〇稲作農家の大敵?、イネクビボソハムシのささやかな人生
水田風景は日本人の心の故郷ですね。そして、農家にとっては大切な収入源、イネクビボソハムシにとっては生活の場そのものです。
緑の森に囲まれた水田。谷戸の風景はいつ見ても心に染みます。老後資金2000万円問題で「死ぬまで働け」と命令されている昆虫記者の傷ついた心も癒してくれます。
しかしもちろん、こうした水田の風景は、傷心を癒すために存在しているのではありません。農家の大切な収入源、日本人の大切な食糧源なのです。関東では日照時間が異常に短かった今年の夏。作柄は大丈夫でしょうか。豊作を祈りたいですね。
そして水田は、イネクビボソハムシの住処でもあります。農家にとってイネクビボソハムシは、イネの葉を食い荒らす害虫。昆虫記者にとっては可愛いハムシも、農家にとっては憎き親の仇のような存在なのです。
でもイネクビボソハムシは小さな虫なので、農家の大敵というほどではないかもしれません。せいぜい小敵でしょう。
7月の千葉の谷戸にいたイネクビボソハムシの幼虫です。農作業ではねた泥のように見えますね。これは自分の糞を背中に背負っているのです。なので、別名イネドロオイムシとも呼ばれます。
イネの葉に食痕の白い筋が入っているのが、犯行の証拠。泥のかたまりが、実は泥に化けた害虫であることの証拠です。
幼虫はやがて、イネの葉の上に、こんな綿菓子のような蛹室を作って蛹になります。
蛹室に穴が開いていたら、成虫が無事誕生したということです。
そして成虫誕生。
最近は害虫駆除の技術が進歩したので、イネクビボソハムシを見かける機会は少なくなったようです。それでも、丹念に探すと(そんな暇があったらもっと有意義な時間を過ごした方がいいです)広い田んぼのどこかにイネクビボソハムシの姿があります。われわれ日本人と同様に、イネに依存して生きる小さなイネクビボソハムシに共感がわきます…などと言うのは虫好きだけ。普通は反感がわきます。