虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

アサギマダラ幼虫、東京の野外で越冬できることを確認。さすが研究者。

 毎年のように1、2匹、アサギマダラを自宅で羽化させてきましたが、これまでは冬に見つけた幼虫を室内で飼育するという過保護な扱いでした。幼虫が凍え死にしないようにという親心からなのですが、そうすると逆に、蝶が生きていくには寒すぎる2月末とか3月とかに羽化してしまうという、むごい仕打ちになったりします。

 そこで今回は、心を鬼にして、厳寒期もベランダの鉢植えで野ざらしにすることに。東京都区部でアサギマダラが幼虫越冬できることを確認するというのも、昆虫学者(誰が?)の責務ですね。なーんちゃって、実際は、ほったらかしが一番楽だからです。

 

 1月半ばの孵化したばかりの小さな幼虫時代は、こんなんで厳しい冬を生き抜けるのかと、本当に心配(うそ)したものです。

 

 そして結果は。パンパカパーン。4月後半に見事羽化しました。

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アサギマダラは東京の野外で幼虫越冬できる

 1月半ばの様子はこんなでした。鼻くそみたいに小さい、頼りない幼虫です。

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矢印のところに小さな幼虫がいます。黒い穴は食痕。

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こんなんで厳寒の東京の冬を生き抜けるのか

 しかし、3月半ばになってベランダのキジョランの鉢植えを確認すると。ドドドーン。きれいな組み紐のような立派な幼虫になっていました。

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アサギマダラの終齢幼虫。野外でほったらかしのため、この間の観察はすべてはぶきました。

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キジョランの鉢植え。ベランダに3つほどあります。

 なぜ1月半ばから3月半ばまで、タイムラインが一気に飛んでいるのかというと、その間全く観察記録をとっていなかったからです。研究者(誰が?)の風上にも置けない姿勢ですね。こうして完全に放っておかれたにもかかわらず、3月下旬には蛹になりました。

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3月下旬のアサギマダラの前蛹

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蛹化したばかりのアサギマダラ

 4月中旬になると、蛹の様子に羽化が近いことを示す変化が。

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何となくもうすぐ羽化しそう

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横から見ると、うっすらと羽の模様らしきものが。

 慌てて室内に移動させると、その後数日で見事に羽化しました。

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羽の模様がくっきりしてきました。

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蛹の写真はこのあたりの段階が撮り頃。この後は真っ黒になっていく。

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4月下旬に羽化したアサギマダラ

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恒例の手乗りアサギマダラ

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再びベランダに移動。

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このあとどこかへ飛んで行きました。

 風に乗って何百キロも旅をすることで知られるアサギマダラですから、高尾か奥多摩あたりまで飛んで行けること(たぶん無理)を期待して、大空に飛び立たせてやりました。めでたし、めでたし。パチパチパチ。

 

どくろ顔のろくろ首と吸血卵

 うわー、出たー。そろそろ夏らしくなってきたので、怪談です。今頃の野山では、髑髏(どくろ)顔のろくろ首が、あちこちから首を出していて、簡単に怪談気分が味わえますね。ご存知、ヒロバトガリエダシャクの幼虫です。

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どくろ顔のろくろ首のようなヒロバトガリエダシャク幼虫。レイバン(サングラスのブランド)と呼ばれることもあります

 かなり数が多い芋虫なので、下草や木々のひこ生えを眺めて歩くと、結構な確率で見つかります。

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こんな感じでろくろ首が顔を出します

 そして昨日は、そのどくろ顔のろくろ首が、生き血を吸い取られ、干物になって、糸で吊るされているという、さらに身の毛もよだつ怪談の現場に遭遇しました。

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干からびてさらし首になったろくろ首。上の卵型の物体は恐らく寄生蜂の繭

 下の干からびているのが、たぶんヒロバトガリエダシャクの幼虫の遺体。その上にある卵のような物体は、たぶん幼虫の生き血を吸い取った寄生蜂の繭です。

 

