昆虫文学少女の新井麻由子ちゃんも、今や青春真っただ中の女子高生になりました。あの名曲「なごり雪」のように、気付いたら、幼い少女も、素敵な乙女に。でも、虫への愛はいまだ断ち切れず、今回はボルネオのクバ、バコ国立公園に突入。母と娘の海外虫旅は何と10回目です。
以下の旅日記は、麻由子ちゃんの書下ろし。サイトの管理者たる、わたくし昆虫記者にとって、誠に光栄なことです。もちろん、昆虫記者による改変、修正はありません。そんな恐れ多いことができるはずはありません。そして、内容がいかに過激で、刺激的で、魅力的過ぎても、昆虫記者には一切責任がないことを、ここにお断りしておきたいと思います。
KUBAH & BAKO 国立公園
「母娘虫旅も10回目!」
2017.8.17 出発
今回の旅の目標は・・・
1 初見のナナフシを捜せ!
2 コノハガエルを捜せ!
3 カブトガニを捜せ!
でしたが、そこに昆虫記者さんからの「旅レポを提出せよ!」が加わり、私は母と共にいつものようにドタバタと出発しました。
二日目にやっと到着したKubah国立公園は、予想はしていましたが相当な僻地にありました。
公園内に入ると、かつてオフィスとして使われていた立派な建物は固く閉ざされ、その代わりに(?)大人二人でいっぱいになる程度の小さい小屋がポツンと置かれています。現在公園内にある施設はこの小屋が全て…
カフェテリアはもちろんありません。水すら買えません。しかもその小屋にいるスタッフは17時、ゲートの門番のおじさんも22時で帰ってしまうのです。
つまり、夜間の公園内には宿泊している人しかいないのです。初日は沢山の宿泊客で賑わっていましたが、もしみんなチェックアウトしてしまったら…と考えるとたちまち不安がよぎります。
でもでも、ここはサラワクで一番歴史のある国立公園で、カエルや両生類の研究者の方々が沢山調査にいらっしゃるところであり、2010年に新種として登録された、東南アジアでは一番小さいボルネオヒメアマガエルはここKubahで発見されている!カエルが多いということは、すなわちカエルの大好物である昆虫の数も多いはず!昆虫記者さんを見習ってがんばろう!
シャレーは相当に急な坂道と階段を登った斜面に建っていて、登り降りがかなり大変です。1週間分の食料や飲み物、着替えなども運ばなくてはならないので、母と二人で何度も登ったり降りたり…、本当に心臓が破れるかと思いました。
シャレーの中は無駄に広いのに、玄関のドアはギシギシでなかなか開かない、且つ鍵が回らない、且つ抜けない、且つもちろん簡単には閉まらない、且つキッチンの冷蔵庫は錆びてる、且つエアコンからは水がほとばしる!トイレットペーパーすらない…タオルなんて当然ない!
あの2012のクックフーンを上回る、圧倒的な廃墟感。私は自分に霊感がないことに感謝しました。
母はすっかり元気をなくし、AGODAで町のホテルを検索し始めましたが、日本から持参したWi-Fiルーターは、5分もたたないうちに「No Service」と薄情な表示を残し固まり、心が折れそうになります。
こうして私たち母娘は、さらに強くたくましく立ち上がることになったのでした。
最低限の生活必需品を揃えるために、一番近いスーパーまで20分車を走らせました。
高速道路にしか見えない一般道は、制限時速90km、気持ちいいほどにすかーんとしていて車がいない上、信号も滅多にありません。アスファルトが敷いてあるのは車が通るところだけ、あとは見事に何もありません。お店はもちろん、ガソリンスタンドも何も。あるのはただ土と緑と空、視界のほとんどは緑と青で埋め尽くされています。
Kubahから20分程でとても楽しいショッピングモールにやって来ました。スーパーは新しくて品揃えも豊富だし、沢山の人で賑わっているレストランや茶室からはいい匂いがして思わず吸い込まれてしまいます。
ふらっと入ったお店で、信じられないレベルのLaksaが出てきて感動しました。実は麺が苦手な私が、一本残らずスープまで飲み干してしまいました。まだ食べたい!
それにアイス・カチャンの美味しいこと!
