insects of kinabalu park ⑩
3月25日のキナバル公園。森の三葉虫、サンヨウベニボタルを難なく?クリアした勢いで、次のターゲットである森のハンマーヘッド・シャーク、シュモクバエ(Stalk-eyed Fly)に挑みます。
シュモクバエと言ってもイメージのわかない人が多いと思います。まず、シュモクザメを思い浮かべて下さい。両目が左右に飛び出た金づち頭(ハンマーヘッド)の凶暴なサメですね。
シュモク(撞木)とは、鐘をつくT字型の棒のこと。T字の縦の棒が胴体で、横の棒の左右の端に目玉が付いているイメージです。
特にシュモクバエの♂の目玉は♀の倍ぐらい左右に飛び出ていて、胴体の長さより、両目の距離の方が長いという、とんでもない姿。
人間ならば、目玉が左右に1メートルずつ飛び出ているようなもの。とても歩けたものではありません。これと比べたら、シュモクザメなんて、全然大したことない普通の生き物です。
サンヨウベニボタルは思ったより明るい場所に多かったですが、シュモクバエは、小さな流れの近くの湿った薄暗いところに多い印象です。
典型的なのはこんな場所。小さな沢の上に覆いかぶさるような茂みです
真ん中に♀がいます。
この♂はちょっと例外的に、やや明るいところに。
苔の生えたジメジメしたところもお気に入りのようです。この♀(たぶん)
は落ち葉から、落ち葉へと飛び移っていました。
これも♀。こんなふうに葉先にいることも多くて、近づくと、フワッと飛びますが、たいていすぐ近くにとまります。飛び方を覚えると、よく見つかるようになります。
普通のハエのように「やれ打つな、ハエが手を擦り、足を擦る」の行動を見せています。
♀はより目玉の飛び出た♂を結婚相手に選ぶと言われています。つまり、飛び出た目玉は美男の象徴。目玉が離れたイケメン男子が、婚活で有利になり、よりシュモク度の高い子孫を残してきたということのようです。
立派な♂ですね。超美男子というところでしょうか。シラウシラウ川沿いの低木の葉の上にいました。
こんなものを探し歩いている人は、キナバル公園には誰一人いません。もったいないことです。
拙著「昆虫記者のなるほど探訪」でも、アジアの虫撮りの穴場をたくさん紹介してます。海外旅行の際には、是非異国の虫に注目を。グローバル化で人間界の異国情緒は乏しくなっていますが、虫の世界はまだまだ異国情緒たっぷりです。