虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

ヨツスジハナカミキリの♂♀の尻をつなぐのは、赤い糸ならぬ長い長い受精嚢管?

 うっとうしい梅雨が終わったと思ったら、今度は命にかかわる猛暑。それでも昆虫記者は虫撮りに励む。虫が見られるなら、熱中症になってもかまわない(嘘)、命も惜しくない(大嘘)。

 というわけで(何が訳なのか不明)、今回は裏高尾から城山茶屋を目指しました。城山茶屋の周辺は、まだアジサイが咲き誇っています。そのアジサイに必ずやってくるのが、ヨツスジハナカミキリとオオヨツスジハナカミキリです。どこにでもいる普通種ですが、アジサイの花をバックに撮ると、まずまず絵になります。

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まずはヨツスジハナカミキリ(左)とオオヨツスジハナカミキリ(右)の違いを勉強しましょう

 そして今回は、不思議な交尾風景を目にしました。ヨツスジハナカミキリのオスとメスのお尻が、ながーい長い管で連結されていたのです。昆虫の雌にはたいてい備わっている受精嚢(じゅせいのう)とか、受精嚢管とか呼ばれるものでしょうか。だとしても、こんなに長々と外に飛び出ていて大丈夫なのでしょうか。交尾の後で、お尻の中に再度収納されるのでしょうか。

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交尾中のヨツスジハナカミキリ。でも何か違和感がある。

 

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違和感の正体はお尻とお尻をつなぐ白っぽい管

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接近して見ると、確かにお尻同士が管でつながっている。

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こんな管でつながっていることで、夫婦のきずなが維持されるのか

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 余談ですが、多くの昆虫の雌は、この受精嚢の中に複数の雄の精子をため込んで、それを小出しにしながら卵を受精させるようです(付け焼刃の知識なのであてにはなりません)。人間的に考えるとあまり倫理的ではありませんが、たぶん、これによって多様な遺伝子を持った子孫を残せるのでしょう。

 

 ヨツスジハナカミキリとオオヨツスジハナカミキリは、時々混在しているので同じ種の色変わりではないかと誤解しかねません。1枚目の写真のように、明らかに模様、色

が違えばいいのですが、特にオオヨツスジは、地域によって模様の変化が大きいようなので紛らわしいこともあります。

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美しいアジサイの花に人相の悪いオオヨツスジハナカミキリ

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上翅の部分が細く締まっているので多分♂のオオヨツスジハナカミキリ

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これも細いので♂のオオヨツスジハナカミキリだろう。

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こちらはヨツスジハナカミキリ

 まあ、簡単に言うと、品行方正な感じのがヨツスジハナカミキリ、不良っぽいのがオオヨツスジハナカミキリという感じでしょうか。この説明では全然分からないですね。

 違いを若干ちゃんと調べると、足の大半が黄色いのがヨツスジ(後脚の一部は黒いのも)、足の大半が黒いのがオオヨツスジ、胸と首がずんぐりむっくりなのがヨツスジ、胸と首がスラリと長いのがオオヨツスジ(何となくマイマイカブリ的)のようです。

 

 まあ、そんな違いは知っていても普通は何の役にも立たないし、どうでもいいですね。それより、アジサイの花に見惚れて、シーボルトが愛したお滝さんへの想いを託した花(オタクサ)なのだなーなどと感慨にふける方がずっと情緒がありますね。

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高尾のアジサイ撮り忘れたので、横浜の金沢自然公園のアジサイで代用

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カミキリを探すより城山茶屋でかき氷を食べる方が一般的楽しみ方です

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 それでもやっぱり「花より団子より虫」になってしまうのが虫好きの宿命ですね。

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たまにアカハナカミキリもアジサイに来ています

 