 恐怖のあまり、ページを閉じようとしている人がいるかもしれないので、口直しに、今頃ご近所でも出会う可能性のある身近な宝石系の虫をアップします。

 

 ここ数日に見つけたアカガネサルハムシとアオハムシダマシです。玉虫色のアカガネサルハムシは、ブドウの害虫なので、ノブドウなどブドウの仲間の植物で見られますね。皇居東御苑では常連で、浜離宮でも見かけたことがあります。

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アカガネサルハムシ(左)とアオハムシダマシ

 これで気味悪い系の虫のおぞましい記憶が払しょくされるといいのですが、既に手遅れかも。

ツマキアオジョウカイモドキ、名前が長い虫はたいてい小さい

  この季節、あちこちで見かけるけど、小さくてチョコマカと動き回って、よく飛ぶので、撮りにくいツマキアオジョウカイモドキの飛び立つ瞬間が撮れたので、アップします。場所は葛飾区の水元公園ですが、結構どこにでもいます。

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鞘翅の先の黄色い紋がアクセントのツマキアオジョウカイモドキ

 ジョウカイモドキの仲間では、ツマキアオジョウカイモドキのほかに出会ったことがあるのは、ヒロオビジョウカイモドキだけです。きれいな虫ですが、これも小さい。

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ヒロオビジョウカイモドキ

 ジョウカイモドキの仲間は♂の触覚に特徴があるらしいのですが、これまであまり意識したことがなくて、♂の写真が全く撮れていません。次回は♂を探さねば。

 

 それにしても、名前が長くて、書くのも面倒、読むのも面倒、どこで区切っていいのかよく分からないですね。そもそも、常人にはジョウカイって何?って感じなのに、そのモドキですから、何が何やらですね。

 

 ついでに、水元公園で見かけたコウモリ。公園のトイレとかでよく昼寝しているやつですね。たぶんアブラコウモリという種類かと。コウモリは、新型コロナとか、SARSとかの感染源と疑われているので、この時期見かけるとちょっと怖い。

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たぶんアブラコウモリ。目立つところにぶら下がっていることも多い。

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顔を撮ってみました。新型コロナの感染源かもと思うとちょっと怖い。


 

神田川でスッポンポン?

 神田川下流なんてどぶ川かと思っていたら、文京区の江戸川橋あたりは緑に囲まれて、結構清流っぽい雰囲気を醸し出していました。なので、スッポンポンで泳いでいる人も…なんてわけないですね。

 今回の主役はスッポンなのでした。巨大スッポンを1匹のみならず、2匹も見つけたので、ダブルスッポンでスッポンポンというわけです。「神田川でスッポンポン」などという詐欺商法まがいの見出しに騙された人は、オレオレ詐欺にも要注意です。

 

 緊急事態宣言で行く場所が限られる中、近場で未開拓で開いている公園を探したところ、肥後細川庭園が目に留まりました。さして大きくない公園なので、虫は少なかったのですが、庭園前の神田川(このあたりの神田川は昔は江戸川と呼ばれていたようです)で久々にスッポンに遭遇しました。

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神田川の巨大スッポン

 ワニガメぐらいの迫力のある相当に巨大なスッポンで、スッポン鍋にしたらゆうに10人前ぐらいになりそうでした。コラーゲンのかたまりのスッポンは美容にもいいらしいです(でもこの姿を想像すると食欲が出ない)。

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後ろのミドリガメも結構大きいが、それを圧倒するスッポンの巨体

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亀と鯉のたまり場

 そして2匹目のスッポン。顔は亀の仲間と言うより、ワニに近い感じですね。こんな怖い顔で、噛みついたら指を食いちぎるまで離さないとか言われますが、実際は臆病者で人を見るとすぐ水の中に「スッポン」と逃げるので、スッポンの名があるらしいです。スッポンポン(素っ裸でポンポン=お腹=を出したまま)とは語源が全く違うんですね。

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本日神田川で出会った2匹目のスッポン

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2匹目は1匹目よりかなり小さめでした

 亀ついでに、神田川を見下ろす手すりにいたキマダラカメムシも載せておきます。

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亀ついでに神田川沿いのキマダラカメムシ

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下は神田川。やらせでないのに、こんないい位置にいました。

