしょうか。

 気味悪いものを見た後は、かわいいシジミチョウでほっと一息。

f:id:mushikisya:20190430120653j:plain

トラフシジミです。

f:id:mushikisya:20190430120716j:plain

 最後はやっぱりイモムシで締めましょう。トンボエダシャクの幼虫の列車の窓のような整然とした模様にはいつも感心します。

f:id:mushikisya:20190430121026j:plain

トンボエダシャクの幼虫。青葉の間を列車が通過。

f:id:mushikisya:20190430121111j:plain

 ヒロオビトンボエダシャクの幼虫は、さらに凝った模様です。

f:id:mushikisya:20190430121225j:plain

ヒロオビトンボエダシャクの幼虫。うーん、見事な模様だけど、目立ちすぎて鳥に食べられたりしないのか。

 

千葉の春、花盛りは虫盛り

 千葉市若葉区泉自然公園の春は、花盛りでした。植物の後を追うように小さな虫たちも盛りを迎えます。

 まずはきれいどころのカシルリオトシブミ。小さいけれど金属光沢のピカピカのオトシブミですね。

f:id:mushikisya:20190427211902j:plain

小さいけれど金ピカで接写の練習に最適のカシルリオトシブミ

 超普通種なので、近所の公園にもいるはずです。一番見つけやすいのは道端のイタドリの葉の上。揺籃を作っている時は近づいても、ポロっと落ちて逃げることが少ないので、接写の練習に最適です。

 

 公園の下の段です。大きな池があって、冬にはオシドリが来ます。カワセミが必ず見られる公園でもありますね。

f:id:mushikisya:20190427212059j:plain

 バードウォッチャーが多い公園です。虫撮りしている人は、いつも昆虫記者一人だけです。悲しい。

 蝶は越冬明けのテングチョウ。色は褪せていますが、翅に傷一つないのは立派。

f:id:mushikisya:20190427212125j:plain

越冬明けにしてはきれいな羽のテングチョウ

 春にだけ発生するツマキチョウは、菜の花と相性がいいですね。

f:id:mushikisya:20190427212236j:plain

 

 桜はソメイヨシノが終わって、シダレザクラが満開でした。

f:id:mushikisya:20190427212258j:plain

 

 この季節のタンポポの花の中には、モモブトカミキリモドキが潜り込んでいます。オスの立派な太ももは見ごたえがあります。

f:id:mushikisya:20190427212330j:plain

f:id:mushikisya:20190427212345j:plain

魅力的、肉感的な太ももを持つモモブトカミキリモドキはオスです

 サクラソウの花畑は盛りを過ぎた感じでした。

f:id:mushikisya:20190427212625j:plain

 

 春の朝方はまだ寒いので、アジサイの若葉が丸まっている中で寒さをしのいでいる虫が多くいます。朝方の虫探しの穴場ですね。

 この日は、トゲヒゲトラカミキリとケブカサルハムシが隠れていました。

f:id:mushikisya:20190427212700j:plain

f:id:mushikisya:20190427212714j:plain

よく見ると触覚にトゲがあるので、トゲヒゲトラカミキリ

f:id:mushikisya:20190427213412j:plain

ケブカサルハムシの仲間

 ニリンソウもまだ頑張っていました。

f:id:mushikisya:20190427212841j:plain

 

 菫色のスミレの群生の片隅に、ただ一人我が道を行く白いスミレ。

f:id:mushikisya:20190427212909j:plain

f:id:mushikisya:20190427212920j:plain


 こういう谷戸の風景は心が和むし、いかにも虫がいそうでいいですよね。

f:id:mushikisya:20190427212942j:plain

 畑の大敵、キスジノミハムシがいました。非常に小さいハムシですが、年に何回も世代を繰り返す繁殖力の強さから、アブラナ科の野菜の重要害虫とされています。かわいいなんて思うのは、マニアックな虫好きだけ。

f:id:mushikisya:20190427213007j:plain

アブラナ科の野菜の大敵、キスジノミハムシ

 糞虫も活動を開始していました。センチコガネです。

f:id:mushikisya:20190427213044j:plain

 

 モミジの木には冬の名残のヤマカマス。ウスタビガの繭ですね。

f:id:mushikisya:20190427213059j:plain

 

 ニンフジョウカイの仲間は早くも、子孫繁栄の活動に励んでいました。

f:id:mushikisya:20190427213112j:plain

交尾中のニンフジョウカイの仲間

 

 

