虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

シンガポールの沿線昆虫ガイド⑪シンガポール動物園のオープン・コンセプトって何?

 シンガポール旅3日目は、オープン・コンセプトの先駆けとして世界的に有名なあのシンガポールZOO、シンガポール動物園です。昆虫記者のために無料開放されるからオープンなのではありません(結構料金高いです)。檻をなくして、動物が暮らしやすい自然に近い環境を作り、見る人も動物たちと同じ環境にいるかのように感じさせるのが、オープン・コンセプトなのです。

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ワオキツネザルが目の前に現れるオープン・コンセプトのすごさ

 しかしなぜ、昆虫記者が動物園に行くのか。そんな冷酷な質問を浴びせてはいけません。昆虫記者にも休息は必要なのです。虫撮りを頑張りすぎて過労で倒れたとしても、絶対に労災扱いにはなりません。誰も同情してくれません。家族からも、家事をおろそかにした天罰だと言われるだけです。そんなわけで、動物園がいちばん空いていてのんびりできる月曜に、虫撮りの激務でボロボロになった心身をいやすため、シンガポール動物園で人並みの休暇気分を味わうことにしたのです。

 シンガポール動物園で一番のお勧め(個人の感想です)は、フラジャイル・フォレストです。ここはオープン・コンセプトの極みなのです。

 ここは湖(アッパー・セレター・リザバーという貯水池)に囲まれた出島のようなジャングル地帯。湖の向こう側にはセントラルキャッチメントという自然保護区が広がるので、動物園自体ジャングルの中にある感じがして、探検家の気分になれるのですが、フラジャイル・フォレストではさらに、動物と人間が全く同じ空間を共有することができます。

 広さ1500平方メートル、高さ15メートルのドーム内には、熱帯雨林の環境が再現されており、オオコオモリ、ナマケモノワオキツネザル、マメジカ、色鮮やかな鳥類が生活しています。それを外から見るのではなく、人間が熱帯雨林に分け入っていくのです。もし猛獣がいたら、人間は「飛んで火にいる夏の虫」。あっという間に食い殺されてしまうでしょう。

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フラジャイル・フォレストで上空を見上げると、オオコウモリがぶら下がっている

 なので、もちろん猛獣はいません(昆虫記者の見た限りでは)。いくらオープン・コンセプトの動物園でも、そこまではやりません(たぶん)。

 ここで一番大きな顔をしているのは、オオコオモリです。入園者の頭の上をビュンビュン飛び回っています。でも吸血コウモリではない(たぶん)ので、ご安心下さい。オオコウモリは果実や花を食べる菜食主義者なのです。でもカラスぐらいの大きさなので、見た目は怖いです。とはいえ、普通の夜行性コウモリの悪魔の使いのような顔と比べると、不気味さはマイルドです。

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観光客の頭上をかすめ飛ぶオオコウモリ。カラスぐらい大きい。

 オオコオモリは、視覚に頼って飛ぶので、目が大きく、耳はあまり大きくありません。それで、キツネのような顔になり、フライング・フォックスとも呼ばれています。空飛ぶキツネと思えば、かわいいですね。

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 マダガスカルのひょうきん者、ワオキツネザルも、ピョンピョン跳ね回っています。ただし、そんな姿が見られるのは、人が少ない平日の早い時間帯だけ。フラジャイル・フォレストを満喫するには、月曜の朝一番を狙いましょう。

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ワーオ、ワオキツネザルと目が合った

 よく探すと、どこかにナマケモノもいます。ナメクジが這うようなペースでしか動かないので、気付きにくいですが、どこかにいます。

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ほとんど動かないナマケモノ

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ほとんど眠っているようなナマケモノ

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子猫ぐらいのマメジカもかわいい

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オオハシは餌をもらいにくる

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立派なタテガミのカンムリバト

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人目を気にせず口づけを交わすインコ

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ピーコックフェザントが目の前を歩く


 2番目のお勧めは、爬虫類館です。何がいいかと言うと、冷房が効いていることです。シンガポールは熱帯ですから、時々こういう冷房の効いた施設に入りながら、過ごすのがいいでしょう。カメレオンとか、エリマキトカゲとか、見ものも多いです。毒々しい青色のヤドクガエルも見逃さないように。

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毒々しいヤドクガエル

 それ以外の動物は、スター級のものだけに限らないと、時間が足りなくなります。ここのスターと言えば、ホワイトタイガーとオランウータンですね。

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密林の王者ホワイトタイガー

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食堂前にスター級のスペースを与えられているオランウータン

 周囲がジャングルなので、野鳥や野生動物も、勝手に入り込んでいます。タマリンなどの園内に放し飼いの動物と、不法侵入者との区別があいまいですね。

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放し飼いのコットントップ・タマリンと不法侵入者のカニクイザル

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コモドドラゴン(上)と不法侵入者のミズオオトカゲ

 シンガポール動物園の唯一の欠点は、金欠の昆虫記者にとっては入園料が高いこと(これだけの施設ですから、富裕な人々は文句を言ってはいけません。もちろん言わないでしょうが)。何と35S(シンガポール)ドルもします。1Sドル=80円として、2800円にもなります。シンガポール滞在中に入る唯一の有料観光施設ですから、清水の舞台から飛び降りるつもりで払いました。なので、動物園までの交通費は極力節約しなければなりません。タクシー利用などもってのほか(今回の旅行では一度もタクシーを利用していません)です。

 そこで、貧乏人には嬉しい秘密情報をお伝えします。MRTノースサウスラインのカティブ駅からマンダイ・シャトルという動物園への直通バスが出ていて、料金は片道たったの1Sドルとバカ安なのです。もちろん、全然秘密のルードではないのですが、面倒なので日本人はあまり利用していないアクセスです。

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料金たったの1Sドルの動物園行きバス

 バスは20分に一本出ていて、所要時間は約15分。動物の絵柄があるバスが駅前(改札を出て左端)に到着するのですぐ分かります。分からなければ、駅員に「ズー」とか「バス」とか言えば教えてくれます。ただし現金は受け付けないのですべての公共交通で使える電子マネーEZ-linkカードが必要です。