母もたちまち元気を取り戻し、ここにいる間にアイスカチャン全種類を制覇しよう!と言って喜んでいます。そしてその勢いで調子に乗り、クチンの町まで夕食を食べに行ってしまったのです。今回の旅の成果は食べ物でもあり…本当に何をいただいても美味しくて、誘惑に負け、毎日クチンまでご飯に出かけてしまい…虫の成績が悪いですm(_ _)m
サラワクの郷土料理は、どうなっちゃってるの?と思うくらいに美味しかった!
Kubah1日目の虫探しは、同種のナナフシのオスメスほとんどのステージを見ることができました。半径500mほどの中17頭、食草はバラバラ。
Epidares nolimetangere
ウツボカズラ、良いです!
ついでにナナフシも笑。
Presbistus species
◇3日目、 Bako国立公園
Bako村から高速ボートに乗り公園へ。
船から直接ビーチに降り、海から歩いて上陸。
スーツケースなどは間違っても持って来られないところです。
この最高な環境にアダン(多くのナナフシの好物です)があれば!必死でアダンを探します。…が見つかりませんでした。それにしても海にまでサルがいて、持ち物を片時も手離せません。
シオマネキ(後ろの穴がこの子の家)
トビハゼ?ムツゴロウ?
とにかく海がきれい。空がきれい。雲がきれい。今日は一日海を満喫!虫はあまり捜せなかったけれど、海もいいな。
帰りのボートで船頭さんにカブトガニが見つからなかったと言ったら、夜の方が見つけやすいそうです。カブトガニなら「TOP SPOT」(クチンの海鮮料理屋台街)に行けばいっぱいいるし、しかも美味しいから食べてみるように言われて軽く落ち込みます。
しかし!どうしても気になり、帰りに「TOPSPOT」に行ってしまいました。
幸いというか残念ながらというか、この日はカブトガニが水揚げされていませんでした。美味しそうなカニやロブスターがたくさん並んでいるのに、わざわざ日本では危惧1類のカブトガニを食べなくても…と思ってしまいますが、食の文化も様々なのです。私たちは、白身の魚を一匹とエビ、野菜と豆腐などを選び料理していただきました。魚がおいしい!絶対に多すぎると思ったお料理が綺麗になくなりました。
最高!サラワク飯!
◇4日目 Kubah カエル・デー
カエル博士のドミニクさんにご一緒していただきカエル探し!
今日は午後から雨が降り始め、中止かもと諦めていたのですが、ドミニクさん曰く、このような雨の日は絶好のチャンスだそう。
ほんとかな。結構降っている。カッパを着て長靴を履き、完全防備で出発!なのに、肝心のカメラを忘れてしまった!
今日は新月!闇に包まれた道を進むドミニクさんの車のヘッドライトに、この雨の中、蛾や甲虫が突進して来ます。ホタルも光ります。
初めはドミニクさんに見つけてもらうカエルを喜んで撮っていたのですが、どうしたことだかナナフシしか見えないはずの私の目に、カエルが見え始めた!右にも左にも上にも下にも…
いるなんてもんじゃない!まさにカエル王国なのです。
ナナフシとコノハムシ探し以外で目を皿にしたことは初めてかもしれません。
そして本日1度目の感動がやってきた!
ミツヅノコノハガエル!!!
ずっとボルネオに通っていてやっと会えた!
嬉しくて嬉しくて無意識に肩に手をかけ気づく…
カメラがない…!!!
私の愛用ニコン…
昆虫記者さんの顔が浮かびさらに落ち込みます。
よりによってこういう時に…
超ごめんなさい!
早く手に乗せたい!という思いが先走ってなかなかピントが合いませんが、ファインダー越しに見るミツヅノコノハガエルは、小さいのに背中が堂々と伸びていて目はキラキラ、雨を浴びながら心から満足そうに枯葉の上に座っていました。
ライトを向けても全く気にしない。
嬉しくて何度も声がひっくりカエル!
その後も見つかるのはほとんどカエル!
時々ナナフシ。
ナナフシも雨ニモ負ケズ、葉っぱにしがみついている。
(送信したら自動的にここでちょん切れてしまいました。なので、次回に続きます)