虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

都心のプラタナス並木を枯らす大害虫にのし上がったゴマダラカミキリ

 連休真っただ中。GO TO キャンペーンですね。さあ出かけましょう。と言っても東京都民は外出はなるべく自粛。それでも、昆虫記者はGO TO 虫撮りキャンペーンです。とか言って、遠出するわけではありません。近場も近場、超近場。なんと自宅前のプラタナス並木の見回りです。

 

 すると、今年もやっぱりいました。都心のプラタナスの並木を次々に枯らしている大悪党、ゴマダラカミキリです。我が家の前に延々1キロほど続いているプラタナス並木も4分の1ほどが、枯れて伐採されてしまいました。

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都会のプラタナス並木の大害虫、ゴマダラカミキリ。悪党らしい黒装束ですね。

 今年は運よく、産卵の現場に立ち会うことができました。「大害虫の産卵を許していいのか!」と江東区役所あたりから、怒号が聞こえてきそうですね。でも、こちらは昆虫記者なので、プラタナス並木の被害よりも、産卵の様子を観察したいという研究者(誰が?)としての興味が先に立ちます。

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都会の人は虫に無関心なので、こんなに大胆に並木に止まる大きな虫に誰も気づきません

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ゴマダラカミキリの前を車や自転車が通り過ぎていきます

 プラタナスの葉を食べる害虫は、葉を茶色く枯らすプラタナスグンバイが良く知られていますが、このゴマダラカミキリはもっと厄介です。成虫が葉や枝をかじるのは、プラタナスの大木にとっては痛くもかゆくもないでしょうが、ゴマダラカミキリの幼虫は、プラタナスの太い幹に食い込んで、木の内部をボロボロにしてしまうのです。弱ったプラタナスは台風などの大風で簡単に倒れてしまいます。道路の並木が倒れると大変なので、ゴマダラカミキリの被害が甚大な木は、切り倒すしかないというわけです。

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ゴマダラカミキリの被害。こうなったプラタナスはもう切り倒すしかない

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伐採されたプラタナスの切り株。根元までゴマダラカミキリ幼虫の食害がみられる

 もともと、ミカンやクワ、イチジク、バラなどの害虫として知られていたゴマダラカミキリですが、街路樹としてプラタナスが日本中に植えられたのを目にして、「ちょっと試しにかじってみたら、意外に美味しいじゃないか」ということになったようで、あちこちで被害を引き起こしています。

 

 中央区に住んでいた時も、何匹もプラタナスで見つけたし、江東区の並木では、毎年お目にかかります。

 

 今年は運よく産卵シーンに立ち会うことができました。江東区役所あたりから「大害虫の産卵を許していいのか」という怒号が聞こえてきそうですね。でもこちらは昆虫記者なので、プラタナス並木の被害よりも、産卵の様子を観察したいという研究者(誰が?)としての興味が先に立ちます。

 

 プラタナスの太い幹にドドーンとゴマダラカミキリが張り付いていたら、これはほぼ確実に産卵態勢です。

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プラタナスの太い幹をかじって、産卵のための穴をあけています

 まず鋭い牙で幹に傷を付けて、姿勢を変えてから、その噛み跡にお尻を突っ込み、産卵管を突き出して卵を産み付けます。

 

 というのは、机上の知識ですね。本当に穴に産卵管を突っ込んでいるのか、調べてみる必要があります。そこで、産卵中と思われるゴマダラカミキリを木から引き離してみました。産卵中に捕獲するなんて、虐待行為だ、人道に対する罪だ、残酷すぎる、といった非難が自然保護団体から上がるかもしれません。しかし、相手は大害虫、大悪党です。しかも人間ではなく、虫です。情け容赦は不要なのです。

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体勢を変え、かじって開けた穴にお尻を突っ込んで産卵するゴマダラカミキリ

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確かに産卵管を穴に挿入していました。現行犯逮捕です。

 確かに産卵管を穴に突っ込んでいました。現行犯逮捕ですね。

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深い穴が二つ開いているので、卵を二つ産み付けたのかもしれません。

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いかにも悪そうな面構えですね

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この鋭い牙で固い幹に穴を開けるのでしょう

 現行犯逮捕された大害虫は死すべしです。道路にでも放り投げられて、車に引き殺されるのがいいでしょう。

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さあて、この悪党をどうしてくれよう

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このプラタナス並木に平和は戻って来るのか

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枯れたプラタナスの後には、最近ソヨゴという木が植えられています