ゴマダラオトシブミの揺らん作りで思い出す童謡「かあさんの歌」

 オトシブミの仲間のかあさんの揺籃作りにはいつも感心させられますね。今回は水玉模様の装いがいじらしい、ゴマダラオトシブミのかあさんです。虫のかあさんは偉い。「かあさんが夜なべをして手袋編んでくれた~♫」。童謡「かあさんの歌を思い出します。そんな母さんは今は少ないでしょうが、オトシブミの母さんは、今も変わらず、せっせと揺りかごを作っています。

 

 まずはまとめの写真から。高尾で蚊に刺されるのを我慢して撮ったので、かなりはしょってます。

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ゴマダラオトシブミの揺籃づくり

 森の栗やクヌギでこんな形の新鮮な揺籃を見つけたら、近くにゴマダラオトシブミがいる可能性大。

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ゴマダラオトシブミの揺籃の完成形

 いました。やがて孵化する子供のためにせっせと揺りかご作りです。

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揺籃作りにとりかかったゴマダラオトシブミ

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 適当にやっているようで、葉の切り方、巻き方すべて計算があるようです。

 

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葉脈の主脈に斜めの切り込みを入れると葉を巻きやすくなる

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葉裏の主脈に切れ込みがあると、確かに折り曲げるには都合がいい感じ

 一つだけ、揺籃の中身を確認してみました。ちょっと可哀そうですが、昆虫学者(誰が?)としては、欠かせない作業ですね。

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揺籃の中には黄色い卵が一つだけ

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かあさんの思いが込められた卵です

 ゴマダラオトシブミは結構数が多い普通種で、見た目もかわいいので、じっくりと揺らんづくりを観察したい人にはお勧めです。毎年ゴールデンウィークごろからが見ごろかも。でもせっかくのゴールデンウィークを、オトシブミごときのために使うのはもったいないという意見もあります。やっぱり彼女とのデートを優先した方がいいですね。

カシノナガキクイムシ被害でコナラの巨樹全滅の危機。昆虫記者のご神木も枯死

 たまにはちょっと自然科学者的な話もしないと、ただの虫バカ(実際そうですが)と思われてしまうので、今回は里山はおろか、都心の公園でも進行しているキクイムシ被害によるコナラ全滅の危機の話です。

 コナラが全滅しても「痛くも痒くもない」という人も多いでしょうが、虫好きにとっては大事件です。なぜかと言うとそれは、コナラの樹液がカブトムシ、クワガタ、カナブン、オオムラサキなど、数えきれないほどの「樹液に集まる虫たち」の憩いの場だからです。

 実はここ数年は、カブト、クワガタの大豊作の年でした。それも「カシノナガキクイムシ」という小さなキクイムシの影響でした。このキクイムシが大量発生したコナラの木は、被害を受けた何十もの穴から樹液を出し、それが発酵してカブト、クワガタを呼び寄せるのです。しかし、樹液の出ている穴は、コナラの木にとっては、いわば傷口です。傷が多ければ、数年後にはその木は弱ってしまいます。

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カシノナガキクイムシ’(左右)と被害に遭って粉を吹いた状態のコナラの木(中央)

 つまり、ここ数年のカブト、クワガタの大豊作に狂気した虫好きは、これからその反動で冬の時代を迎えるのです。

 しかし、この体長わずか5ミリほどの小さなキクイムシが、コナラの大木を簡単に死に至らせることなどできるのでしょうか。当然の疑問ですね。

 実は、このカシノナガキクイムシは、かなりたちの悪い虫でして、ナラを枯らすナラ菌を体に付着させた状態で健康なナラの木に飛んできて、穴を開けて産卵するのです。なぜこんな悪事を働くのでしょうか。それは、この菌が幼虫の餌になるからです。菌の畑が広がれば、幼虫はたらふく餌を食べられ、木は枯れていくという構図です。しかも、このキクイムシは集合フェロモンを出して大集結し、樹木を一斉攻撃します。枯死した木から発生した新成虫は、周囲の木に食い込み、ナラ枯れが伝染病のように次々に広がっていくのです。

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キクイムシ対策中の木に貼られていたナラ枯れ被害拡大の説明

