虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

謎のツインピークスはスイカズラクチブサガの繭

 風薫る五月。スイカズラのきれいな花を眺めていると、その茎のあちこちにバラのトゲのようなものが。
イメージ 2

イメージ 3

 これ、実は蛾の繭なんです。スイカズラクチブサガという、注目度の極めて低い蛾です。それにしても変な形。トゲに擬態しているのかもしれませんが、もともとスイカズラにトゲはないし、ただ目立つだけだと思うのですが。

イメージ 1
                          スイカズラの花。茎にはトゲなんかありません。

 トゲは一つの繭に必ず二つ。猫の耳のようにも見えます。ツインピークスという連続殺人が絡む謎めいた米国のテレビドラマ・シリーズがありましたが、この繭がなぜツインピークスになっているのか、どうやってこの二つの頂点を作るのかも、やはり謎です。

 ツインピークスの繭が二つ、左右に分かれて付いている茎もあります。芸術的ですが、謎は深まるばかりですね。
イメージ 4

イメージ 5

 幼虫はこんなです。
イメージ 6

 繭を作る直前はこんな感じ。
イメージ 7

 そして繭作成の途中経過はこんなです。
イメージ 8
 ここで若干ですが、謎が解け始めた気がしてきます。繭の前後はまだ閉じられておらず、中央付近には三角形の繭片が見えます。その三角形の頂点は、幼虫の背中部分でつながっているようです。
 このあと、繭の前後の空間を、ギュッと狭めて縫合すれば、たぶん中央部分にとげのある立体が完成すると思われます。

 いつの間にか、ほぼ完成していた繭です。
イメージ 9
 だれか、たっぷり暇な時間のある人がいたら、ここに至るまでの過程をつぶさに観察してほしいものです。でもそれほどの暇人はめったにいないでしょう。

 もしかして、蛹の形がツインピークスになっている可能性もあるのではと思い、繭を開いてみましたが、蛹は普通の格好でした。
イメージ 10
 ただ、怪しいのはこの黒く尖ったお尻部分。ここを使って、三角形の部分を押し上げ、見事なツインピークスに仕上げるのでは、との疑念も生じてきます。

 最後はちょっと遊びです。ツインピークスを並べて、山脈にしてみました。
イメージ 11

 前から光を当てると、バットマンが闇の中から現れるときのような、不気味な影ができます。
イメージ 12

 蛇足ですが、成虫の蛾はこんなに地味です。
イメージ 13

 さらに蛇足ですが、かなり暇なのでこの繭を探してみたいという方にアドバイスです。この幼虫はスイカズラの生長点近くを好んで食害するので、先の方が食害やら糞やらで若干汚くなっている枝が目印です。食害された生長点からさほど離れていないところに。この季節、たくさんの繭があるはずです。