虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

東京都心、初夏の公園虫散歩(トビモンオオエダシャク幼虫)

 先日、五反田のミシュラン一つ星の焼き鳥屋たかはしで、昆虫文学少女新井麻由子ちゃんの母上と食事(もちろん虫撮りの情報交換が主目的)する機会がありました。ミシュランの星をもらっている店なのに、ランチの親子丼は1000円と格安。さすがにおいしかったです。

 その場で、大田区の某公園の桜が見頃との情報を教えていただきました。「今ごろ桜?」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、もちろん花ではなくて、虫の話です。トビモンオオエダシャクの幼虫がずいぶん大きくなって見ごろとのことでした。

 その場は情報交換だけで別れたのですが、いざ帰りの地下鉄に乗ろうとして、ふと「これから梅雨だし、トビモンオオエダシャクもそろそろ、蛹化するだろうし、果たして今年中に見る機会はあるのだろうか」と、突然不安になったのです。

 そして、居ても立ってもいられなくなり、改札口を前にしてUターン。大田区の某公園へと向かったのでありました。

 しかし、教えてもらったポイントに行っても、トビモンオオエダシャクの巨大シャクトリムシの姿はどこにもありません。そうなのです。奴は擬態の名手。最近老眼、乱視の進行が著しい虫記者に見つかるはずなどなかったのです。

 しかし、諦めかけてふと足元を見ると、ちょっと太目の桜の枯れ枝が落ちていたのです。枯れ枝にしては、若干不自然な雰囲気を漂わせています。もしや、これはトビモンオオエダシャクの擬態では。
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 まあ、たいていこういう場合は、トビモンオオエダシャクに擬態したただの桜の枯れ枝なのです。

 手のひらの上で転がしてみますが、全く生命反応がありません。
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 桜の幹に乗せてみましたが、微動だにしません。
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 ちょっと嘘っぽいですね。地面に枯れ枝擬態で転がっているはずないだろ、という指摘がありそうです。すいません。嘘でした。
 地面に落ちていたのは本当ですが、その時は歩いていました。
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 手に取って、ちょっと突っついてみたら、途端に奴は棒のように硬直し、硬直化の勢いで手のひらから、ピンと地面に跳ね落ちたのです。

 そこから今回のストーリーの最初に戻ります。巨大シャクトリムシは、その後1時間ほど、全く動かなくなりました。死に真似、枯れ枝擬態にもほどがありますよね。

 家に持ち帰って、飼育容器に移しても、また死に真似。
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 翌日に見たら、木の枝になりきっていました。
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 でも、体が大きくて、重すぎるのでしょうか。シャクトリムシ独特の、尾脚付近で枝にしがみ付き、上体は何の支えもなく、棒状に突っ立っているという姿勢は、あまり得意でないようです。たいていは頭を何かにもたれかからせているか、胸脚で別の枝につかまっている姿勢で、固まっています。
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 ここでしっかり、擬態の様子を学習しておけば、来年はだまされることなく、ばんばん見つけることができることでしょう。

 ちなみに成虫はたぶんこいつです。3月に撮影しました。
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