林野庁ナラ枯れの説明は以下を参照して下さい。 

ナラ枯れ被害:林野庁

 

 最近のカシノナガキクイムシ大発生の理由としては、温暖化や、里山の利用が減って樹林の更新が止まったことなどが挙げられています。

 このキクイムシは、特に大木が好みなので、樹林の更新が止まって大木が増えた場所が大被害を受けると言われています。

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最近は昆虫記者のフィールドの一部でもキクイムシ被害に遭ったコナラが大量に切り倒され、森が草原に変わっています。

 こういうコナラの大木は、虫好きの間では、御神木などと呼ばれるカブト、クワガタのたまり場であることも多いので、虫好きの嘆きは計り知れません(昆虫記者のご神木も、何本も枯死し、切り倒されました)。

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駆除用のフィルムに閉じ込められていたカシノナガキクイムシ

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駆除用フィルムの中でもがいていたカシノナガキクイムシ。動画は昆虫記者のツイッターにアップしました。

 

 最近はカシノナガキクイムシの被害拡大を防ぐため、さまざまな対策が取られているようで、根本近くがフィルムでぐるぐる巻きにされた木もよく見かけますね。何と、都心の我が家のすぐ近所の、さして大きくない公園でも、数少ないコナラの大半が被害を受けて、対策が取られていました。上の写真はそんなフィルムの中で必死にもがいていたキクイムシです。

(動画は昆虫記者の以下のツイッターに)

https://twitter.com/kontyuukisya

 彼もやはり虫ですから、駆除されるとなると、何だかかわいそうな気もしてきますね。

 

イラガとイラガセイボウ、どちらが当たりなのか

 虫を飼っているとときどき、どこに置いたのか忘れてしまうことがあります。先日部屋の中を、ちょっと危険そうな蛾が飛び回っていて、妻に怒鳴りつけられました。

 

 額縁にとまった蛾を確認すると、その正体は「イラガ」でした。家の中のどこかに、あの芸術品のような繭を置き忘れていたのです。

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イラガの繭からは、イラガの代わりにイラガセイボウが出てくることも

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部屋の中を飛び回っていたイラガ

 そういえば、たしかあのあたりにあったはず。ぼんやりした記憶をたどって探してみると、きれいに蓋のあいた繭がありました。

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きれいに蓋の空いたイラガの繭。スズメノショウベンタゴとも言いますね。

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蓋が開く前のイラガの繭

 この蓋の開いた繭のことを「スズメノショウベンタゴ」とか言います。雀が小便するには、ちょっと小さすぎるような気もするし、そもそも雀が小便をするかどうか、定かではありません。

 

 ところで、今年は別のイラガの繭から、イラガセイボウが誕生しました。イラガセイボウは寄生蜂なので、これが出てきたら普通は、残念「飼育失敗」例になるのですが、セイボウはイラガの成虫よりずっときれいなので、セイボウが出てくることを期待して、冬にイラガの繭を探す人もいるくらいです。

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こちらはちゃんと観察していたイラガの繭から出てきたイラガセイボウ

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イラガセイボウが出てくると、きれいに蓋が開く感じにはならないことが多いようです。

 こうなると、イラガとイラガセイボウのどちらが「当たり」 なのか、分からなくなりますね。確率で言うと、どちらが出てくるかはほぼ半々という感じです。

 

 イラガは幼虫が美しい(でも強烈な毒虫です)ので、幼虫を育てて、繭から宝石系のイラガセイボウが出てきたら「当たり」と言えるのかも。

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イラガの幼虫はこんなです。電気虫とも言いますね。

 なにせイラガの成虫は地味。成虫に毒はないと言われていますが、今回羽化直後のイラガに触れた手首の部分は、若干水ぶくれのようになりました。(ムヒアルファEXを塗ったらすぐ直りました。ムヒアルファは必携ですね)。もしかすると、羽化直後は幼虫の毒が少々残っているのかもしれません。つまり、今回のイラガの繭は「外れ」ということですね。

