虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

秋の特選虫旅in鎌倉

 秋の特選虫旅。今回は鎌倉です。
 賑わっているのはJR鎌倉駅東口の方ですが、虫旅なら、落ち着いた雰囲気の西口に出た方がいいですね。江ノ電の駅がある方です。
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 正面の大通りをずんずん進んで、市役所の横を通り過ぎ、トンネルをいくつかくぐると、左側にカフェレストランの樹(いつき)ガーデンへと続く急な階段が現れます。
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 途中で休みたくなるような、本当にきつい階段です。ベンチがあるので、心臓が破れる前に一休みするのもいいでしょう。
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 普段はここから樹ガーデンの店内を素通りして、大仏ハイキングコースへと向かうのですが、今回は昆虫文学少女の新井麻由子ちゃんと、麻由子ママのお二人とご一緒したので、おしゃれなデートスポットとしても名高い樹ガーデンでお食事です。
 登山も、ハイキングもどんどんおしゃれになっていますから、虫旅もやっぱ、おしゃれじゃないと、虫ガールたちから冷たい目で見られてしまいますね。
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 食事中、頭上の梢をリスが走り抜けていきます。なんとテーブルの下にもリスがやってきます。実はこのリスは、鎌倉では害獣扱いされている厄介者のタイワンリスなのですが、そんなことを指摘して雰囲気をぶち壊しては、デートが台無しですから、「リスって可愛いね」などと、心にもないことを口にする虫記者でありました。

 樹ガーデンの花壇には、フジバカマが咲いていました。フジバカマの花の蜜は、アサギマダラの好物ですね。アサギマダラが飛んできたらいいね、なんて冗談で言っていたら、本当に飛んできました。慌ててカメラを取り出して、ピンとも合わせないでシャッターを切りました。アサギマダラはすぐに飛び去って、後に残ったのは超ボケボケの写真が一枚。デートの最中でも、常にカメラを手に、虫の出現に備えておく必要があるのです。
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 アサギマダラの写真が撮れなくて悔しくても、そんなことを顔に出してはいけません。おしゃれな虫旅デートでは、「ハハハッ、撮り損ねちゃったねー」などと、あくまでも陽気に振る舞う必要があります。

 飛び去るアサギマダラをしつこく目で追って、シャッターを切りましたが、蝶の姿は、全く写っていませんでした。
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 樹ガーデンは、ハイキングコースのスタート地点にもなっています。ハイキング好きの彼女を誘うなら、これは重要な加点要素になります。

 「えー、うっそー、レストランの中をハイキングコースが通っているなんて。最高。素敵ー」なんてことになるかもしれません。たぶん、そうはならないと思いますが。
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      このレンガの階段がハイキングコースへと続きます。

 そして、いよいよ大仏ハイキングコースへ。峠道に出て右へ行けば1キロで大仏、左へ行けば、これまた1キロで源氏山公園です。
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 今回は左の源氏山へ。

 ハイキングコースのササの茂みで、麻由子ママが「ここに何かいる」と、虫の隠れ家を発見。

 丁寧に糸でつづられたササの葉。
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 開いてみると、中にはコチャバネセセリの幼虫。
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 地面にはセンチコガネ。
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  不審な行動を怪しむ一般ハイカーの目を気にすることなく、虫探しに興じる母子。

 トゲナナフシらしき死骸が転がっていたので、「たぶんこのあたりにいたんだね」と木々の梢を見上げるナナフシ好きの母子。
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 ちょっと開けた草原で、卵を産み付けていたのはヒメクロホウジャク。
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 このホウジャクの幼虫は、赤い染料の材料として知られる雑草「アカネ」が好物です。虫撮りは、植物の勉強にもなっていいですね。虫にのめり込むと、どうしても植物の知識が必要になので、一挙両得というわけです。

 アカネには、ヒメクロホウジャクの卵と幼虫がいっぱい付いていました。
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 ヒメクロホウジャクの幼虫は、大きくなるとちょっとカッコイイです。
 正面顔は手塚治虫漫画の中でもあまり知られていないビッグXの帽子を思い起こさせます。
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 横から見ると、背中のトゲトゲが勇ましく、爬虫類のイグアナのように見えますね。
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 源氏山からは、寿福寺方面に下ると、すぐにJRの線路にぶつかります。

 途中に太田道灌の墓がありました。ほとんど誰も通らないマイナーなハイキングコースにポツンとあって、本当にこれが江戸城を築城した人の墓なのでしょうか。などと、当然ながら、鎌倉では歴史も勉強できます。虫を見て、植物の知識を得て、おしゃれに食事をして、ハイキングを楽しみ、歴史の勉強もできる。秋の虫旅in鎌倉は、やっぱり特選です。
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 ハイキングコースの出口です。歴史の舞台から、現代に通じるタイムトンネルのようですね。
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 午後にはお稽古事があるという忙しい麻由子ちゃんを駅に送り届けたあと、虫記者はどうするか。実はここからが本番。おしゃれも、デートも、歴史もすべてかなぐり捨てて、次回はひたすら虫を探します。