 しかし、ここで昆虫愛好家としての良心が復活します。一寸の虫にも五分の魂。やれ打つなハエが手をする足をする。偉いお坊さんは、虫を殺すことさえ、殺生として慎むと言うではありませんか。

 

 突然博愛の精神に目覚めた昆虫記者は、ゴマダラカミキリをもと居たプラタナスの木に戻してやります。

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極刑を免れ、プラタナスの木に戻されたゴマダラカミキリ

 「バカヤロー、何てことをするんだ!」という怒号が江東区役所方面から響いてきますが、気にすることはありません。自然界はすべてバランスの上に成り立っているのです。自然を勝手に作り変えた人間の方が悪いのです。人間が作り変えた人工的並木の景観に必死で順応しようとしているゴマダラカミキリに罪はありません。

シンガポールの沿線昆虫ガイド㉓蝶の羽化も見られるチャンギ空港のバタフライガーデン

 シンガポール・チャンギ国際空港のバタフライガーデンでは、蝶の羽化も観察できます。蛹の展示数が半端ではないので、午前中なら羽化のシーンを目撃できる可能性がかなりあると思います。大抵の蝶は、未明から明け方に羽化するのですが、ちょっとお寝坊の蝶も必ずいるものです。

 

 昆虫記者が訪れた時にも、チャイロタテハが羽化していました。チャイロタテハは、南国のタテハの中では地味な部類ですが、英語圏ではクルーザー(巡視艇)という格好いい名前で呼ばれています。たぶん♂がタテハ特有のテリトリーを主張する巡視をするからでしょう。しかし、クルーザーには盛り場で女あさり、男あさりをする人という意味もあるようなので、交尾相手を求めて飛び回る蝶という、あまりありがたくないあだ名なのかもしれません。

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羽化直後、蛹にぶら下がるチャイロタテハ、別名コウモリタテハ。

 しかし、この蝶にはもう一つ、注目すべき変な名前があります。それはコウモリタテハ。別に蝶の姿がコウモリに似ているわけではありません。コウモリそっくりなのは、蛹なのです。一体誰が、蛹まで観察して、この蝶にコウモリの名を付けたのか。誰なのかは知りませんが、きっとその人は、この蝶の蛹を見て「何だこれは!芸術は爆発だ!」と岡本太郎のように、絶叫したのでしょう。そうでなければ、蛹の見た目の印象を蝶の名にしたりはしないでしょう。

 

 それでは改めて、コウモリタテハの蛹を見てみましょう。

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さかさまにぶら下がるコウモリそっくりなコウモリタテハの蛹

 「うわー、何だこれは!」。コウモリのような羽、コウモリのような頭。まさに、さかさまにぶら下がったコウモリそのものですね。

 でももちろん、あまりに小さいので、コウモリに擬態しているわけではないようです(擬態しても何の得もないし)。実際には、枯れて丸まった葉に擬態していると言われています。

 

 このほかに、ベニモンアゲハ、ツマムラサキマダラ、サトオオイナズマなどの蛹も展示してあります。

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ベニモンアゲハの蛹

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ツマムラサキマダラの蛹

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サトオオイナズマの蛹

 蛹はあまり見栄えがしないので、観光客には人気がありませんが、虫好き日本人として自己主張するためには、蛹コーナーをじっくり観察しましょう。えっ、蛹なんて全く興味ない?。そうですよね、蛹なんて、普通はどうでもいいですよね。

 

 ということで、南国の美しい蝶の続きです。

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トラフタテハ。シンガポールでは絶滅が危惧されています。

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リュウキュウアサギマダラ

 

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ツマムラサキマダラの♀

 

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イワサキコノハ

 

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羽を閉じたイワサキコノハ

 

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リュウキュウムラサキ

 

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サトオオイナズマ

 

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サトオオイナズマを手乗りさせる少女

 

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地味なハイイロタテハモドキ

 おっと、忘れてました。主役のチャイロタテハ(コウモリタテハ)の雄姿を紹介しないといけないですね。コウモリタテハは雄と雌でかなり姿が違うので、別の種類かと思ってしまいます。

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チャイロタテハ(コウモリタテハ)の♂

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こちらがチャイロタテハの♀

 またまた、おっと。これだけ宣伝しておいて、バタフライ・ガーデンの行き方を説明していなかったのは不親切ですね。

 

 バタフライ・ガーデンはチャンギ空港第3ターミナル2階、出国イミグレーションに向かって一番左奥にあります。奥まったところにあって、見つけにくいです。3階にもバタフライ・ガーデンの入り口があるので、その方が見つけやすいかも。3階にはフードコートがあるので、安く食事ができます。3階のバタフライ・ガーデン入口はフードコートの奥にあります。