月の女神、オオミズアオ羽化

 月の女神アルテミスの名を持つ妖艶な蛾、オオミズアオが4月上旬に羽化しました。

f:id:mushikisya:20190421104015j:plain

月の女神アルテミスの化身、オオミズアオが羽化

 ある日の夕刻、仕事を終えて帰宅すると、飼育容器の中でガサゴソと音がするので何事かと思ったら、オオミズアオが羽化していました。蝶は未明から早朝に羽化するのが多いですが、夜行性の蛾は夕方が羽化タイムなのかもしれませんね。

 英語ではムーンモス(月の蛾)と呼ばれるオオミズアオの仲間。学名には月の女神アルテミスの名が入っています。月夜を彩るこの蛾の美しさに魅了されるのは、世界共通のようです。

 と言っても、もちろん虫好き、蛾好きの話であって、虫嫌い、蛾嫌いの人々にとっては、妖怪変化に見えることでしょう。

 羽化直後は、まだイモムシだったころの面影が残っています。羽は短くて、太く長い腹部が異様な存在感を示していますね。

f:id:mushikisya:20190421104142j:plain

羽化直後のオオミズアオ。長く太い腹部にイモムシ時代の面影が。

f:id:mushikisya:20190421104238j:plain

手の上を歩く羽化直後のオオミズアオ。感触はイモムシ的です。

f:id:mushikisya:20190421105111j:plain

イモムシ時代のオオミズアオはこんなでした。

 実はこの異様に長い腹部が大切なのです。ここにたっぷりと蓄えられた体液を、翅脈に流し込むことで、翅を大きく広げていくからです。

 腹部が縮んでくるのと反比例するように、翅が伸びていきます。オオミズアオは大きな蛾なので、その様子が手に取るように分かりますね。「まさに生命の神秘」などと思うのは、もちろん虫好き、蛾好きだけです。

f:id:mushikisya:20190421104446j:plain

だいぶ腹部が縮んだオオミズアオ。春物のショートコートを羽織ったような姿。

f:id:mushikisya:20190421104646j:plain

f:id:mushikisya:20190421104703j:plain

 だいぶ翅が伸びて、全体に丸い和菓子のような姿になりました。この段階が一番かわいいと感じました。

f:id:mushikisya:20190421104731j:plain

f:id:mushikisya:20190421104757j:plain

 しかし、まだ、ちゃんと翅が伸び切るのか心配です。育ての親の親心ですね。体液が足りないと、翅が伸び切らず、いわゆる羽化不全となっててしまいます。

f:id:mushikisya:20190421104846j:plain

 ここまで羽が伸びてくれば、もう安心。

f:id:mushikisya:20190421104906j:plain

f:id:mushikisya:20190421104924j:plain

 閉じていた羽を開くようになったら、ほぼ羽化終了です。

f:id:mushikisya:20190421104947j:plain

f:id:mushikisya:20190421105010j:plain

f:id:mushikisya:20190421105034j:plain

 月夜の晩に、月に向かって飛んでいくのでしょうか。かぐや姫の昔話「竹取物語」は、もしかすると、一所懸命オオミズアオの幼虫を育て、月夜の晩に蛾になって去っていく姿を、涙ながらに見送った人の話なのかもしれません。きっと平安時代にも虫好き、蛾マニアはいたのでしょう。

今頃モズの高鳴き

 千葉市若葉区泉自然公園付近の田園地帯。4月も半ばというのにモズが高鳴きしていました。餌場の縄張りを主張する強欲なモズの、勝ち誇ったような高鳴きは、秋から冬の風物詩と思っていたのですが、春本番に聞いたのはこれが初めて。

f:id:mushikisya:20190414110214j:plain

大口を開けて高鳴きするモズ

 キチキチキチというあの独特の鳴き方は、キチキチバッタ(ショウリョウバッタの♂)が飛ぶときの音を拡声器でボリュームアップしたような感じですね。電線がショートして火花を散らす音のようでもあります。

 わりと近くから撮れたので、声を張り上げる様子をアップでお伝えします。

 口の中の赤色が目立ちますね。くちばしの下にも赤い部分があるのことに初めて気づきました。かなり大口を開けないと、露出しない部分なのかもしれません。

f:id:mushikisya:20190414110357j:plain

f:id:mushikisya:20190414110451j:plain

 近くに♀らしきモズがいたので、繁殖期に巣の周辺の縄張りを守るためにも高鳴きをするのかもしれませんね。

f:id:mushikisya:20190414110519j:plain

近くにいた♀らしきモズ。ズームしている暇がなく、ボケボケ。

 ♀らしきモズはさかんに田んぼのあぜ道に降りて、餌を探していました。

 たぶんこんなアマガエルが餌食になるのでしょう。

f:id:mushikisya:20190414110704j:plain

 ついでに、近くの泉自然公園の池で甲羅干しする亀です。この写真を含め、目にした数十匹は全部ミドリガメ(アカミミガメ)でした。まだ特定外来生物に指定されていないのが不思議ですね。あまりに数が多すぎて(日本中の池に居る亀と言えば、ほぼすべてミドリガメ)いまさら対策が不可能なのかもしれません。