 

明日は子供の日なので、ついでに鯉のぼりならぬ、神田川の鯉たちです。

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神田川の緋鯉。最近の神田川はけっこう清流っぽくなった。

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江戸川橋から見た神田川

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江戸川公園と言っても江戸川区ではなく、文京区。江戸川とはこの付近の神田川のことだった

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江戸川公園内の小川

 そして一応虫ブログなので、細川庭園の虫たちです。

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藤棚があるのでコミスジが多い

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アラカシの葉を巻いた中には

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ムラサキシジミの幼虫

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たぶんオオワラジカイガラムシのメス。これでも昆虫。

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肥後細川庭園

 

ビロードツリアブの産卵。ヒメハナバチの巣穴を爆撃。

 アブを好きな人はあまりいませんね。ハチに似ていて怖そうだし、口で刺すやつもいるし。幼虫は蛆虫体形で肉食のが多いし、嫌われ者の要素が満載です。そんな中で、比較的かわいいのが、春にだけ姿を見せる、ビロードツリアブ。ホバリングする姿は、宙に浮く毛玉かタワシ。ホバリングしながら花の蜜を吸う姿は、可憐といってもいいでしょう。

 

 しかし、そんなビロードツリアブも、幼虫はやはり肉食らしいです。先日行った小石川植物園で、成虫がヒメハナバチの仲間の巣穴を産卵爆撃する様子を目撃しました。

 日当たりのいい斜面にはアリの巣のようなヒメハナバチの巣穴がたくさん開いています。その穴めがけて、ビロードツリアブが次々とやってきて、空中から爆撃していきます。

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ハチの巣穴に産卵するビロードツリアブ。幼虫はヒメハナバチの仲間の幼虫に寄生するという。

 実は、ビロードツリアブのこんな産卵については、この日まで全く知らなかったのです。それを教えてくれたのは東大植物園の腕章を付け、捕虫網を持った爽やかな若者カップル。そうです、ここは東京大学の植物園なのです。東大生の研究フィールドなのです。

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ビロードツリアブの産卵を観察する東大生カップル?腕には東大植物園の腕章

 カップルは二人とも、きっと東大生なのでしょう。爽やかな上に、頭脳明晰。そして捕虫網を持って野山を駆け回る虫好き。こんな理想的なカップルは、日本広しと言えども、数えるほどでしょう。日本の未来は明るいと確信した1日でした。

ツマキチョウとウシバシロチョウ。緊急事態でしばらく行けない😢東京の公園

 東京はまた新型コロナで緊急事態です。多くの公園は閉園になったり、駐車場が閉鎖されたりして、感染リスクが極めて低いと思われる単独行動の虫撮りもできなくなりました。悲しい😢。

 

 毎年のようにスプリングエフェメラルのツマキチョウを撮りに行っていた小石川植物園もどうやら今日から閉鎖のようです。なので閉鎖の少し前に、ツマキチョウを撮りに。

 

 するとガガーン。以前はツマキチョウの天国だったアブラナの群落がほぼ消滅していました。なので、今回はあまりいい写真は撮れていないので、あらかじめ陳謝しておきます。管理された公園では、虫の生息環境は一夜にして激変することがよくあります。悲しい😢。しかたないですね。都市公園の管理者に、虫好きの気持ちなんて、わかるはずもない。

 

 まずは、それでも何とか撮れた雄の写真。「つま黄」の名の通り、尖った翅先が黄色いのは雄だけなので、やはりツマキといえば、雄が優先ですね。

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春恒例の小石川植物園のツマキチョウ。

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つま黄の名の通りに翅先が黄色いのはオスだけ

 そしてメス。全然「つま黄」じゃないです。羽裏の迷彩柄がなければ、ほぼモンシロチョウですね。なのでメスを撮るなら産卵シーンとかでないと、絵になりにくい。今回はまずまずの産卵シーンが撮れましたが、来年以降も子孫が繁栄してくれるのか、ちょっと心配。😢

