虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

春の小石川植物園、見どころベスト30(基準は昆虫記者の独断と偏見)

 春の小石川植物園で必見のお勧めトップ30をご紹介しましょう。なにせ、入園料が数年前に値上げされ、今や大人400円。できればベスト40ぐらい探し出して、1件当たりの料金を10円ぐらいに抑えないと、コストパフォーマンスが悪いですよね。桜だけ見て帰ったらもったいない。

 しかし、昆虫記者が選ぶベスト30ですから、当然トップ10は昆虫系です。引き続いて、11~20位の植物、21位から30位の風景を紹介するという、まさに独断と偏見のペスト30です。すべて4月6日(土)に撮った写真です。

★1位=ツマキチョウ

 まず、小石川の春と言えばツマキチョウ。栄えある第1位です。

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春にだけ現れる蝶、スプリングエフェメラルの中で都心で簡単にみられるのが、このツマキチョウ

 飛んでいるとモンシロチョウと間違えがちですが、よく見ると、羽先の黄色い紋がチラチラしているのに気づくはずです。小石川ではこの季節、モンシロより多いので、是非見つけて下さい。

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飛んでいるとモンシロに見えるが、羽先の黄色に注目。イチロー選手並みの動体視力が要求されます。

 さらに厄介なのが、草原でとまった時の擬態。羽の裏側は、若葉の緑と春の陽光、白い小さな花々といった風景の中に溶け込んでしまう迷彩服模様なのです。

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小石川のツマキチョウは、特にユキヤナギの中に隠れるのが得意。見事な擬態です。

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画面左下に擬態中のツマキチョウがいます。

 しかし、擬態している時は、擬態に絶対の自信を持っているので、10センチぐらいの距離まで近づいても逃げないことが多いです。接写のチャンスですね。

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擬態中は接写のチャンス。マクロでも撮れます。

 そしてもう一つやっかいなのが、ツマキチョウの♀です。メスには黄色の斑紋がないので、羽の表側はほぼモンシロチョウです。

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ツマキチョウの♀が飛んでいると、モンシロと見分けがつきにくい。

 とまったら、羽裏の模様でやっとツマキチョウだと分かります。

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静止した♀のツマキチョウ

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同好の士が二人、ユキヤナギの前でツマキチョウを狙っていました。

★2位=イタドリハムシ

 食用にもなるイタドリ、別名スカンポが地面からタケノコのような芽を出してくると、どこからかイタドリハムシが飛んできます。

 オレンジと黒の粋な模様は、テントウムシを連想させますが、長い触覚がハムシであることを主張しています。

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イタドリの葉の上に鎮座するイタドリハムシ。虫撮りは植物の勉強にもなりますね。

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葉裏のイタドリハムシ。これから食事に入るようです。

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イタドリよりシダの方がつかまりやすいようで、近くのシダにもイタドリハムシがたくさんいました。

★3位=ビロードツリアブ

 春に花畑でホバリングしている毛玉のような虫がビロードツリアブです。ハナダイコンの花に集まっていました。

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ハナダイコンの蜜を吸うビロードツリアブ。

 毛玉と呼ぶと可愛いですが、どちらかと言えば、空飛ぶタワシですね。

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ビロードツリアブは空飛ぶタワシ。

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地面にいる時は、口先が針のようでちょっと強面のビロードツリアブ。

★4位=ツツジトゲムネサルゾウムシ

 これも春限定の虫ですね。ツツジのつぼみを食害し、つぼみに産卵するという、ツツジの大敵です。でも小さな虫なので、多少の悪さは大目に見ましょう。

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ベタベタのツツジのつぼみの上を平気で歩ける技を持つツツジトゲムネサルゾウムシ。

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この長い口でツツジのつぼみをブスブスします。

★5位=アカボシゴマダラ幼虫

 エノキの若葉が出始めるころ、落ち葉の下や物陰で越冬していたアカボシゴマダラの幼虫が、木に登り始めます。そして、枝の股の部分などで、春の衣装に着替えるまでの間、こうしてじっとしていることが多いようです。

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小枝の股の部分に越冬明けのアカボシゴマダラの幼虫がいます。

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エノキの葉が伸びるまでは枯れ枝擬態ですが、若葉が茂ると今度は若葉擬態になるので、次の段階も楽しみですね。

★6位=ヒメアカタテハ

 東京では成虫越冬は難しいと言われていたヒメアカタテハですが、最近は気温上昇で、もしかすると成虫越冬したのではという個体を時々見かけます。

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産卵するためのヨモギの新芽を探しているのかも。

★7位=ミノウスバの幼虫

 小石川では毎年、マユミの木にミノウスバの幼虫が大量発生します。おかげでマユミの木は悲惨な状態になります。

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ミノウスバの幼虫の集団攻撃はすさまじい。マサキ、マユミなどがボロボロにされます。

