月の女神アルテミスの名を持つ妖艶な蛾、オオミズアオが4月上旬に羽化しました。
ある日の夕刻、仕事を終えて帰宅すると、飼育容器の中でガサゴソと音がするので何事かと思ったら、オオミズアオが羽化していました。蝶は未明から早朝に羽化するのが多いですが、夜行性の蛾は夕方が羽化タイムなのかもしれませんね。
英語ではムーンモス(月の蛾)と呼ばれるオオミズアオの仲間。学名には月の女神アルテミスの名が入っています。月夜を彩るこの蛾の美しさに魅了されるのは、世界共通のようです。
と言っても、もちろん虫好き、蛾好きの話であって、虫嫌い、蛾嫌いの人々にとっては、妖怪変化に見えることでしょう。
羽化直後は、まだイモムシだったころの面影が残っています。羽は短くて、太く長い腹部が異様な存在感を示していますね。
実はこの異様に長い腹部が大切なのです。ここにたっぷりと蓄えられた体液を、翅脈に流し込むことで、翅を大きく広げていくからです。
腹部が縮んでくるのと反比例するように、翅が伸びていきます。オオミズアオは大きな蛾なので、その様子が手に取るように分かりますね。「まさに生命の神秘」などと思うのは、もちろん虫好き、蛾好きだけです。
だいぶ翅が伸びて、全体に丸い和菓子のような姿になりました。この段階が一番かわいいと感じました。
しかし、まだ、ちゃんと翅が伸び切るのか心配です。育ての親の親心ですね。体液が足りないと、翅が伸び切らず、いわゆる羽化不全となっててしまいます。
ここまで羽が伸びてくれば、もう安心。
閉じていた羽を開くようになったら、ほぼ羽化終了です。
月夜の晩に、月に向かって飛んでいくのでしょうか。かぐや姫の昔話「竹取物語」は、もしかすると、一所懸命オオミズアオの幼虫を育て、月夜の晩に蛾になって去っていく姿を、涙ながらに見送った人の話なのかもしれません。きっと平安時代にも虫好き、蛾マニアはいたのでしょう。