虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

グレタ・トゥンベリさんの国連スピーチを全訳してみました

 地球温暖化問題への対策を求める世界的ムーブメントを起こしたスウェーデンの16歳の女の子、グレタ・トゥンベリさんの国連気候行動サミットでのスピーチは、すごい迫力でしたね。環境問題は、昆虫を含めた生態系の問題でもあるので、心を動かされました。

 そこで、トゥンベリさんのスピーチを全訳してみました。稚拙な訳(一応英語翻訳歴は結構長いんです)ではありますが、トゥンベリさんの気持ちは十分伝わると思います。

 

◆2019年9月23日、ニューヨークでの国連気候行動サミットにて。講演者 グレタ・トゥンベリ

 

 私が伝えたいメッセージは「私たちはあなたたちのことを注視している」ということです。

 すべてが間違っています。私がここにいるのは、おかしいのです。わたしは、海の向こうで学校に戻っているべきなのです。しかし、あなたたちは、希望を求めて、私たち若者のところへやってきます。あなたたちは、そんなことをしていていいのですか!。(注=力を込めて強調したあのhow dare you!という言葉です)

 あなたたちは、私の夢を、私の子供としての生活を、あなたたちの空虚な言葉によって奪ったのです。それでも私は、幸運な人の1人です。苦しんでいる人々がいます。死んでいく人々がいます。生態系全体が崩壊しつつあります。私たちは、大量絶滅の始まりを目にしているのに、あなたたちの話題はお金のことと、永遠に続く経済成長のおとぎ話ばかりです。あなたたちは、そんなことをしていて平気なのですか。(注=ここもhow dare you!です)

 30年以上前から、科学が示していることは、極めて明確でした。なぜあなたたちは、見て見ぬふりをし続けて、ここに集まって、十分な仕事しているなどと言えるのですか。必要な政策も解決策も、まだどこにも見つからないというのに。

 あなたたちは、私たちの声に耳を傾けており、事態の緊急性を理解していると説明します。しかし、私はそれを信じません。信じられないことが、どれほどの悲しみと怒りを伴うものであっても。なぜなら、もしあなたたちが本当に状況を理解していながら、行動を起こしていないのならば、あなたたちは不道徳な人ということになるからです。そんなことを私は信じたくありません。

 私たちの温室効果ガス排出量を10年間で半分にするというポピュラーな計画では、気温上昇をセ氏1.5度以下に抑制できる可能性は50%にすぎず、人間の管理能力を超える不可逆的な連鎖反応を引き起こす恐れがあります。

 50%のチャンスはあなたたちにとって容認できるものかもしれません。しかし、こうした数値は、分岐点となる水準や、大半のフィードバックループ(フィードバックを繰り返すことで増幅されていく過程)、有害な大気汚染による隠れた温暖化の追加的効果などを考慮していません。また、公正さや、温暖化の加害・被害の公平性の観点も含まれていません。さらにこうした数値予測は、まだほとんど形になっていない技術を用いて、私たちの世代になってから、何千億トンもの二酸化炭素を空気中から吸い取ることを前提にしているのです。

 だから私たちは、50%のリスクを容認することはできません。温暖化の影響が広がった世界で生きていかななければならないのは私たちなのです。

 気候変動に関する政府間パネルIPCC)が示している最善のシナリオでは、気温上昇幅を1.5度以下に抑制できる確率は67%となっています。このシナリオでは、2018年1月1日時点で、将来排出可能な二酸化炭素の量は420ギガトンとされていました。現在ではその量は既に350ギガトン以下になっています。

 こうした問題が、「これまでと変わらない対応」や何らかの技術的対策だけで解決できるふりをしているのは、何たることでしょうか。現在の排出水準が続けば、残された二酸化炭素排出許容量は、8年半以内に全くなくなってしまいます。

 こうした数値に対応した何らかの解決策や計画が、今日この場で示されることはないでしょう。それは、こうした数値があまりにも不都合なものだからです。そしてあなたたちは、事実を事実として語れるほど、成熟していないのです。

 あなたたちは、私たちを失望させています。しかし、若者たちはあなたたちの裏切りを理解し始めています。未来を担う世代の視線は、あなたたちに注がれています。そして、もしあなたたちが私たちを裏切ることを選択するなら、私はこう言います。「私たちは、あなたたちを決して許さない」。

 わたしたちは、あなたたちの行為を見逃しません。今こそ一線を画すべき時なのです。世界は目覚めつつあります。あなたたちが、望むと望まざるにかかわらず、変化が起きようとしているのです。

 ありがとうございました。

 

以下は英語版 日本語への誤訳があったらお知らせください

"My message is that we'll be watching you.