f:id:mushikisya:20190414110758j:plain

f:id:mushikisya:20190414110816j:plain

 私が子供のころには、公園の池で日向ぼっこしているのは、クサガメかイシガメかスッポンだったものです。今の子供たちはきっと、亀と言えばミドリガメと思っているに違いないですね。グローバル化の弊害、伝統、文化の駆逐とよく似た状況という気がするのは、昆虫記者だけでしょうか。

春の小石川植物園、見どころベスト30(基準は昆虫記者の独断と偏見)

 春の小石川植物園で必見のお勧めトップ30をご紹介しましょう。なにせ、入園料が数年前に値上げされ、今や大人400円。できればベスト40ぐらい探し出して、1件当たりの料金を10円ぐらいに抑えないと、コストパフォーマンスが悪いですよね。桜だけ見て帰ったらもったいない。

 しかし、昆虫記者が選ぶベスト30ですから、当然トップ10は昆虫系です。引き続いて、11~20位の植物、21位から30位の風景を紹介するという、まさに独断と偏見のペスト30です。すべて4月6日(土)に撮った写真です。

★1位=ツマキチョウ

 まず、小石川の春と言えばツマキチョウ。栄えある第1位です。

f:id:mushikisya:20190407090754j:plain

春にだけ現れる蝶、スプリングエフェメラルの中で都心で簡単にみられるのが、このツマキチョウ

 飛んでいるとモンシロチョウと間違えがちですが、よく見ると、羽先の黄色い紋がチラチラしているのに気づくはずです。小石川ではこの季節、モンシロより多いので、是非見つけて下さい。