★8位=ナナホシテントウ

 気味悪いイモムシ集団の後は、口直しにナナホシテントウです。

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★9位=ムーアシロホシテントウ

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一番よく目にする小柄なシロホシテントウの仲間。

★10位=モンシロチョウ

 ツマキチョウより少し大きい。ツマキチョウよりもゆっくり飛んで、よく花にとまるので、花にいる蝶を「もしやツマキチョウ」と思って撮ると、たいていモンシロでがっかりします。

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★番外

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テントウの中でも、とてつもなく小さいのがヒメテントウの仲間。これはたぶんアトホシヒメテントウ。

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サクラの花を食べていた蛾の幼虫。以前名前を調べたが、もう忘れてしまった。

 以下11位からは、植物です。なにせ小石川植物園ですからね。たとえ11位以下とは言え、植物を観なければ400円の入園料の意味がありません。

 

★11位=堂々の11位は、もちろん桜です。春と言えば花見、花見と言えば桜です。

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★12位=オドリコソウ

 ここで目立たない日陰に咲く花、オドリコソウをもってくるあたり、日陰者の昆虫記者らしいですね。

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白鳥の湖バレリーナの乱舞のようなオドリコソウの花

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でも実際は、傘をかぶった日本の踊子の集団らしいです。阿波踊りとか。

★13位=ウマノスズクサの仲間

 ちょっとウツボカズラに似ているウマノスズクサの花。小石川にジャコウアゲハがよく飛んでいるのは、色々なウマノスズクサの仲間が植えてあるからですね。

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★14位=シロバナタンポポ

 小石川では白い花のタンポポをよく見かけます。主流の黄色いタンポポの攻勢に、必死で抵抗している感じが好きです。

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★15位=タラヨウ

 タラヨウの注目は花ではなく、葉裏です。郵便局の木と呼ばれるタラヨウ。その大きな葉の裏側に尖った物で字を書くと、しばらくしてインクで書いたようにきれいな字が浮かび上がります。葉書の代わりにもなるので、郵便局の木なんですね。

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たくさん落書きがあります。

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ただし、合格祈願は葉が落ちるリスクがあるので、危険かも。

★16位=もみじ

 小石川には、モミジのトンネルがあります。秋は美しでしょうか、花の咲く春もまた、見頃ですね。

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★17位=椿

 冬の花のツバキですが、春に満開になるのもあるようです。

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 ツバキはきれいですが、お見舞いにはタブーとされています。花が丸ごとボトッと落ちるのが、息絶える様子を連想させるからとか。それに赤いのは特に、血を連想させるので、ダメらしいです。

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 こういう落ち方がダメなんですね。

★18位=ツツジ

 もう満開のツツジも多いですね。季節の変化は迅速です。

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葉が出るより先に花が咲くタイプのツツジは満開が早い。

★19位=シャガ

 アヤメ、ハナショウブの小型版みたいなシャガもこの季節の定番ですね。

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★20位=カリン

 可憐なカリンの花。ゲゲゲの鬼太郎の下駄の音みたいですね。からーん、からーん、からん、からん、ころん。

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★番外

ヤマナシ

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ミズバショウ

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なんと、小石川にはミズバショウもあるんです。

ニリンソウ

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 21位からは風景です。都心の比較的小さな植物園なのに、豊かな自然に囲まれたような感覚になれるのは不思議ですね。

★21位=花見

 春ですから、まずは花見の風景。400円払っての花見ですから、比較的すいていることを期待しているのでしょうが、結構盛況です。

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★22位=日本庭園から東大総合博物館分館を望む

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そういえば、ここは東大の付属植物園なんですね。

★23位=桜の花を背景にコゲラ

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小さなキツツキのコゲラ。春は桜を背景に。

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 写真は撮れなかったけど、ちゃんと木の中の虫を捕まえて食べてました。

★24位=高台から日本庭園を望む

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この高低差が小石川の魅力の一つ。でも斜面を迷路のように走る小道を上り下りすると疲れる。

★25位=温室

 温室はリニューアル工事中でした。なんだかとっても立派な温室ができそう。

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★26位=柴田記念館

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この正面にシダ園がある。

★27位=深い森

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園の奥の方には結構深い森もある。

★28位=大震災記念石

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関東大震災の際には3万人以上がこの植物園に避難したという。

29位=ニュートンのリンゴ

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ニュートン万有引力に気付いた生家のリンゴの木の末裔らしいです。

★30位=メンデルのブドウ

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遺伝学の基礎を築いたメンデルが実験に使ったブドウの木の末裔とのこと。

★番外

池の鯉

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日本庭園の池には錦鯉とか食用ガエルのオタマジャクシとか亀とかがいます。

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よく見えませんが、食用ガエルのオタマジャクシです。

 以上、お付き合いありがとうございました。これで400円の入園料を払う前の、心の準備と、散策プランはできたでしょうか。お役に立てれば幸いです。