梅雨時の高尾で毎年会いたい恋人はオオトラフコガネ

 梅雨時の高尾で毎年どうしても会いたい恋人と言えば、やっぱりオオトラフコガネ(オオトラフハナムグリ)ですね。妻子持ちの昆虫記者にとっては、恋人というより愛人ですね。妻との行事があっても、すっぽかして会いに行ってしまう相手です。

 なにせ、発生時期が短くて、梅雨と重なるので、週末虫ウォッチャーの身では会えるチャンスは年に1度か2度。なかなか会えないと、かえって恋心は燃え上がりますよね。

 とか言っても、出会えるのはほとんどがオスです。ということは、恋人と言うのはLGBTのGということになります。目立つところにいるのはたいていオスで、しかも、これぞオオトラフという美貌を持っているのもオスなのです。先週末は3匹見つけました。

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高尾のオオトラフコガネ。やっぱり美しい。

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前から見たオオトラフコガネ。ヒゲが凛々しいですね。

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横から見たオオトラフコガネ。ちょっと太めな感じもなかなかセクシー。

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後ろから見たオオトラフコガネ。黄色いパンツも見どころの一つ。

 ではメスはどんなでしょうか。気になりますか。それでは、2年間に撮ったメスの写真を紹介しましょう。何だかがっかりですね。マンションを買ってあげたい愛人とは、とても言えません。やっぱりオオトラフに関しては、LGBTの道を選ぶしかないですね。

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2年前に撮ったオオトラフコガネのメス。

 

梅雨時が見ごろのアジサイを切り落としまくる花泥棒の正体は、アジサイ・チョッキリことシロオビアカアシナガゾウムシ

 楽しい、楽しい裏高尾。今頃の季節はとりわけ昆虫濃度が高いので、余裕のある時間設定が必要です。見る虫すべて写真に撮っていると、あっという間に日が暮れます。梅雨時の好天の週末なんて、1、2度しかないかもしれないので、早朝から出かけましょう。

 

 12日の高尾はまずますの好天でした。虫は盛りだくさんだったのですが、梅雨時ということで、まずは梅雨にふさわしい、と言うか梅雨時のアジサイ鑑賞の楽しみを台無しにする悪名高き虫、シロオビアカアシナガゾウムシ(漢字にすると白帯赤足長ゾウムシ)からです。。名前が長すぎですね。その割に、小さくて地味ですが、その悪行はかなり世に知られています。

 なにせ別名がアジサイ(紫陽花)チョッキリ。梅雨時が見ごろのアジサイを、何が気に入らないのか、何が不満なのか、きれいな花が咲いていたり、可憐なつぼみが付いていたりするところから、10センチ、20センチ下のところで茎をチョッキンしてしまうのです。自らの姿があまりに地味なので、きれいなアジサイの花に嫉妬しているのでしょうか。

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紫陽花の茎の上で交尾中のシロオビアカアシナガゾウムシ

 何十もの茎がチョッキンされていると、花泥棒の仕業かと思って憤慨する人もいるかも。でもアジサイ・チョッキリは、アジサイの花には何の興味もありません。チョッキンする目的は産卵、子孫繁栄です。チョッキンしたすぐ下に産卵痕が見られます。

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ゾウムシによって上部がすべて刈り取られたアジサイ(たぶんタマアジサイ)。これでは花は期待できない。

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紫陽花の茎の刈り取られら部分のすぐ下にはシロオビアカアシナガゾウムシの産卵痕跡

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花泥棒だとしたら、ひどい手口ですね。犯人は昆虫記者ではありません。写真を撮っていたので、疑われたかも。

 

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こんな風に咲き誇るはずだったのに(鎌倉市で撮影)

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花泥棒の犯人は、犯行現場のすぐ近く。アジサイの茂みの中にいました。

 たぶん、花の咲く部分を切り落とすことで、その下の茎に栄養がたまり、その栄養で幼虫が丈夫に育つのでしょう。キクスイカミキリが産卵箇所の上の菊やヨモギの若芽を枯らすのと同じですね。まさに親心ですね。でも、花好きの人々に、そんな虫の親心が分かるはずもない。

