虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

今年も懲りずにオオムラサキ飼育。東京都心の公園に雄姿を復活させたい

 今年も懲りずに、またオオムラサキツツジの種類ではありません。蝶です)の幼虫を4匹飼育しています。

 東京ではオオムラサキ(蝶です。日本の国蝶です)を目にする機会がめったになくなったので、オオムラサキオオムラサキとこれだけ連呼しても、何のことやら分からない人が多くなっていると思われます。

 知らない人のために、以前に町田市で撮った成虫の写真を載せておきます。羽が紫色で大きいからオオムラサキ。分かりやすいですね。

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樹液を吸う東京産オオムラサキ


 日本最大級のタテハ蝶で、特にメスは、「デカい」ということばがふさわしいくらい大きいです。胴体の太さも半端ではなくて、力も強く、国蝶にふさわしい風格です。

 これが以前撮ったメス。

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埼玉産オオムラサキのメス

 「あれっ、紫色じゃないよ」。そうなんです。メスは茶色なんですね。ちょっと残念な国蝶ですね。

 以前撮った越冬中の幼虫です。もちろん、こんな分かりやすい状態で越冬してはいません。

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エノキの落ち葉の中で越冬するオオムラサキ幼虫

 積もった落ち葉の中に埋もれているので、落ち葉を際限なくひっくり返さないと見つかりません。

 このこげ茶色の体のまま、春になるとエノキの幹を上って行きます。幹の色と同じなので、擬態になります。

 今年見つけた春先の幼虫。幹の途中で休憩していました。

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春先にエノキの幹を上るオオムラサキ幼虫

 そして体が緑色に変わってくると、ようやく葉に移動して、食事を開始します。緑でギザギザの体は、エノキの葉と似ていて、これまた擬態になります。都合よくできてますね。

 そして現在。我が家の鉢植えの小さなエノキにいる幼虫です。かなり太ったのもいれば、まだまだ栄養不良なのもいます。

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わが家のオオムラサキ幼虫

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こんなやせ細ったのもいます。

 我が家の鉢植えのエノキはこんなに小さな木なので、幼虫が大きくなったら、近所の空き地からエノキの葉を調達してこないといけないでしょう。

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 東京だと、町田とか八王子近辺まで行かないと、オオムラサキはみつかりません。明治神宮とか、新宿御苑とか、都心の公園にもいると嬉しいのですが、一度いなくなると、容易には戻って来ませんね。

 こうして都会では、国蝶なのにオオムラサキを「見たことがない」とか、「知らない」とかいう人が増えていくわけです。昆虫記者としては非常に悲しい現実です。

 「八王子あたりの産地から人工的に移住させればいいのに」とか思う人もいるでしょう。しかし、蝶には地域別に遺伝子の特製とかあるらしく、生態系維持の観点からは、遠く離れたところから移住させるのは良くないとされています。

◆東京都心に国蝶オオムラサキを呼び戻す秘策

 従って、都心にオオムラサキを呼び戻すためには、八王子とか町田あたりから都心までエノキの並木を作って(クヌギとか、成虫の餌となる樹液の出る木も間に挟んで)、自主的に移住を促すしかないということになります。しかも、幼虫が越冬できるよう、エノキの落ち葉がたまる場所を作る必要があります。

 これは、昆虫記者が環境大臣にでもならない限り不可能でしょう。「日本国民が自然の中で国蝶に親しめる環境を整備すべき」が、今後国会議員に立候補する際の昆虫記者の公約です。(絶対当選しない)。

 去年飼っていたオオムラサキは幼虫段階で全滅しました。今年の4匹のうち何匹か羽化したとしても、それを都心に放すことは、良くない行為とのことなので、産地まで連れて行って放すか、死ぬまで飼うか、標本にするか、苦しい選択を迫られることになります。全部オスなら(圧倒的にオスの方が数が多いです)、繁殖しないので、放してもいいような気がしますが、どうなのでしょうか。環境省に聞いてみないといけないですね。