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ちゃんと、バタフライ・ガーデンの案内表示もあります

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3階のフードコート。奥にバタフライ・ガーデンがあります。

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フードコートを突き進むと、ほら、ありました。

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3階の入り口付近から見下ろしたバタフライ・ガーデン内部


 早くコロナ禍が終息して、また海外旅行に行きたーい。シンガポールに行きたーい。そう思ってもらえたら、この記事を書いた甲斐があったというものです。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンガポールの沿線昆虫ガイド㉒チャンギ空港のバタフライガーデンで夢気分

 久々に海外旅行…なんて行けるわけない。シンガポール虫旅…なんで行けるわけない。でも、たまには新型コロナウイルスなんて忘れて、夢気分に浸りたーい。ということで、今回は久々にシンガポール昆虫ガイドが復活。世界初の空港内バタフライガーデン(蝶園)にご案内です。コロナ禍が過ぎ去って、シンガポールを訪れる機会があったら、絶対行くべき穴場です。

 シンガポールは先進都市国家なので、旅行に行ってもショッピングとグルメ、あとせいぜいセントーサのビーチとユニバーサルスタジオとマーライオンぐらいでおしまいになってしまいがちですが、南国なので可憐な蝶もたくさんいるのです。

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ハレギチョウが群れ飛ぶ姿はまさに南国

 でも、昆虫記者のような変人でない限り、シンガポールの街中で蝶を探したりしないですよね。そこで旅の最後に一気にシンガポールの蝶を満喫してしまうというお得な施設(なんと無料、無料なんですよー)がこのチャンギ国際空港第3ターミナル出発ロビーのバタフライガーデンです。(他のターミナルからもスカイトレインを使って行くことができます)

 シンガポール航空の日本行きは第3ターミナル出発なので、帰りに免税店で土産を買う時間をちょっとだけ節約すれば、無料(ここ強調)で、天国のような蝶の舞い飛ぶ世界を堪能できるのです。

 とか何とか、前触れが長くて、売り込みがしつこいのは、インチキ臭いと思われがちなので、そろそろ蝶の本格紹介に入りましょう。

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これが空港内とは信じられないチャンギのバタフライガーデン

 まずは何と言ってもハレギチョウですね。これが群れ飛ぶと、まさに南国気分。

 ハレギチョウの仲間の中でも特に色彩が鮮やかなのは、マレーレースウィング。レースウィングというのは、羽の周囲にあるギザギザ模様の縁取りがレース飾りのようだから、だったと思います。

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マレーレスウィングはハレギチョウの仲間の中でも特に色彩があでやか

 ハレギチョウは羽の裏側が特にきれいですが、羽の表は♂の場合は結構普通の感じです。でも♀の中には、白黒中心のシックな色合いながら、繊細な柄のがいて、別の種類の蝶かと思ってしまいます。

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ハレギチョウの仲間の♀です。♂ではオレンジ一色になる部分がこの♀では白黒の水玉模様になります。

 さらに注目はシンガポールの国蝶、ベニモンアゲハです。国蝶を見ずにシンガポールを去るわけにはいかないですから。

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シンガポールの国蝶、ベニモンアゲハ

 でもここで厄介な問題が。なんとこの国蝶ベニモンアゲハに擬態している偽国蝶がいるのです。

 

 それはシロオビアゲハ。♂はその名の通り白い帯が入っただけの地味な黒系アゲハですが、♀はちょっと見ではベニモンアゲハそっくりなのです。

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上がベニモンアゲハ、下がそれに擬態しているシロオビアゲハのベニモン型の♀。

 羽を閉じたときに赤い胴体が見えればベニモンアゲハ、黒い胴体なら偽物の方です。せっかく国蝶を撮ったと思ったのに、実は偽物でガッカリなんてことにならないよう注意しましょう。

 

 ちなみにシロオビアゲハの普通の姿(♂とシロオビ柄の♀)はこんな姿です。

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ベニモンに擬態していない普通のシロオビアゲハ

 またまたちなみに、シロオビアゲハはクロアゲハの仲間なので、ミカンなど柑橘類に産卵しますが、ベニモンアゲハはジャコウアゲハの仲間なので、ウマノスズクサ系の草に産卵します。