f:id:mushikisya:20190407091318j:plain

飛んでいるとモンシロに見えるが、羽先の黄色に注目。イチロー選手並みの動体視力が要求されます。

 さらに厄介なのが、草原でとまった時の擬態。羽の裏側は、若葉の緑と春の陽光、白い小さな花々といった風景の中に溶け込んでしまう迷彩服模様なのです。

f:id:mushikisya:20190407091804j:plain

小石川のツマキチョウは、特にユキヤナギの中に隠れるのが得意。見事な擬態です。

f:id:mushikisya:20190407091936j:plain

画面左下に擬態中のツマキチョウがいます。

 しかし、擬態している時は、擬態に絶対の自信を持っているので、10センチぐらいの距離まで近づいても逃げないことが多いです。接写のチャンスですね。

f:id:mushikisya:20190407092152j:plain

擬態中は接写のチャンス。マクロでも撮れます。

 そしてもう一つやっかいなのが、ツマキチョウの♀です。メスには黄色の斑紋がないので、羽の表側はほぼモンシロチョウです。

f:id:mushikisya:20190407092422j:plain

ツマキチョウの♀が飛んでいると、モンシロと見分けがつきにくい。

 とまったら、羽裏の模様でやっとツマキチョウだと分かります。

f:id:mushikisya:20190407092604j:plain

静止した♀のツマキチョウ

f:id:mushikisya:20190407092711j:plain

同好の士が二人、ユキヤナギの前でツマキチョウを狙っていました。

★2位=イタドリハムシ

 食用にもなるイタドリ、別名スカンポが地面からタケノコのような芽を出してくると、どこからかイタドリハムシが飛んできます。

 オレンジと黒の粋な模様は、テントウムシを連想させますが、長い触覚がハムシであることを主張しています。

f:id:mushikisya:20190407093349j:plain

イタドリの葉の上に鎮座するイタドリハムシ。虫撮りは植物の勉強にもなりますね。

f:id:mushikisya:20190407093517j:plain

葉裏のイタドリハムシ。これから食事に入るようです。

f:id:mushikisya:20190407093705j:plain

イタドリよりシダの方がつかまりやすいようで、近くのシダにもイタドリハムシがたくさんいました。

★3位=ビロードツリアブ

 春に花畑でホバリングしている毛玉のような虫がビロードツリアブです。ハナダイコンの花に集まっていました。

f:id:mushikisya:20190407094252j:plain

ハナダイコンの蜜を吸うビロードツリアブ。

 毛玉と呼ぶと可愛いですが、どちらかと言えば、空飛ぶタワシですね。

f:id:mushikisya:20190407094539j:plain

ビロードツリアブは空飛ぶタワシ。

f:id:mushikisya:20190407094827j:plain

地面にいる時は、口先が針のようでちょっと強面のビロードツリアブ。

★4位=ツツジトゲムネサルゾウムシ

 これも春限定の虫ですね。ツツジのつぼみを食害し、つぼみに産卵するという、ツツジの大敵です。でも小さな虫なので、多少の悪さは大目に見ましょう。

f:id:mushikisya:20190407095538j:plain

ベタベタのツツジのつぼみの上を平気で歩ける技を持つツツジトゲムネサルゾウムシ。

f:id:mushikisya:20190407095640j:plain

f:id:mushikisya:20190407095703j:plain

この長い口でツツジのつぼみをブスブスします。

★5位=アカボシゴマダラ幼虫

 エノキの若葉が出始めるころ、落ち葉の下や物陰で越冬していたアカボシゴマダラの幼虫が、木に登り始めます。そして、枝の股の部分などで、春の衣装に着替えるまでの間、こうしてじっとしていることが多いようです。

f:id:mushikisya:20190407100154j:plain

小枝の股の部分に越冬明けのアカボシゴマダラの幼虫がいます。

f:id:mushikisya:20190407100357j:plain

エノキの葉が伸びるまでは枯れ枝擬態ですが、若葉が茂ると今度は若葉擬態になるので、次の段階も楽しみですね。

★6位=ヒメアカタテハ

 東京では成虫越冬は難しいと言われていたヒメアカタテハですが、最近は気温上昇で、もしかすると成虫越冬したのではという個体を時々見かけます。

f:id:mushikisya:20190407103127j:plain

産卵するためのヨモギの新芽を探しているのかも。

★7位=ミノウスバの幼虫

 小石川では毎年、マユミの木にミノウスバの幼虫が大量発生します。おかげでマユミの木は悲惨な状態になります。

f:id:mushikisya:20190407103609j:plain

ミノウスバの幼虫の集団攻撃はすさまじい。マサキ、マユミなどがボロボロにされます。

★8位=ナナホシテントウ

 気味悪いイモムシ集団の後は、口直しにナナホシテントウです。

f:id:mushikisya:20190407103837j:plain

★9位=ムーアシロホシテントウ

f:id:mushikisya:20190407104214j:plain

一番よく目にする小柄なシロホシテントウの仲間。

★10位=モンシロチョウ

 ツマキチョウより少し大きい。ツマキチョウよりもゆっくり飛んで、よく花にとまるので、花にいる蝶を「もしやツマキチョウ」と思って撮ると、たいていモンシロでがっかりします。

f:id:mushikisya:20190407104715j:plain

★番外

f:id:mushikisya:20190407104801j:plain

テントウの中でも、とてつもなく小さいのがヒメテントウの仲間。これはたぶんアトホシヒメテントウ。

f:id:mushikisya:20190407105127j:plain

サクラの花を食べていた蛾の幼虫。以前名前を調べたが、もう忘れてしまった。

 以下11位からは、植物です。なにせ小石川植物園ですからね。たとえ11位以下とは言え、植物を観なければ400円の入園料の意味がありません。

 

★11位=堂々の11位は、もちろん桜です。春と言えば花見、花見と言えば桜です。

f:id:mushikisya:20190407105701j:plain

★12位=オドリコソウ

 ここで目立たない日陰に咲く花、オドリコソウをもってくるあたり、日陰者の昆虫記者らしいですね。

f:id:mushikisya:20190407110035j:plain

白鳥の湖バレリーナの乱舞のようなオドリコソウの花

f:id:mushikisya:20190407110132j:plain

でも実際は、傘をかぶった日本の踊子の集団らしいです。阿波踊りとか。

★13位=ウマノスズクサの仲間

 ちょっとウツボカズラに似ているウマノスズクサの花。小石川にジャコウアゲハがよく飛んでいるのは、色々なウマノスズクサの仲間が植えてあるからですね。

f:id:mushikisya:20190407110649j:plain

★14位=シロバナタンポポ

 小石川では白い花のタンポポをよく見かけます。主流の黄色いタンポポの攻勢に、必死で抵抗している感じが好きです。

f:id:mushikisya:20190407110943j:plain

★15位=タラヨウ

 タラヨウの注目は花ではなく、葉裏です。郵便局の木と呼ばれるタラヨウ。その大きな葉の裏側に尖った物で字を書くと、しばらくしてインクで書いたようにきれいな字が浮かび上がります。葉書の代わりにもなるので、郵便局の木なんですね。

