虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

怪物バニップとニジイロクワガタ・豪キュランダの旅

 ケアンズからの日帰り観光地の定番であるキュランダでは、宿泊しようなんて考える人は、まずいません。だから、大手のサイトで予約できるホテルなんてものは、村の中には一軒もありません。つまり、泊まる必要なしってことですね。

 予定していた宿が泊まれなくなって、急きょキュランダに宿をとったという人のコメントをネット上で見つけました。そのコメントは、「一泊ぐらいなら、そんなに不便なところではない」と弁護しながらも、「でも、二度と泊まろうとは思わない」との一言でとどめを刺しています。

 これだけ警告してもなお泊まりたいという人のために、宿泊施設を紹介します。まずは、キュランダ駅の目の前にあるキュランダ・ホテル(キュランダ・ホテルモーテルとも言います)。
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 キュランダ・ホテルにはホームページがありましたが、何とリフォーム中。すぐに新ページができると表示されたまま何カ月たっても、リフォームは完了しません。FOR・SALEなんて写真も掲載されていて、オーナーが代わったのかもしれません。仕方なくメールしましたが、返事が来ません。またまた、しかたなく電話すると、簡単に予約OKとなりましたが、その後にメールが来て、細かい必要事項を返答させられました。返信を希望したのですが、やはり返信はありませんでした。相当にアバウトなホテルのようです。でも、到着したらちゃんと予約されてました。

 もともとは、1880年創業のアイリッシュパプで、ホテルはついでにやっているって感じなので、いつまで営業を続けるのか分かりません。
 ダブル一部屋が一泊75豪ドルと安いし、駅前なので、とりあえず重い荷物を置いて、シャワーを浴びて、一服してから虫撮りになんていう、変な客がほんの1泊だけするにはぴったりです。

 空港からタクシーで駅に行き、重い荷物を持ったまま高原列車に乗り込み、キュランダに到着したなら、この選択肢しかないわけです。ちなみに10ぐらい部屋があるのに、泊まっていたのは虫記者だけでした。ホテルとしての人気度は推して知るべしですね。

電話は
07 4093 7206
ホームページは
http://www.kurandahotel.com.au/
フェイスブック
https://www.facebook.com/Kuranda-Hotel-12251918
です。

 村のメインストリートは夜遅くまで街灯が点いているので、夏場はヒメカブトとか、クリスマスビートルとかが、路上にコロンコロンと転がっています。
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 でもせいぜい一泊ですね。翌日にはキュランダ・ホテルでタクシーを呼んで、1キロほど離れた、もっと環境の良さそうな、キュランダ・レインフォレストアコモデーション・パークに移動するのがいいです。

 キュランダ・レインフォレストアコモデーション・パークのパックパッカー用宿泊施設は、シングルで35ドルと、ともかく安いです。でもトイレ・シャワーなどが共用では落ち着けないし、ライトトラップのできるようなベランダもありません。ベランダのあるキャビンは1泊100豪ドル。約8500円。これでも、日本の基準からすれば、まずまず安いですね。
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 ホームページはここです。しっかりしたホームページで、ここから予約ができます。
https://www.kurandarainforestpark.com.au/

 周辺の緑は豊かだし、レストランは極めて評判がいいし、ナイトウォークもアレンジできるし、ともかく、虫探しにはもってこいの感じですが、色々問題もあります。

 まず村から離れているので、車のある人でないと、食料の調達など日々の生活が大変です。普通の道を歩くと、たぶん村まで30分ぐらいかかるのではないかと思います。ちょっと近道をすると20分。もっとすごい近道もあって、こちらは村まで10分ですが、極めて危険で、なおかつ法律違反です。しかし、受付で近道を訪ねると、この道を教えられます。

 散策路を下っていくと、線路に突き当たるのですが、そこに道しるべがあって、右折して線路を歩き、右側の階段を上ればキュランダ村との案内が記されています。線路から覗くと、すぐ近くに見える丘は、前日に歩いた墓地の丘。この墓地から大通りを挟んだ向かい側がキュランダ村ですから、ものすごい近道ということになります。ですが、その道しるべの前には、線路に入るのは違法であり、高額の罰金が科されるとの、当局の警告標識も立っているのです。
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 散策路の案内に従って進んでいくと。

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 線路に突き当たる直前に、こんな道しるべが。線路に沿って橋まで歩き、右側の階段を上るとキュランダ村とのことです。

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 これが散策路の終点。ここからは線路です。

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 道しるべに従って、線路を歩く人がいっぱいいます。

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線路を歩くことは犯罪であり、訴追されます。罰金は最高3000豪ドル。

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 向う側に見えるのが、キュランダ村側の上り階段です。こちら側はバロン川沿いの散策路の入り口です。ここで線路を横断するのは違法ではありません。ハイキングコースの一部です。ここから右に線路を歩くと、アコモデーション・パークへの近道ですが、それは違法です。

 さあ、どうするか。逡巡していると、後ろから来た人々が、次々と線路を歩いていきます。電車はめったに来ません。キュランダから先へ行く電車は、一日に2、3本だと思います。しかし、真人間の虫記者としては、法律を犯すことはできません。罰金を払えるだけの金もありません。結局どうしたのか。それは永遠の謎のままとなることでしょう。

 次にレストランですが、営業は日曜以外は夜だけで、水曜日は休みなので注意が必要です。値段はリーズナブルで、味は申し分ないです。車があるなら、夜にこのレストランにだけ来るという選択もおおいにありです。緑に囲まれているので、いろいろな虫も飛んでくることでしょう。
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 そして、一番重要なナイトウォークです。このナイトウォークの案内役は、ドクター・デーブとされています。これはびっくり。昆虫文学少女として知られる虫友の新井麻由子ちゃんが、親愛の情を込めてゴキブリ博士と呼んでいた、キュランダ在住の昆虫学者(エントモロジスト)のデービッド・レンツ博士に違いありません。麻由子ちゃんは、3年前のナナフシ探しの旅で、博士と知り合い、自宅にまで招かれていたのです。昆虫文学少女、恐るべしですね。宿の受付で確認してみると、大正解。ドクター・デーブはやはりデービッド・レンツ博士でありました。
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 これがアコモデーション・パークの受付。

 デービッド博士は、バニップというサイトhttp://bunyipco.blogspot.jp/を開設しています。バニップとは、オーストラリアの奥地の沼に潜む世にも恐ろしい姿の怪物です。しかし、博士のハンドルネームは、ミスタースマイリーと優しげです。いったい博士はどんな人物なのか、ドキドキしますね。

 ところが、受付で翌日の参加を申し込んでみると、規定人数に達しないとナイトウォークは開催できないというではありませんか。しかし、締め切りの午後4時になっても参加希望者は虫記者1人だけ。結局ナイトウォークはお流れになりました。しかし、そんなことで諦める虫記者ではありません。

 受付で電話番号をきいて、直接交渉です。「日本を代表する昆虫ジャーナリストだ」と大見えを切ってみましたが、いい反応がありません。やはり博士は怪物バニップだったのか。
 しかし、「麻由子の友達だ」と伝えると、態度が一変。「麻由子なら覚えている。クリスマスカードももらった」と陽気に語り出しました。怪物は突如ミスタースマイリーとなり、ナイトウォークは即座にOKになったのでした。

 そしてこの、ラッキーな展開が、オーストラリアが誇る美し過ぎるクワガタ虫、ニジイロクワガタとの感動の出会いにつながるのでありました。
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 日本の昆虫ショップの品ではありません。正真正銘、オーストラリアの森で出会ったニジイロクワガタです。