〇日本のセセリ界随一の美貌を誇るアオバセセリ
セセリ蝶という蝶の仲間を知っているでしょうか。シジミチョウ、モンシロチョウなどと並んで、どこにでもいる蝶の代表なのですが、非常に人気薄な蝶です。小さい上にたいていが目立たない茶色で、しかも飛び方が、全然優雅ではなくて、まるで蜂やハエのように素早い。虫に詳しくない人々は、蝶ではなく蛾だと思っている人も多いぐらい、冷遇されている蝶です。
チョウの写真を投稿する人でも、イチモンジセセリとか、チャバネセセリとかをアップする人はほとんど見かけません。そういう昆虫記者も、イチモンジセセリの写真をアップした記憶はありません。なんという差別、なんという非人道的行為でしょうか。しかし、セセリ画像なんかアップしたら、もともと人気のない昆虫ブログがさらに砂漠のように枯れ果ててしまうことでしょう。
しかし、日本で唯一と言っていい、きれいなセセリ蝶がいるのです。それはアオバセセリ。飛び方があまりに素早い上、食樹のアワブキという木がどこにでもある木ではないので、アオバセセリが一般の人々の目に触れる機会は少ないのですが、虫好き、特に蝶好きの間では、この蝶だけを目的に山に入る人も多いくらい人気があるのです。
それでは、どんだけ美しいかというと、こんなです。
どうです。きれいですね。セセリ蝶の仲間が浴びせられてきた、蛾のように汚い蝶の汚名をすべてそそぐほどの気品ですね。アオバセセリがいなかったら、日本のセセリチョウ界はどれほど寂しい状況だったことでしょう。まあ、ほかのセセリ蝶はそんなこと全然気にしていないとは思いますが、虫好きとしては、セセリもバカにしたものじゃないということを、声を大にして言いたいわけです。
そして、蝶好きは成虫にばかり目を奪われがちなのですが、アオバセセリの場合は、幼虫もまた、日本のセセリ界にあって、ほとんど唯一、見栄えのする美しい幼虫なのです。
どんだけ美しいかというと、こんなです。
どうです。美しいですね。繊細な縞模様とナナホシテントウのような頭。単に美しいというだけでなく、コミカルで愛嬌がありますね。
でもこれまた、一般の人々の目に触れる機会はほとんどないのです。アワブキの木が少ない上に、昼間は葉っぱを丸めた隠れ家の中に潜んでいることが多いからです。セセリ系の幼虫はおしなべてみなシャイなのです。普通のセセリ系の幼虫は、頭が黒や茶色で、体が白っぽくぶよぶよしているで、他人に姿を見られたくないと思うのも納得なのですが、アオバセセリの可愛い幼虫がいつも姿を隠しているのは残念です。
こんな巣の中にいます。
こんな小さな巣の中には
こんな小さな幼虫。
餌の葉を食べる時だけ、巣から出てきます。
蛹化したての蛹もまた、美しいです。
どんだけきれいかというと、こんなです。
しばらくすると、蛹は白くなります。
そして羽化。
完全なえこひいきです。他のセセリたちにも愛を注いでほしいものですね。