f:id:mushikisya:20190407111353j:plain

f:id:mushikisya:20190407111440j:plain

たくさん落書きがあります。

f:id:mushikisya:20190407111528j:plain

ただし、合格祈願は葉が落ちるリスクがあるので、危険かも。

★16位=もみじ

 小石川には、モミジのトンネルがあります。秋は美しでしょうか、花の咲く春もまた、見頃ですね。

f:id:mushikisya:20190407111910j:plain

f:id:mushikisya:20190407111938j:plain

★17位=椿

 冬の花のツバキですが、春に満開になるのもあるようです。

f:id:mushikisya:20190407112110j:plain

f:id:mushikisya:20190407112133j:plain

 ツバキはきれいですが、お見舞いにはタブーとされています。花が丸ごとボトッと落ちるのが、息絶える様子を連想させるからとか。それに赤いのは特に、血を連想させるので、ダメらしいです。

f:id:mushikisya:20190407112451j:plain

 こういう落ち方がダメなんですね。

★18位=ツツジ

 もう満開のツツジも多いですね。季節の変化は迅速です。

f:id:mushikisya:20190407112714j:plain

f:id:mushikisya:20190407112745j:plain

葉が出るより先に花が咲くタイプのツツジは満開が早い。

★19位=シャガ

 アヤメ、ハナショウブの小型版みたいなシャガもこの季節の定番ですね。

f:id:mushikisya:20190407113211j:plain

★20位=カリン

 可憐なカリンの花。ゲゲゲの鬼太郎の下駄の音みたいですね。からーん、からーん、からん、からん、ころん。

f:id:mushikisya:20190407113730j:plain

★番外

ヤマナシ

f:id:mushikisya:20190407113836j:plain

ミズバショウ

f:id:mushikisya:20190407113947j:plain

なんと、小石川にはミズバショウもあるんです。

ニリンソウ

f:id:mushikisya:20190407114100j:plain

 21位からは風景です。都心の比較的小さな植物園なのに、豊かな自然に囲まれたような感覚になれるのは不思議ですね。

★21位=花見

 春ですから、まずは花見の風景。400円払っての花見ですから、比較的すいていることを期待しているのでしょうが、結構盛況です。

f:id:mushikisya:20190407114556j:plain

f:id:mushikisya:20190407114657j:plain

★22位=日本庭園から東大総合博物館分館を望む

f:id:mushikisya:20190407115113j:plain

そういえば、ここは東大の付属植物園なんですね。

★23位=桜の花を背景にコゲラ

f:id:mushikisya:20190407115356j:plain

小さなキツツキのコゲラ。春は桜を背景に。

f:id:mushikisya:20190407115458j:plain

 写真は撮れなかったけど、ちゃんと木の中の虫を捕まえて食べてました。

★24位=高台から日本庭園を望む

f:id:mushikisya:20190407115731j:plain

この高低差が小石川の魅力の一つ。でも斜面を迷路のように走る小道を上り下りすると疲れる。

★25位=温室

 温室はリニューアル工事中でした。なんだかとっても立派な温室ができそう。

f:id:mushikisya:20190407120130j:plain

★26位=柴田記念館

f:id:mushikisya:20190407120410j:plain

この正面にシダ園がある。

★27位=深い森

f:id:mushikisya:20190407120629j:plain

園の奥の方には結構深い森もある。

★28位=大震災記念石

f:id:mushikisya:20190407120838j:plain

関東大震災の際には3万人以上がこの植物園に避難したという。

29位=ニュートンのリンゴ

f:id:mushikisya:20190407121319j:plain

ニュートン万有引力に気付いた生家のリンゴの木の末裔らしいです。

★30位=メンデルのブドウ

f:id:mushikisya:20190407121614j:plain

遺伝学の基礎を築いたメンデルが実験に使ったブドウの木の末裔とのこと。

★番外

池の鯉

f:id:mushikisya:20190407121805j:plain

日本庭園の池には錦鯉とか食用ガエルのオタマジャクシとか亀とかがいます。

f:id:mushikisya:20190407121921j:plain

よく見えませんが、食用ガエルのオタマジャクシです。

 以上、お付き合いありがとうございました。これで400円の入園料を払う前の、心の準備と、散策プランはできたでしょうか。お役に立てれば幸いです。

サイヨーク、エラワン、泰緬鉄道の虫旅⑩

◎サイヨーク、エラワン、泰緬鉄道の虫旅⑩

◆忙しい朝、交互に食事と虫撮り

 ホテルのレストランは、クウェーノイ川を見下ろす絶景の場所にあり、美女が手すりに寄りかかって川面を眺めていたりすると、見事な絵になる。もちろん、そういうシーンはホテルの宣伝用であって、現実はそれほど甘くないから、変な期待は抱かない方がいい。