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今年も何とか撮れたツマキチョウ♀の産卵シーン

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ツマキチョウの♀は翅裏の迷彩柄がなければ、ほぼモンシロチョウ

 ついでと言っては何ですが、これまた一見モンシロチョウのような、スプリングエフェメラルのウスバシロチョウです。4月半ばの町田市での撮影です。まだ数が少なくて、これまた、いい写真は撮れませんでした。シロチョウの名がありますが、アゲハの仲間らしいです。なので正式には、最近はウスバアゲハと呼んだ方がいいようです。

 

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町田市のウスバシロチョウ

 なんだかモンシロチョウに毛の生えたような写真ばかりだったので、ついでに春のお気に入りの野の花を載せておきます。町田の野原のフデリンドウ(たぶん)です。緊急事態を忘れさせてくれる(忘れてはいけません)、いかにも春という感じの花ですね。

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一面のフデリンドウ

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 ついでのついでで、町田で撮ったトラフシジミも追加。トラフと言うからには黄色と黒の縞模様であってほしいとタイガースファンなら思うことでしょうが、名前倒れですね。黄色は後翅の先にちょっとだけです。

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トラフシジミ。トラフと言うほどトラ柄ではないですね。

 

 

 

 

地味なスプリングエフェメラルその2、ミヤマセセリ

 またまた地味なスプリングエフェメラルです。多摩丘陵で4月初めに撮ったミヤマセセリ。「これでも蝶なの、春の妖精なの、蛾じゃないの」なんて言わないで下さい。

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多摩丘陵のミヤマセセリ♀。蛾のようにも見えますが、これでもミヤマセセリとしては最上級の品です。

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田んぼ脇の土嚢の上だったので、都合良く白バックの写真に

 これでもミヤマセセリの中では最上級の品です。オスよりきれいなメスだし、羽は傷んでないし、色落ちもしてないし。でもやっぱり地味。

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ミヤマセセリはたいていは、こんな風に落ち葉の上とまるので、余計に目立たない

 ミヤマセセリの旬はほんとうに短い感じで、冒頭の写真を撮った1週間後の町田市で見たミヤマセセリは、どれもボロボロ状態でした。つまり、冒頭のようなきれいなミヤマセセリの写真がいかに貴重なのかということを言いたいわけです。でも、やっぱり超地味じゃん、という感じですね。

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4月中旬のボロボロのミヤマセセリ。たぶん♂

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これもボロボロのミヤマセセリ。こちらは♀

 地味過ぎて、これでは終われないので、多摩丘陵の他の虫たちに援護をお願いすることに。

 

 まずは、たぶん越冬明けのアオオサムシ。どうです、きれいでしょ。などと言ってもしょせんはオサムシ。ミミズなんかを食べるゴミ掃除屋的な虫ですね。すがすがしい陽気の春には、不似合いです。

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アオオサムシ。きれいだけど、しょせんはゴミムシ系

 越冬明けのテングチョウは、エノキの葉にせっせと産卵していました。うーん、これも美しいとは言えない蝶だ。

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エノキの新葉に産卵する越冬明けのテングチョウ

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 タンポポの花には、モモブトカミキリモドキとか、アオヒラタコガネとか、スゲハムシの仲間とか。

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モモブトカミキリモドキ

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スゲハムシの仲間

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アオヒラタコガネ

可愛らしい雰囲気ですが、アオヒラタコガネは糞を排泄中で、雰囲気壊してます。

 

 あっ、そう言えば、前回のブログで東京のギフチョウのことを書いておきながら、写真を忘れてました。もう10年ほど前のことで、カメラも低性能のものだったので、かなりボケボケの写真ですが、確かにギフチョウです。

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貴重な東京のギフチョウの写真

 裏高尾のマス釣り場の近くの桜にきていました。たぶん放蝶ですが、神奈川の石砂山から大風で飛ばされてきたとかも、考えらますね。何にしろ、貴重な東京のギフチョウです。