めちゃめちゃ寒い日が続きましたね。こんな寒さの中、高尾山へ虫撮りに行こうなんて考える人は誰もいません。虫記者以外は。
極寒の中、同じ寒さに震える虫を見つけると、愛と共感を覚えるなんて人は誰もいません。虫記者以外は。
この時期、高尾で寒さに震えながら、虫記者の訪問を待ち焦がれている虫と言えば、アサギマダラの幼虫ですね。マダラチョウは、ほとんどが南国の蝶の印象ですが、高尾山のアサギマダラの幼虫は、ちゃんと厳しい冬を越すんです。2月でも、3月でも幼虫が見られるのがその証拠。
4月には、ヒメウツギの花の蜜を吸っている成虫の姿を時折見かけます。彼ら彼女らは、雪も積もる厳しい高尾の冬を生き延びた、幸運な幼虫の晴れ姿なんですね。
生き残りの確率が高いのは、たぶん暖かい南斜面側の稲荷山コースではないかと思われます。秋にキジョランに産卵に来ている成虫も、稲荷山コースでよく見かけますね。
ここのキジョランの多くは、こんなふうに杉の幹に巻き付いています。冬でも緑の葉のままなので、冬の方が断然見つけやすいですね。
そしてこんな丸い穴の食痕があったら、葉裏に幼虫がいる可能性があります。
ほうら、いました。
幼虫が居るのは新しい食痕の近く。古い食痕と新しい食痕の見分け方は簡単。裏側を見て、穴の周囲に白い粉があれば、比較的新しい食痕です。この粉はキジョランが出す摂食阻害物質ですね。
幼虫はまず、葉に円形の噛み跡を付けます。これが有名なトレンチ行動。すると、この噛み跡から、白くて、不味くて、べとべとして、いやらしい液体が出てきます。幼虫はその内側だけを、おいしく食べるというわけです。
固まって白い粉となった摂食阻害物質が、まだ残っていれば、比較的新しい食痕。これが風雨で消え去っていたら古い食痕ということになります。
この葉っぱの裏にも。
こういう、小さなキジョランに、たくさん食痕があれば、たいてい幼虫がいます。
ほうら。
爪先と比べてみると、こんなに小さい幼虫です。これで春まで生き残れるのか、ちょっと心配。
このキジョランにもいました。
これまた小さい。
おっ、これはいい位置にいます。トレンチの円形の中で食事中。
トレンチ(溝、堀の意味)からは白い摂食阻害物質がジワジワ染み出てくるのに、食べている場所の切り口は、新鮮かつおいしそうな緑のままなのが分かりますね。
帰りは谷筋の6号路。夏は涼しくていいのですが、冬は冷蔵庫を開いた時のような冷気が吹き抜けます。完全なルート選択ミスと言えます。