 しかし、朝食時のレストランのテラスでは、もっと素晴らしい、魅惑のシーンが展開されていた。テラスの木に赤い小さな花がたくさん咲いていて、そこに朝方、次々と蝶(チョウ)や野鳥がやって来るのだ。

f:id:mushikisya:20190331081224j:plain

熱帯を感じさせる鳥、キバラタイヨウチョウ。ホテルのテラスで朝食を食べながら、こんなのが見られてしまう幸せ。

 新しい種類が飛んで来るたびに、食事はそっちのけで、カメラを抱えて飛び出し、写真を撮る。朝食時間はとんでもなく忙しいのだ。オムレツを口に運ぶと、きれいな鳥が飛んで来る。席を立ってパチリ。席に戻ってコーヒーを一口。ツマベニチョウがやって来て、また席を立つ。そんな連続である。極めて消化に悪い。

f:id:mushikisya:20190331081929j:plain

ホテルのレストランも広大。ここから鳥や蝶の来る木を監視できる。

f:id:mushikisya:20190331082359j:plain

クウェーノイ川を見下ろすテラスでも食事ができる。

 朝食の内容はビュッフェ形式だったり、アメリカン・ブレックファストだったりと、日替わりでなかなか充実していたのだが、その味を覚えていないくらい、虫撮りで多忙だった。これこそまさに熱帯のホテルのあるべき姿ではないか。テラスから見える風景が雑然としたビル街と渋滞の車列では、熱帯の地に来た意味がない。

 しかし、昆虫記者のような落ち着きのないマナーの悪い客は、ホテルのスタッフには非常に迷惑である。食事途中で何度も席を立つので、食べ終わったのか、食器を片付けていいのかどうか分からず、スタッフは右往左往することになる。「早く消えてくれ」「二度と来るな」などと陰口をたたいていたに違いない。お客様に対して、大変失礼である。

 ツマベニチョウがやたらと多い。ツマベニチョウは、シロチョウの仲間では最大で迫力がある上、羽先のオレンジ色が鮮やかで、いかにも熱帯的だ。

f:id:mushikisya:20190331082641j:plain

グレート・オレンジ・ティップことツマベニチョウ。シロチョウの仲間としては最大で、確かにグレートだ。

 よく見ると、後ろ羽に黒い紋をちりばめた味のある模様のツマベニチョウが何匹か混じっている。これはメスの特徴だ。これまではオスとメスの違いを気に留めていなかったのだが、多数が群れ飛んでいると、違いが際立つ。

f:id:mushikisya:20190331083046j:plain

ツマベニチョウの♀は後ろの羽の黒い紋が目立つなかなかの美人。

 アナイスアサギシロチョウやシロオビアゲハもやって来る。一度だけキシタアゲハも来た。

f:id:mushikisya:20190331083700j:plain

アナイスアサギシロチョウの♂。涼し気な蝶だが、忙しく飛び回るのが難。

f:id:mushikisya:20190331083952j:plain

アナイスアサギシロチョウの♀。♂とは雰囲気が違って、マダラチョウの仲間のように見える。

 タイヨウチョウという色鮮やかな鳥も常連だ。頭が赤いのはキゴシタイヨウチョウ、黄緑色の頭はキバラタイヨウチョウというらしい。鳥を見に来たわけではないのだが、色鮮やかな鳥たちがテラスに現れては、撮らないわけにはいかないではないか。これでは食事がちっとも進まない。

f:id:mushikisya:20190331084252j:plain

たぶんキゴシタイヨウチョウ。真っ赤な上半身が情熱的。

◆食卓の暗殺者

 食事時に気を付けなければならないのは、暗殺者がたくさんいることだ。暗殺者は、レストラン屋外のテーブル周辺に多い。非常に危険である。

 昆虫記者は重要人物であるから、その命を狙う者も多い。しかし、このホテルで必殺の一撃の標的となるのは、人間ではなくアリなどの小さな虫だ。残虐な無法者は「アサッシン(暗殺者)バグ」と呼ばれるサシガメの仲間である。中でも、遺体を大量に背中に積み上げている極悪の暗殺者が、アサッシンバグの代表格とされる。