"This is all wrong. I shouldn't be up here. I should be back in school on the other side of the ocean. Yet you all come to us young people for hope. How dare you!

"You have stolen my dreams and my childhood with your empty words. And yet I'm one of the lucky ones. People are suffering. People are dying. Entire ecosystems are collapsing. We are in the beginning of a mass extinction, and all you can talk about is money and fairy tales of eternal economic growth. How dare you!

"For more than 30 years, the science has been crystal clear. How dare you continue to look away and come here saying that you're doing enough, when the politics and solutions needed are still nowhere in sight.

"You say you hear us and that you understand the urgency. But no matter how sad and angry I am, I do not want to believe that. Because if you really understood the situation and still kept on failing to act, then you would be evil. And that I refuse to believe.

"The popular idea of cutting our emissions in half in 10 years only gives us a 50% chance of staying below 1.5 degrees [Celsius], and the risk of setting off irreversible chain reactions beyond human control.

"Fifty percent may be acceptable to you. But those numbers do not include tipping points, most feedback loops, additional warming hidden by toxic air pollution or the aspects of equity and climate justice. They also rely on my generation sucking hundreds of billions of tons of your CO2 out of the air with technologies that barely exist.

"So a 50% risk is simply not acceptable to us — we who have to live with the consequences.

"To have a 67% chance of staying below a 1.5 degrees global temperature rise – the best odds given by the [Intergovernmental Panel on Climate Change] – the world had 420 gigatons of CO2 left to emit back on Jan. 1st, 2018. Today that figure is already down to less than 350 gigatons.

"How dare you pretend that this can be solved with just 'business as usual' and some technical solutions? With today's emissions levels, that remaining CO2 budget will be entirely gone within less than 8 1/2 years.

"There will not be any solutions or plans presented in line with these figures here today, because these numbers are too uncomfortable. And you are still not mature enough to tell it like it is.

"You are failing us. But the young people are starting to understand your betrayal. The eyes of all future generations are upon you. And if you choose to fail us, I say: We will never forgive you.

"We will not let you get away with this. Right here, right now is where we draw the line. The world is waking up. And change is coming, whether you like it or not.

"Thank you."

 

翻訳は以上です。誤訳があったらすいません。でもネット上の他の翻訳にも誤訳がありました。他の翻訳と比べても、かなり丁寧な訳になっていると思います。

 以下は個人的な感想です。決して所属団体の意見を反映したものではありません。

 強い信念を持った少女が発する力はすごいですね。先進諸国の政治家や首脳は、支持基盤の経済界の反発を恐れて、こんな大胆な発言はできないでしょう。もちろん昆虫記者もできません。小泉進次郎環境相は、「セクシー」とかではなくて、いつかこういう発言をしてもらいたいですね。期待しています。

 金曜に学校を休んでスウェーデン議会の前に座り込んで温暖化への対応の遅れに抗議する「学校ストライキ」という活動をたった一人で始めたトゥンベリさん。世界各地で、何十万人もの学生が参加する大きなムーブメントを起こしました。

 でも日本では、福島の原発事故があったにもかかわらず、環境保護運動が盛り上がらないのはなぜなのか、不思議に思っています。環境政党が国会議席を持っていないのも不思議ですね。豊かな自然が身近にあり過ぎるせいなのかもしれませんが、そんな日本だからこそ、世界の先頭に立って環境保護を訴えるべきだと思います。

 そんなことを言いながらも、昆虫記者は飛行機にも乗るし、トイレの電気はしょっちゅう消し忘れるし、温暖化防止に全く貢献していない状況です。トゥンベリさんはNYに行く際にも、飛行機ではなくヨットを使ったとか。昆虫記者も彼女の爪の垢を煎じて飲むべきですね。

 

 ナガサキアゲハとかクマゼミとか、東京でも普通に見られるようになった時は、嬉しかったものですが、それも温暖化の影響と思うと、喜んでばかりはいられませんね。

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温暖化の影響か、クマゼミが東京でも普通に見られるようになった

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ナガサキアゲハが東京で普通種になったのはいつごろだったか。でもこれは尾状突起があるので、南国産です。