虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

ビロードの輝きと毒入りの蝶=タイ・カオヤイの旅

 タイ・カオヤイ国立公園は、ビロードタテハの宝庫です。特に、カオヤイ最大の滝、ヘオナロック滝の展望台へと下る心臓破りの階段にはたくさんいて、ハーハー、ゼーゼー言っている虫記者のような中高年観光客をあざ笑うように、左右の手すりの間を軽やかに移動します。
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 カオヤイ最大のヘオナロック滝

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 中高年に優しくない心臓破りの階段

 ビロードというくらいですから、上品な紫色の艶やかな輝きを持つ蝶なのですが、ちょっと薄暗いところにいたりすると、羽を開いても、食指が全く動かないただの黒っぽい、蛾みたいな蝶になってしまいます。
 たとえ光が当たっても、いい色が全然出ない角度がほとんど。このあたりの控えめな態度こそが、高貴なビロード生地との共通点なのかもしれません。
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 これでは全然、まったくダメですね。いい角度を探して撮影位置を変えたりすると、すぐに蝶に気付かれて逃げられてしまいます。虫は全般に、直線的に近づく相手はあまり警戒しないのですが、横への動きには敏感なようです。

 しかし、ついに、いい感じに光が当たっているビロードタテハを駐車場で見つけました。バシバシ写真を撮っても全く動こうとしません。
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 死んでいるのかと思って、指で触れると、突然正気に返って、飛んで行ってしまいました。恐らく車にはねられて気を失っていたのでしょう。

 ビロードタテハの羽の裏側の模様がけっこうきれなことに、今回初めて気づきました。ただし、真っ茶色で何の模様も見えないやつもいました。個体によってだいぶ違いがあるようです。
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 ビロードタテハの羽の裏側。真っ茶色一色のもいる。

 同じように、撮影位置によって、色が変わってしまうのが、リュウキュウムラサキですね。
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 ブルームーンという別名の由来である青い縁取りの幻想的な紋も、角度によってはただの白い卵模様になってしまいます。リュウキュウムラサキのまたの名はエッグフライ。「青白い月」になるか、「つるつる卵」になるか、見る角度によって、名前もイメージも変わってしまいます。

 今回初めて目にしたのが、ヘリグロホソチョウです。ちょっと変わった飛び方で、一瞬、蛾なのかなと思ってしまいました。花にとまった姿も、妙に細くて、ほかの蝶とはかなり違った印象です。だからホソチョウなのでしょう。公園内には少なくて、町中の空き地にたくさんいました。
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 ドクチョウ亜科に属していて、食べると毒があっておいしくないようです。そう言われてみれば、毒々しい蝶です。興味のある方は、食べてみてください。死んでも責任は取りません。

 ヒオドシシジミタテハもなかなかきれいな蝶です。暗い森の散策路に入ると、一番多いのがこの蝶。
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 あとのタテハは、いつもの、どうでもいい面々です。
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 チャイロイチモンジです。羽の裏側がまずまずきれい。

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 いつものイシガケチョウ。幼虫の方が見たい。

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 チビイシガケチョウ。よーく見ると、確かにイシガケチョウ的な特徴が。

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 イワサキコノハです。岩崎卓爾さんにちなんだ名前。石垣島で見れば、感慨ひとしおなのですが。

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 オナガタテハ。

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 カバタテハ。本当にどうでもいい領域に入ってきたので、このへんでタテハは終わりにします。