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柑橘類に産卵するシロオビアゲハ

 このほかにも、まだまだたくさんの種類の蝶がいるので、それは次回に紹介します。なにせ、当分海外旅行には行けないので、お楽しみはちょっとずつ味わっていかないといけません。蛹の展示にもすごいのがあるので、乞うご期待。

皇居外周コースはジョガー専用にあらず。都会の昆虫オアシスでもあります

 皇居の内堀にはイタドリが多いので、当然イタドリハムシがいます。イタドリは「蓼食う虫も好き好き」のタデ科の草ですが、タデ科の草には結構色々な種類の虫がいて、「蓼食う虫」の例えはあまりピンときませんね。

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イタドリと言えばイタドリハムシ。皇居外周コースにたくさんいます。

 イタドリにもタデ科独特の酸っぱいシュウ酸が多く含まれていて、スイバと同様、若芽の茎を食べると清涼感があるそうですが、まだ食べたことがありません。イタドリハムシとか、カツオゾウムシとか、ドロハマキチョッキリとか、カシルリオトシブミとか、みんな美味しそうにイタドリを食べるので、もしかしてかなり美味しいのかも、とか想像しています。きっとそのうち、食べて腹を壊すことになるでしょう。

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こんな感じでイタドリの葉の上にいれば、簡単に見つかるが

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実際はこんな感じで、葉裏からちょっとだけ顔を見せていることも多い

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ちょっと寸詰まりな感じのイタドリハムシもいました。

 内堀に添った皇居の外周路は、ジョギングのメッカで、虫探しをしている人は昆虫記者以外は誰もいませんが、都会に残された貴重な昆虫オアシスでもあるのです。しかし「ジョギングに疲れたら、虫探しはいかがでしょうか」などという提案は、絶対聞き入れられないでしょう。ジョガーにとって、昆虫記者のようにコース上にたたずむ者は、障害物でしかないのです。ぼんやりしていると、時々突き飛ばされそうになります。

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かなり前に撮った皇居のジョギング風景です。立ち止まって邪魔になっている男性は、虫ではなく鳥を撮りにきていた人です。

 そんなジョガーとのいさかいはさておき、本題はイタドリです。5月ごろ、ここのイタドリには、イタドリハムシ以外にもう1種類のハムシがいます。キボシルリハムシ(キボシナガツツハムシ)という小柄で地味なハムシです。普通種なのですが、昆虫記者はここのイタドリでしか見たことがありません。そして、ここのイタドリには、このキボシルリハムシが腐るほどいます。皇居の自然は東京都民にっとって貴重ですね。東京の虫好きにとってはもっと貴重です。

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これがキボシルリハムシ

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キボシルリハムシは、相当な数が皇居にいます

 ただ、皇居のお堀では定期的に草刈りが行われているようで、草刈りの後しばらくは虫がいなくなるので注意が必要です。できれば、草刈りをする際には、全部一斉に刈るのではなく、半分とか、せめて3分の1とかは雑草を残しておいてほしいものです。そうすれば、虫たちも喜ぶはずですが、草刈りの目的の1つは、じゃまな虫を減らすことにあると思うので、虫好きの思い通りにはならないのです。

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お堀の土手は定期的に草刈りが行われるようです

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草刈りのおかげで、こんな見通しの良い風景が生まれますが、虫はいなくなります。

 イタドリハムシの幼虫もたくさんいました。草刈りの時期までに蛹になって身を隠して欲しいものです。

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イタドリハムシの幼虫

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イタドリハムシの蛹

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6月に羽化したイタドリハムシの新成虫

 持ち帰った幼虫は、まもなく蛹になって、6月に羽化しました。

ツマキチョウの蛹は木のトゲにしか見えない超絶擬態

 先日の日比谷公園でのヒメシロコブゾウムシ探しの後は、皇居の内堀へと移動。このあたりは桜の季節なら可憐なツマキチョウの舞い姿が見られます。しかし訪れたのは5月だったので、もうツマキチョウはいません。それでも諦めないのが昆虫記者です。

 菜の花も咲き終わって、細長い実を付けている季節。ツマキチョウの幼虫がその実に擬態しながら、食事の最中かもしれないのです。

 菜の花の葉を主に食するモンシロチョウの幼虫とは違って、ツマキチョウの幼虫は主に実を食べます。ツマキチョウは春だけの蝶、スプリング・エフェメラル(春のはかない命)なので、春だけの食材である菜の花の実だけで命をつなぐことができるんですね。

 それで、幼虫は見つかったのか。執念で1匹だけ見つけました。皇居の内堀の土手は中には入れないため、道にはみ出している菜の花だけが頼りなので、幼虫を見つけるのは簡単ではないのです(苦しい言い訳です)。

