風薫る五月。スイカズラのきれいな花を眺めていると、その茎のあちこちにバラのトゲのようなものが。
これ、実は蛾の繭なんです。スイカズラクチブサガという、注目度の極めて低い蛾です。それにしても変な形。トゲに擬態しているのかもしれませんが、もともとスイカズラにトゲはないし、ただ目立つだけだと思うのですが。
スイカズラの花。茎にはトゲなんかありません。
トゲは一つの繭に必ず二つ。猫の耳のようにも見えます。ツインピークスという連続殺人が絡む謎めいた米国のテレビドラマ・シリーズがありましたが、この繭がなぜツインピークスになっているのか、どうやってこの二つの頂点を作るのかも、やはり謎です。
ツインピークスの繭が二つ、左右に分かれて付いている茎もあります。芸術的ですが、謎は深まるばかりですね。
幼虫はこんなです。
繭を作る直前はこんな感じ。
そして繭作成の途中経過はこんなです。
ここで若干ですが、謎が解け始めた気がしてきます。繭の前後はまだ閉じられておらず、中央付近には三角形の繭片が見えます。その三角形の頂点は、幼虫の背中部分でつながっているようです。
このあと、繭の前後の空間を、ギュッと狭めて縫合すれば、たぶん中央部分にとげのある立体が完成すると思われます。
いつの間にか、ほぼ完成していた繭です。
だれか、たっぷり暇な時間のある人がいたら、ここに至るまでの過程をつぶさに観察してほしいものです。でもそれほどの暇人はめったにいないでしょう。
もしかして、蛹の形がツインピークスになっている可能性もあるのではと思い、繭を開いてみましたが、蛹は普通の格好でした。
ただ、怪しいのはこの黒く尖ったお尻部分。ここを使って、三角形の部分を押し上げ、見事なツインピークスに仕上げるのでは、との疑念も生じてきます。
最後はちょっと遊びです。ツインピークスを並べて、山脈にしてみました。
前から光を当てると、バットマンが闇の中から現れるときのような、不気味な影ができます。
蛇足ですが、成虫の蛾はこんなに地味です。
さらに蛇足ですが、かなり暇なのでこの繭を探してみたいという方にアドバイスです。この幼虫はスイカズラの生長点近くを好んで食害するので、先の方が食害やら糞やらで若干汚くなっている枝が目印です。食害された生長点からさほど離れていないところに。この季節、たくさんの繭があるはずです。