虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

虫LOVE乙女と虫ママのジャングル探検記その2

 前回の記事が送信中に、ブチっと切れてしまったので、麻由子ちゃんのボルネオ旅「4日目 Kubah カエル・デー」の途中からの続きです。

 そして!

 本日2回目の感動!

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      2010年にここKubahで新種として記録されたMicrohyla

      nepentheicola!約10mm! 小さい!

 

 ドミニクさんが指差してくれてもなかなか分かりませんでした。

 この体から信じられない音量の鳴き声を出していて、その声でドミニクさんが必死に捜してくれたのです。

 この子は世界で2番目に小さく、なんと食虫植物であるウツボカズラの捕虫嚢の中に卵を産み、そこでオタマジャクシを育てるそうです。

 あの大きいカマキリでさえウツボカズラの中で溶けてしまうのに、すごいことだ!

 よくこんなのを見つけるものだと尊敬してしまいます。

  

 Kubahに来てよかった!シャレーも泊まってみたら意外とよく眠れるし、冷蔵庫だって錆びているがペットボトルの水をあっという間にガチガチに凍らせてくれる!

 とっても良いところだ!

 

◇5日目 マタン・ワイルドライフ・センターへ!

 Kubah国立公園の敷地内、私たちが泊まっていたエリアとは反対側に、群れからはぐれた野生のオランウータンやサルを自然に返す取り組みをしている施設があると知り、どうしても行きたかったのです。屋外で過ごしているオランウータンたちは元気そうでしたが、リハビリ中のオスのオランウータンが一頭檻の中で治療を受けていて胸が痛みました。檻の隅でこちらに哀愁が染みた背中を向け、なぜかペットボトルのお水をちびちび飲んでいる。その姿があまりに悲しそうで…

心にも大きい傷を負っているのかもしれません。

 ここが安全なところであることを理解して、センターの獣医さんやスタッフの方に心を開き、意思の疎通ができるようになることを祈りました。

 

 実はここへ来るのが大変でした!

 途中、車一台がやっと通れるほどの道に両側から鬱蒼と葉が生い茂り、二本渡されている車用の線路のような石の下は水が湧き出るぬかるみ…というリアルジャングルクルーズを、マレーシア国産エコノミーのレンタカーで渡るという、母にとってはありえない道が待ち構えていたのでした。

 しかも急な下り坂をずっと降りて来ていて、引き返す選択肢はない。Uターンも当然不可能。

 

     この状況が飲み込めず呆然と立ち尽くす母

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 でも何か大物が潜んでいそうな、そんな気がしてキョロキョロしてしまい、半分泣きそうになっている母に怒られ、車から降ろされてしまいます!

 大物というのは昆虫だけではない、いろんな意味での大物がいるに違いない誰もいない森の道で、私は長靴を履きタイヤが決して石から落ちないように母に合図を送り続けることになりました。

 石はタイヤとほぼ同じ幅、直線距離にして10m程のそのポイントを通過するのにかかった時間はおよそ30分!

 そこからほどなくして、農家がちらほら見え始めた時には、二人して心から安堵しました。

 次回からは、レンタカーをケチるべからず!と母。(苦笑)

 

◇6日目 ナナフシを捜せ!

 夜明け前からナナフシの大捜索。

 執念でギリギリまで頑張りましたが、見られたのは6種のみ。しかも全部がトゲナナフシ系だった。量はいるのですが、種類が伸びません。最終日になってやっと、ふらふら美味しいものを食べ歩いてしまったことを後悔するのですが、時は戻らない…

 ナナフシと旨いものを天秤にかけるとこうなるという失敗例でありました。 

 

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 すっかりお馴染みとなった小屋にシャレーの鍵を返し、感動のサラワクLAKSAとアイス・カチャンを食べ納めて空港へ。

 

 今回の旅では、地味なナナフシが多くて、あまりの食事の美味しさとインパクトが強かったカエルたちに押されてしまっていますが、これまで見ていなかったところに見えていなかった生きもの達が見えて、よかったかも!と思うことにします笑。

 

最後に見たのは眠るコウモリ 目を開けたままです。

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 昆虫記者さんの読者の皆様、お読みくださりありがとうございました。

 昆虫記者さん、良い機会をありがとうございました。

 今回滞在したKubahは、ボルネオ最古のジャングルで日が沈むと人間の気配が全く消えてしまいます。

 新月の漆黒の闇の中、草むらを照らすのも「ちょっと失礼します」と別の世界にお邪魔させていただく感覚でした。

 考えてみると、せっかくの自然のパワーや輝きを人間は無遠慮に壊しているのかもしれません。

 人がいないと生きものたちは心から生き生きといのちを輝かせている!もともと虫や生きもの達の方が、ずっと前からそこにいたのです。

 そしてもともと人間だって生物多様性の中でうまく共生できていたはずです。

 私たち人間も他の生きもの達に対して少しだけ謙虚な気持ちを持てたら、諸々の迷惑をかけずにすむのではないだろうか…そして幸せな小さい生きもの達が、元気を失いかけている地球をもう一度輝かせてくれるのではないだろうか…なんて考えてしまった今回の虫旅でした。

 

 今回もアドベンチャー度は前回を上回ったかも…と思っていたら、偶然「密やかな野生」写真家の佐藤岳彦さんにお話を伺える機会に恵まれ、こんな小さいことでキャーキャー言っている自分が恥ずかしくなりました。

 佐藤さんは世界中を撮影して回っていらっしゃいますが、いつもお泊まりは野外のハンモック!

 食料は鶏を生きたまま連れて行ったり、川で魚を釣ったり、お風呂も川!

 トイレットペーパーがないくらい、シャワーが冷たいくらい、お風呂の壁にハエが敷き詰まっているくらい、網戸がビリビリなくらい…

 どうってことない‥と思えるようにワタシモナリタイ。

 どうやらまだまだ「ひよっこ」な私たち親子なのでした。

 「わろてんか!  m(. .)m

 

 虫に出会うと旅は百倍楽しくなる!

 旅は虫連れ世は情け!

 ナナフシガールの虫旅は続きます!

 Kubahの虫や自然たち、ありがとう!

             2017.9月 新井 麻由子

 

◇昆虫記者からの余計な一言

麻由子ちゃんとお母さんの関係は、最初の頃は、娘の奇妙で不可解な趣味に、お母さんが保護者としての使命感からお付き合いしていた感じでしたが、今や立派なジャングル探検隊長と隊員になりました。では、母と娘、どちらが隊長なのか?。「それは私!」と二人ともが答えます。

良きライバルですね。しかし、ライバル関係が行き過ぎて、冒険旅行がデンジャラスゾーンに入ることが心配です。写真家の佐藤岳彦さんみたいにナリタイなんて、とんでもない。佐藤さんは超人ですから。どうか小心者、小市民の昆虫記者を見捨てないでいてほしいものです。