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菜の花の実にいるツマキチョウの幼虫。執念がないと見つけられない

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見やすいように接近してみました。

 まだ小さい幼虫だったのですが、菜種油の元である菜の花の実は栄養豊富なので、1週間後には幼虫は立派な終齢になり、木のトゲのような蛹へと変身しました。

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成長過程を撮り忘れたので、過去写真での大きくなった幼虫の様子です

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木のトゲのようなツマキチョウの蛹

 あのフニャフニャしたイモムシが、バラのトゲのような鋭角な蛹に変身するのは何とも不思議ですね。

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真上から見たツマキチョウの蛹。横に幼虫の脱皮殻があります。

 そしてそのトゲ型の蛹は、最初は緑色なのですが、何日かすると茶色に変色します。木々のトゲが若芽の時の緑色から、成長につれて茶色に変わっていくのに合わせているような、徹底した擬態ぶりです。自然界でこの茶色のトゲのような蛹を見つけるのは、至難の業でしょう。昆虫記者もこれまで、たまたまガードレールに張り付いていたのを見つけたことがあるだけで、木の枝など自然物に付いた蛹は見つけたことがありません。

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数日後、茶色くなったツマキチョウの蛹

 そして困ったことに、この蛹は当分羽化しません。なにせスプリング・エフェメラルですから、来年の春まで待たないと蝶の姿は見られないのです。

 

 なので、以前に撮った写真で、春の艶姿をご覧ください。

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精力絶倫ヒメシロコブゾウムシの交尾と恥じらいの出産と幼虫の大量発生

 日比谷公園の5月の名物と言えば。うーん、何だろう。考えてしまいますね。松本楼の10円カレーは、9月ごろだったし、桜もバラも季節外れだし。

 でも昆虫記者にとって、5月の日比谷公園と言えば、ヒメシロコブゾウムシです。アイビーとかヘデラとか呼ばれるセイヨウキヅタが所せましと生い茂っている中、ポツリ、ポツリと白い点が動き回っています。それがヒメシロコブゾウムシです。あまり注目されない虫ですが、よーくよく見るとミロのビーナスのような、大理石のギリシャ彫刻風の姿ですね。

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大理石の彫刻のようなヒメシロコブゾウムシ。下の蛆虫みたいなものの正体は?

 街中ではヤツデ、山ではシシウドでよく見かけるヒメシロコブゾウムシがなぜ、日比谷ではキヅタにいるのでしょうか。素晴らしい疑問ですね。

 それでは偉そうに解説しましょう。

 キヅタはツタの仲間ではありません。ツタはブドウ科ですが、キヅタは、ヤツデとかウドとかと同じウコギ科の植物なのです。従って、ヒメシロコブゾウムシがキヅタにいるのは何の不思議もないのでした。

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ヒメシロコブゾウムシのカップ

 でもキヅタでヒメシロコブゾウムシが大量発生している場所は、私の活動範囲では日比谷公園だけです。恐らくあまり好まれる餌ではないのでしょう。きっと日比谷にはほかにいい餌場がなかったので、しかたなくキヅタを食べているうちに、キヅタが国民食のようになったのでしょう。科学的根拠は全くありませんが、とりあえず、そういうことにしておきましょう。

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5月の日比谷公園はまだ外出自粛の最中。昼時にこんな静かな日比谷公園の風景なんて、普通ならあり得ない

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樹木の下をキヅタが埋め尽くしています

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心字池。以前会社が日比谷公園にあったので、よくここで弁当を食べたりしていた

 それはともあれ、気になるのは最初の写真の下半分の、気色悪い蛆虫のような奴らです。

 実は彼らは、ヒメシロコブゾウムシの幼虫なのです。大きさは1~2ミリほどでしょうか。こんな蛆虫モドキになぜ関心があるのかというと、実は全く関心などなかったのです。

 

 関心があったのは、ヒメシロコブゾウムシの産卵シーンだったのです。ではその産卵シーンを見てみましょう。

 

 さっきまで交尾していたヒメシロコブゾウムシのカップルのうち、♀がキヅタの葉の一部を折りたみはじめました。そして、折りたたんだ葉を腰巻きのようにして下半身を包みました。まるで、恥じらう乙女のようですね。なんかちょっと、セクシーです。

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キヅタの葉の腰巻きで下半身を覆って産卵するヒメシロコブゾウムシの♀。乙女の恥じらいを感じさせる