 主な標的はアリなので、特にこの種類のサシガメは「アントスナッチング(アリを誘拐する)・アサッシンバグ」という通り名を持つ。積み上げた遺体の数は半端ではない。数十はあるだろう。アリは小さいながらも強力な牙を持っており、かなり手ごわい相手だと思うのだが、そんな相手をどうやって倒すのか見てみたかった。

f:id:mushikisya:20190331085034j:plain

しゃれこうべを背負った暗殺者。アント・スナッチング・アサッシン・バグ。

文献によると、アリが足元に寄ってきたところで、体勢を変えてアリの後頭部、首のような部分に口吻(こうふん)を突き刺して仕留めるらしい。小さな幼虫でも、自分の体より大きなアリを仕留めるという。

 サシガメが歩いていると、まるで、ほこりの塊が動いているように見える。擬態の一種らしい。たしかにカメムシの仲間には見えない。

 暗殺者は普通、それと分からないよう一般人のふりをしているものだ。狙われる側の昆虫記者も、普段は重要人物だと気付かれて騒がれないよう、一般人に紛れ込んでいる。しかし、アサッシンバグはまるで首狩り族のように、暗殺の成果を見せびらかしている。暗殺者というより、西部劇の賞金稼ぎに近い。

 日本でもクサカゲロウの仲間の幼虫が、獲物の遺体を背中に積み上げているのをよく目にするが、彼らの獲物のほとんどはアブラムシなどの弱者である。アブラムシはアリと比べると、あまりに弱々しい。いやらしいアブラムシを退治してくれるのは、園芸家にはありがたい限りだが、昆虫界の出来事として見ると、やや弱い者いじめの感がある。それに比べ、アリを倒すサシガメはやはり、アサッシンバグと呼ばれるだけのことはある。

f:id:mushikisya:20190331085341j:plain

同じサシガメの仲間でも、体中にゴミをくっつけている種類もある。

f:id:mushikisya:20190331085514j:plain

こうなると、ただのゴミのかたまりが動いているようにしか見えない。

◆昼間のホテル散策路はハムシ天国

 朝食後と夕食前、時間があればホテルの敷地内を散策する。昆虫記者以外、誰も歩いてはいない。こんなに涼しげな川があり、滝があり、水遊びしている人々の嬌声が響き渡るサイヨークで、ジャングルトレッキングをしようなどという者は、誰もいないのだ。

f:id:mushikisya:20190331090017j:plain

涼しく過ごしたい人のために、ちゃんとプールもある。

f:id:mushikisya:20190331090205j:plain

この広い池もホテルの敷地の一部。

f:id:mushikisya:20190331090311j:plain

池の上では巨大ターザンロープが楽しめる。

 だらだらと汗を流して、蒸し暑い密林の中を、虫を求めてさまよう者はゼロなのである。だから、そうした記事はないし、虫の写真など一枚もない。そんな行為は、例えて言えば、ウオータースライダーやジャクジーもある屋外プールに遊びに来たのに、涼しげな水しぶきを上げる人々を横目に、プールの外周を汗みどろでジョギングしているようなものだ。まさに苦行だ。昆虫の道を究めんとする求道者の姿だ。

 川沿いのホテルや施設は、互いに森の中の散策路でつながっていので、どこまでも果てしなくジャングルを歩いて行ける。しかし、歩いている物好きな観光客は一人もいなかった。たまに歩いているのは、畑で果物や野菜を収穫するホテル関係者か、周辺のジャングルに住むモン族の人々ぐらいである。

 ここは、入場料が必要なサイヨーク国立公園の本部周辺やエラワン国立公園より、自由度が高い。猛獣も多分いないから、毎日安心して虫探しができる。無料の熱帯昆虫園のようなものだ。このようなジャングルに囲まれたホテルは意外に少なくて、貴重な存在だ。

 ホテルの敷地内には、カメノコハムシ系の平べったいハムシが多かった。キラキラ系からテントウムシのような少女趣味系まで、より取り見取りでうれしい。そんな人々が存在するのかどうか知らないが、カメノコハムシ・ファンにはたまらないだろう。