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交尾中のキクスイカミキリ(先日狭山で撮影)

キクスイカミキリの産卵行動は過去記事を参照下さい。

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 アジサイ・チョッキリは時々、チョッキンの犯行現場のすぐ近くで、せっせと交尾していたりするので、花好きの人が見たら腹が立つでしょう。でも、よほどの虫好きの花好きというレアな人々でない限り、アジサイ・チョキリの存在に気付くことはないでしょう。

 シロオビアカアシナガゾウムシの食樹がたまたまアジサイだったというだけで、花好きの恨みを買うことになったのは、不幸なめぐりあわせと言うほかありませんね。

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今回の写真は暗くて分かりにくいので、かなり以前にとったシロオビアカアシナガゾウムシの写真です。

 このシロオビアカアシナガゾウムシ(名前長すぎ)に姿も生態もよく似たゾウムシに、ホホジロアシナガゾウムシというのがいます。でもこちらは、チョッキンする植物が、どうでもいい雑木のヌルデなので、だれからも敵視されません。ホホジロアシナガゾウムシの産卵行動については、過去記事を参照ください。

 

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 高尾は知っていても、裏高尾は知らないという人も多いと思うので、裏高尾の行き方を簡単に紹介します。裏と言っても、裏社会とか裏口入学とか、悪い意味の裏ではありません。ちゃんと、裏高尾町という町名があるのです。高尾山の裏側の町ですね。表高尾のような一大観光地ではないので、いつもすいている虫撮り街道です。表と違ってケーブルカー、リフトはないので、高尾駅からバスか徒歩で行きます。小仏行きのバスで終点の小仏まで行く人が多いですが、小仏から先は、ほぼ表高尾なので、のんびり虫旅なら駅から歩くのがいいですね。蛇滝口までの散策路もかなり昆虫濃度が高いです。蛇滝口から日影沢までは、少し車道を歩かないといけないのが、ちょっと残念。ここも散策路を作ってほしいです。木下沢の道は延々と続くので、駅から歩くとかなり疲れます。木下沢だけを目指すなら、日影までバスで行くのがいいですね。

葛西臨海公園の海辺にキアゲハがいる訳は、ハマウドが人参と同じセリ科だから

 葛西臨海公園の海辺には、あのシマシマ模様がかわいいキアゲハの幼虫がいます。キアゲハの幼虫と言えば、ニンジン畑で探すのが定石ですよね。なのになぜ、海辺にいるのか。それは、海辺に生える巨大植物のハマウドが、ニンジンと同じセリ科の植物だからです。

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ハマウドのある海辺にはキアゲハがいる

 このハマウドは、時には大人の背丈を超えるほど巨大に成長します。なので、ハマウドがあれば、キアゲハの幼虫は餌に全く困らないのです。山野に多いシシウドやノダケよりずっと大きいです。まさにウドの大木ですね。でも食用になるウドとは全然違う種類のようです。ウドはウコギ科で、タラの芽のタラノキと同じ仲間なので、キアゲハ幼虫の餌にはなりません。

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これが葛西のハマウド。キアゲハの幼虫の存在は、セリ科の証拠。

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ディズニーランドを遠景に撮ったハマウド。絵になりますね。

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このハマウドにはキアゲハ幼虫が10匹以上いました。

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毎年この姿が楽しめるよう、貴重な葛西のハマウドを守りたいですね。

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この太い茎がハマウドの巨大さを物語っています。

 以前の葛西にはハマウドがもっと多かった気がするのですが、残念なことに最近は数えるほどしか目にしません。大きくて邪魔な雑草なので、刈り取られてしまうのかも。「あのかわいいキアゲハ幼虫の餌なんですよ」と訴えても、負け犬の遠吠えか。都内では結構めずらしいし、立派な姿の植物なので、是非保護してほしいものです。