 ヒメシロコブゾウムシの♀は、この腰巻きの中で産卵するのです。出産シーンを目の前の♂に見られたくないという、乙女心ですね。

 

 ♀は産卵しながら次第に腰巻きを、ジプロックのように閉じていきます。何やらノリのようなものを分泌して、折りたたんだ葉を接着していくようです。

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 ♀がジプロックを閉じて、産卵を終えるやいなや、♂は恋人が腰巻きから産卵管を抜き取るのさえ待てないかのように、再び♀の上にのしかかって、交尾態勢に入りました。いやはや、おさんかなことです。

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いままさに、産卵管を腰巻から引き抜こうとするヒメシロコブゾウムシの♀

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立ち合い出産で、産卵の様子を見守るヒメシロコブゾウムシの♂

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♀が産卵管を腰巻から引き抜く

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すると、すぐさま襲いかかる♂。立ち合い出産の狙いはこれだったのか。

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出産直後の♀とすぐさま交尾態勢に入るせっかちな♂

 卵が産みつけられた腰巻きを「ベリベリ」と無理やり開いてみると、中には20~30個の卵が産みつけられていました。

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卵が産みつけられている場所は、ノリで貼り付けられたようになっている。

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折りたたまれた葉の中には、20~30個の卵

 この段階で、昆虫記者のヒメシロコブゾウムシの生態に関する関心はほぼ満たされたのでした。

 

 そして何日か後。ヒメシロコブゾウムシたちを自然に戻そうとプラケースの掃除を開始したのですが、その時、ケースの底の綿ゴミの中に、微小な蛆虫がうごめいているのに気付いたのでした。

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ケース底の綿ゴミの中でうごめいていたヒメシロコブゾウムシの幼虫

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霧吹きの水滴の中に取り込まれたヒメシロコブゾウムシの幼虫

 ヒメシロコブゾウムシの幼虫は、腰巻きの中で孵化すると、地面に落ち、土に潜って植物の根などを食べて育つらしいです。つまり、プラケースの底の蛆虫たちは、ヒメシロコブゾウムシの幼虫だということです。仕方なく、幼虫たちも拾い集めて、成虫と一緒に自然に戻しました。何と心優しい昆虫記者であることよ。

 

 近所の公園で来年、ヒメシロコブゾウムシが大量発生したら、見て見ぬふりをしようと思います。

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 まあヒメシロコブの植物への被害は、微々たるものなので、誰も気にはしないでしょう。日比谷公園のキヅタの緑は色あせることなく、毎年ヒメシロコブを養い続けていることですし。

黒鯛が何十と群れる小名木川

 今回はわが家の庭のような小名木川隅田川と荒川を結ぶ水路です)で、魚、カニなどの観察です。昆虫記者がなぜ魚なのかというと、時間がないので、やっつけ仕事ということです。

 虫の記事だと妙に力が入りますが、それ以外だと、エイヤッとばかり、やっつけになるのは何故でしょう。

 まずは、エイヤッと黒鯛の群れです。

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黒鯛が群れる美しい海辺、と言いたいところですが、汚い水路です

 水面に日の光が反射するので、遠くの黒鯛はうまく撮れないのですが、ざっと目に入るだけで、20匹ぐらいはいました。

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10匹以上の黒鯛が写っているはずですが、光の反射でほとんど識別不能です

 こんなにたくさん居るのに、簡単には釣れないのが黒鯛様ですね。狙っている人はけっこう多いのですが、釣れているのを見たことはまだありません。

 

 そしてスズキです。大きな黒鯛も同居していました。

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スズキもたまに浅瀬で休憩している

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スズキの隣にいた黒鯛

 水がきれいとはとても言えない水路なので、汽水域ならどんな汚いところでもいるボラは常連さんです。

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汽水域の汚い水路と言えば、常連さんのボラ

 あの大きな体で時々すごい水音を立てて連続ジャンプするので、道行く人々がびっくりします。ボラの三段跳びなんて言うらしいです。

 

 岸辺のヨシのすきまには、ベンケイガニがいる場所があって、ザリガニ釣りの要領で、スルメイカなどを使ってカニ釣りをしている人を時々みかけます。結構大きいカニなので、釣りごたえもありそうですね。

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ヨシの葉陰にはベンケイガニ

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背中のゴツゴツした模様が弁慶の形相に似ているとか

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カニ釣りを楽しむ人々

 背中のゴツゴツとした模様が武蔵坊弁慶のいかつい形相に似ていることがベンケイの由来だそうです。確かに恐そうな面構えですね。