f:id:mushikisya:20190331091029j:plain

少女趣味系のカメノコハムシ

f:id:mushikisya:20190331091140j:plain

すさまじい数の力で、葉を食い荒らしていく。

f:id:mushikisya:20190331091338j:plain

カメノコハムシの幼虫は、糞や脱皮殻で作った隠れ家を背負っている。

f:id:mushikisya:20190331091705j:plain

金色のハムシを指乗せ

f:id:mushikisya:20190331091831j:plain

交尾中の金色のカメノコハムシ

f:id:mushikisya:20190331092119j:plain

これも金色系。日本のカメノコハムシに近い。

f:id:mushikisya:20190331092245j:plain

複雑な模様のカメノコハムシ。ジグソーパズル系とでもしておこう。

f:id:mushikisya:20190331092607j:plain

ほかに、こんなオレンジ色のとか。

f:id:mushikisya:20190331092644j:plain

黄色と黒のまだら模様のとか、ともかくカメノコハムシの種類が豊富。

 日本のハムシには、暑い夏の間は夏眠するものが多いようだが、熱帯で夏眠していたら、一生眠り続けることになる。だから、熱帯のハムシは猛暑の中でも平気で活動している。

 春、秋の気候のいい時期にだけ活動する日本のハムシはぜいたく者であり、熱中症になりやすい虚弱体質だ。今後、日本の夏はもっともっと暑くなりそうだから、春も秋もなくなるかもしれない。日本のハムシも真夏でも元気はつらつとなるよう、鍛え直す必要がありそうだ。

 ゴマダラオトシブミの仲間もいた。知らなかったのだが、東南アジアのゴマダラオトシブミの仲間は、黒い斑点の部分がトゲになっているのが多いらしい。よく見ると、確かにトゲだらけである。

f:id:mushikisya:20190331093102j:plain

トゲだらけのゴマダラオトシブミの仲間。ハムシにはトゲトゲという仲間がいるが、オトシブミにもこんなのがいるとは。

 しかし、このオトシブミはよく飛ぶので近づくのが難しく、トゲだらけの姿を写真に納めるのに苦労する。それでも、全然飛ばないやつをようやく見つけて、接写できた。下羽が少し羽化不全で、上羽からはみ出していたから、恐らく飛行能力がないのだろう。こういう手負いの相手としか対等に戦えないのが、昆虫記者の実力である。

ゴマダラチョウ幼虫、枝先で再冬眠

 3月23日の土曜日は、季節外れの寒い一日でした。春の虫が動き出したかと期待して出かけた埼玉・秋ヶ瀬公園では何と、雹が降っていました。

 昆虫記者もブルブルでしたが、虫もブルブル。エノキの小枝が枝分かれしている位置で、ゴマダラチョウの幼虫が、まだ越冬時の茶色のまま、固まっていました。落ち葉の中で一度目覚めて木に登ってはみたものの、まだ若葉も出ていなくて、しかもこの寒さ。枝に擬態するようにして、再び越冬モードに入ったようです。2度寝は体に悪いと思うのですが。

f:id:mushikisya:20190324212342j:plain

一度目覚めて、再度冬眠か。2度寝状態のゴマダラチョウ幼虫

f:id:mushikisya:20190324212521j:plain

木のコブにしか見えないゴマダラチョウ幼虫

 クヌギの太い幹の樹皮の割れ目の中では、クヌギカメムシの幼虫が孵化していました。これも寒そうで、微動だにしません。若葉が出る時期までは、このままの場所で卵を包んでいたゼリーの養分で生きながらえていくのでしょう。

f:id:mushikisya:20190324212644j:plain

クヌギの樹皮の割れ目で孵化したクヌギカメムシ幼虫

f:id:mushikisya:20190324212745j:plain

 羽化したばかりと見えるベニシジミとモンシロチョウも、草の葉の陰でじっとしているだけで、カメラのレンズを近づけても逃げようともしません。

f:id:mushikisya:20190324212820j:plain

f:id:mushikisya:20190324212845j:plain

 そんな中で唯一元気なのが、春一番に目覚めるコガタルリハムシですね。メスの奪い合いの喧嘩があちこちで展開されていました。既に卵もどっさり産みつけられていて、かなり大きな幼虫の姿も見られました。すぐに夏眠に入ってしまう暑さに弱いハムシなので、急いで繁殖を終えないといけないのでしょう。寒いなんて言ってられない状況のようです。

f:id:mushikisya:20190324212918j:plain

コガタルリハムシのメスの奪い合い。乱闘状態ですね。

f:id:mushikisya:20190324213111j:plain

投げ技も繰り出します。

f:id:mushikisya:20190324213201j:plain

無事交尾を終えた♀は産卵へ

f:id:mushikisya:20190324213305j:plain

この時期のギシギシの葉裏は、コガタルリハムシの卵だらけ。

f:id:mushikisya:20190324213433j:plain

幼虫もびっしり

 土手の上は菜の花の花盛り。サクラソウ自生地では、ぽつぽつとサクラソウの花が咲き始めていました。寒くても季節は確実に春真っただ中です。

f:id:mushikisya:20190324213514j:plain

f:id:mushikisya:20190324213603j:plain