虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

いくぜボルネオ虫紀行⑲=シュモクバエ・飛び出た目玉は美男の象徴

insects of kinabalu park ⑩

 3月25日のキナバル公園。森の三葉虫、サンヨウベニボタルを難なく?クリアした勢いで、次のターゲットである森のハンマーヘッド・シャーク、シュモクバエ(Stalk-eyed Fly)に挑みます。
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 シュモクバエと言ってもイメージのわかない人が多いと思います。まず、シュモクザメを思い浮かべて下さい。両目が左右に飛び出た金づち頭(ハンマーヘッド)の凶暴なサメですね。
 シュモク(撞木)とは、鐘をつくT字型の棒のこと。T字の縦の棒が胴体で、横の棒の左右の端に目玉が付いているイメージです。

 特にシュモクバエの♂の目玉は♀の倍ぐらい左右に飛び出ていて、胴体の長さより、両目の距離の方が長いという、とんでもない姿。
 人間ならば、目玉が左右に1メートルずつ飛び出ているようなもの。とても歩けたものではありません。これと比べたら、シュモクザメなんて、全然大したことない普通の生き物です。
 
 サンヨウベニボタルは思ったより明るい場所に多かったですが、シュモクバエは、小さな流れの近くの湿った薄暗いところに多い印象です。

 典型的なのはこんな場所。小さな沢の上に覆いかぶさるような茂みです
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 真ん中に♀がいます。
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 この♂はちょっと例外的に、やや明るいところに。
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 苔の生えたジメジメしたところもお気に入りのようです。この♀(たぶん)
は落ち葉から、落ち葉へと飛び移っていました。
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 これも♀。こんなふうに葉先にいることも多くて、近づくと、フワッと飛びますが、たいていすぐ近くにとまります。飛び方を覚えると、よく見つかるようになります。
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 普通のハエのように「やれ打つな、ハエが手を擦り、足を擦る」の行動を見せています。
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 ♀はより目玉の飛び出た♂を結婚相手に選ぶと言われています。つまり、飛び出た目玉は美男の象徴。目玉が離れたイケメン男子が、婚活で有利になり、よりシュモク度の高い子孫を残してきたということのようです。

 立派な♂ですね。超美男子というところでしょうか。シラウシラウ川沿いの低木の葉の上にいました。
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 こんなものを探し歩いている人は、キナバル公園には誰一人いません。もったいないことです。

拙著「昆虫記者のなるほど探訪」でも、アジアの虫撮りの穴場をたくさん紹介してます。海外旅行の際には、是非異国の虫に注目を。グローバル化で人間界の異国情緒は乏しくなっていますが、虫の世界はまだまだ異国情緒たっぷりです。
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