〇品行方正に見えて実は結構ワルなラミーカミキリ
ラミーカミキリは、今や東京中どこにでもいるカミキリになりました。葛西臨海公園にもたくさんいます。何十年も前のことですが、幽幻道士(キョンシーズ)の映画が話題になったころには、中国版ゾンビのキョンシーに似ているということで、人気が沸騰したラミーカミキリですが、その後人気も下火になり、誰にも振り向かれない存在になりました。
人気商売なんてのは、しょせんこんなものです。ブームが去った後は、過去の栄光にすがりつくしかありません。
しかし、改めてラミーカミキリを見てみると、カミキリ界全般を見回してみても、なかなかの美貌なのです。ディナージャケットをきっちりと着こなした、高級レストランのウェイターのようないで立ちです。
清潔感ただよう品行方正なウェイターさんですね。ただ、ちょっと顔が青白いところは、キョンシーの面影を残しています。
黄疸症状のように全体に黄色っぽいのもいます。青白いのも、黄色っぽいのも、あまり健康状態が良いようには見えませんね。
ラミーカミキリは繊維を取るためのラミーという植物と一緒に日本に入ってきたとみられる外来種ですが、今やすっかり日本に定着しました。ラミーに近いカラムシという雑草を食害していることが多く、その場合は雑草駆除に役立つ働き者のウェイターなのですが、最近目立つのは、花が美しいことから街路樹や生垣に利用されるムクゲの食害。
ムクゲの植え込みへのラミーカミキリの進出を放っておくと、大量の幼虫が幹を食い荒らして、あっという間にムクゲは枯れてしまいます。
葛西臨海公園には池の周囲にムクゲの群生地があるのですが、既にラミーの被害で枯れている木も多く見られます。
こうなると、もはや品行方正で働き者のウェイターではなく、レストランの食品をちょろまかして店をつぶしてしまう悪徳ウェイターですね。
しかし池の周囲でのラミーカミキリの悪行に気付く人は、昆虫記者以外だれもいないようです。
立派なカメラを持ってここを訪れる人々の99%はバードウォッチャーです。みなさん、シギ、チドリ、カモなどの水鳥を狙っているようですね。
こうした状況下では、しばらくはラミーたちの悪事がばれることはなく、やりたい放題の状況が続きそうです。もちろん、昆虫記者も見て見ぬふりです。悪事に手を貸すつもりはありませんが、かわいいラミーが駆除されるのは見るに忍びないので、官憲に通報などしません。みなさんも公園当局に通報などしないようにしましょう。自然のことは、自然のバランスに任せておくのが一番です。