連休真っただ中。GO TO キャンペーンですね。さあ出かけましょう。と言っても東京都民は外出はなるべく自粛。それでも、昆虫記者はGO TO 虫撮りキャンペーンです。とか言って、遠出するわけではありません。近場も近場、超近場。なんと自宅前のプラタナス並木の見回りです。
すると、今年もやっぱりいました。都心のプラタナスの並木を次々に枯らしている大悪党、ゴマダラカミキリです。我が家の前に延々1キロほど続いているプラタナス並木も4分の1ほどが、枯れて伐採されてしまいました。
今年は運よく、産卵の現場に立ち会うことができました。「大害虫の産卵を許していいのか!」と江東区役所あたりから、怒号が聞こえてきそうですね。でも、こちらは昆虫記者なので、プラタナス並木の被害よりも、産卵の様子を観察したいという研究者(誰が?)としての興味が先に立ちます。
プラタナスの葉を食べる害虫は、葉を茶色く枯らすプラタナスグンバイが良く知られていますが、このゴマダラカミキリはもっと厄介です。成虫が葉や枝をかじるのは、プラタナスの大木にとっては痛くもかゆくもないでしょうが、ゴマダラカミキリの幼虫は、プラタナスの太い幹に食い込んで、木の内部をボロボロにしてしまうのです。弱ったプラタナスは台風などの大風で簡単に倒れてしまいます。道路の並木が倒れると大変なので、ゴマダラカミキリの被害が甚大な木は、切り倒すしかないというわけです。
もともと、ミカンやクワ、イチジク、バラなどの害虫として知られていたゴマダラカミキリですが、街路樹としてプラタナスが日本中に植えられたのを目にして、「ちょっと試しにかじってみたら、意外に美味しいじゃないか」ということになったようで、あちこちで被害を引き起こしています。
中央区に住んでいた時も、何匹もプラタナスで見つけたし、江東区の並木では、毎年お目にかかります。
今年は運よく産卵シーンに立ち会うことができました。江東区役所あたりから「大害虫の産卵を許していいのか」という怒号が聞こえてきそうですね。でもこちらは昆虫記者なので、プラタナス並木の被害よりも、産卵の様子を観察したいという研究者(誰が?)としての興味が先に立ちます。
プラタナスの太い幹にドドーンとゴマダラカミキリが張り付いていたら、これはほぼ確実に産卵態勢です。
まず鋭い牙で幹に傷を付けて、姿勢を変えてから、その噛み跡にお尻を突っ込み、産卵管を突き出して卵を産み付けます。
というのは、机上の知識ですね。本当に穴に産卵管を突っ込んでいるのか、調べてみる必要があります。そこで、産卵中と思われるゴマダラカミキリを木から引き離してみました。産卵中に捕獲するなんて、虐待行為だ、人道に対する罪だ、残酷すぎる、といった非難が自然保護団体から上がるかもしれません。しかし、相手は大害虫、大悪党です。しかも人間ではなく、虫です。情け容赦は不要なのです。
確かに産卵管を穴に突っ込んでいました。現行犯逮捕ですね。
現行犯逮捕された大害虫は死すべしです。道路にでも放り投げられて、車に引き殺されるのがいいでしょう。
しかし、ここで昆虫愛好家としての良心が復活します。一寸の虫にも五分の魂。やれ打つなハエが手をする足をする。偉いお坊さんは、虫を殺すことさえ、殺生として慎むと言うではありませんか。
突然博愛の精神に目覚めた昆虫記者は、ゴマダラカミキリをもと居たプラタナスの木に戻してやります。
「バカヤロー、何てことをするんだ!」という怒号が江東区役所方面から響いてきますが、気にすることはありません。自然界はすべてバランスの上に成り立っているのです。自然を勝手に作り変えた人間の方が悪いのです。人間が作り変えた人工的並木の景観に必死で順応しようとしているゴマダラカミキリに罪はありません。