虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

昆虫記者の原点・コーカサスオオカブト♂樹上の対決

 フレーザーズヒルで宿泊したホテルはシャーザン・イン。このホテルでは、泊まる部屋はゴルフコースに面した側を選びましょう。裏庭に面した側の部屋より少し値段が高いですが、ここでケチってはいけません。ベランダに飛んでくる虫は、前方が大きく開けたゴルフコース側の方が多いのです。もともと宿泊費はツインで1部屋1泊4000~5000円ぐらいで、そんなに高くはありません。

 闇夜であれば、♀はホテル周辺にも結構飛んできます。でも、♂がなかなか見つからない。コーカサスオオカブトの♂同士の対決シーンを撮ることが、今回の最低限のノルマなのに。
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    オオカブトが潜むフレーザーズヒルの雲霧林

 そんな時には、必ず天の助けがあるものです。それもこれも、普段の行いが良いからでしょう。

 ホテルの建物の一角にある土産物屋兼、食料品店兼、旅行会社の店先にナイトウォークの表示があったので、店主兼たった一人の店員のインド人に「夜の虫探しのツアーはあるか」と尋ねます。
 しかし、店主の対応は、「そんなものはない。今はナイトウォークもやってない」と、そっけないもの。でも、そんなことで諦めてはいけません。しつこく、しつこく「虫、虫、虫」と言い続け、何かの拍子に13年前の「マレーシア昆虫教室」の話を持ち出した時、突然店主の表情が変わったのです。

 何と、店主のドライ氏は、13年前に昆虫教室の助手兼、ガイド兼、ドライバーを務めていたのです。何でも兼務するドライ氏です。そういえば、どこかで見たような顔です。(ちなみに、フレーザーでのマレーシア昆虫教室は最近復活したようです。主催者の河谷先生はますます元気なようです。興味のある方は、「マレーシア昆虫教室」で検索すると、すぐにホームページが見つかります)

 ドライ氏と虫記者の疎遠な関係は一気に氷解。虫仲間の親近感が会話をはずませます。「観光客は入れない山の上のアパートにオオカブトの♂がたくさん飛んでくるから、今夜捕まえてやるよ」という話がまとまるまで、時間はかかりませんでした。

 その夜、ホテルで夕食をとっていると、ドライ氏がやってきて「大物をゲットしたぜ」と耳元でささやきます。

 これがその大物。
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 日本のカブトよりはるかに大きいですが、それより際立つのは、足の長さ。特にフ節と爪が長く、がっしりしていて、手に乗せると引きはがすのは容易ではありません。

 「翌朝に写真を撮ってから逃がしてやる」とドライ氏に約束。

 そして次の日の朝。幸運は続きます。ベランダで♀を数匹捕まえ、撮影場所の森に向かう途中で、小型の♂を拾います。
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 これで豪華キャストが勢ぞろい。森の大木を舞台に、可愛い♀をめぐる2匹の荒くれ者の対決シーンが展開されます。
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 虫記者の見つけた小型の♂は、ドライ氏の大型♂に簡単に投げ飛ばされてしまいました。男の象徴である太く大きな角は伊達ではありません。てこの原理が働くので、角が大きい方が圧倒的に有利なのです。