虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

台湾総統選で蔡が圧勝。中国人観光客急減で苦境の台湾は日本人を待っています。

 11日に行われた台湾総統選挙で、現職で民主進歩党民進党)の蔡英文氏が、圧倒的な勝利を収めました。台湾の政治に介入する権利も力もない昆虫記者ですが、社内の知人の台湾人女性の陳さんが蔡氏を応援していたので、この結果は非常に嬉しいです。写真部記者、つまりカメラウーマンの陳さんは、わざわざ蔡氏に1票を投じるために、里帰りしていたのですから、蔡氏の当選で、陳さんにも「おめでとう」と言えるのです。

 いやいや、良かった。これで心置きなく、陳さんの台湾土産を受け取れます。蔡氏の当選より、本当はお土産の方が嬉しかったりして。「陳さん、お土産待ってまーす」って、不謹慎ですね。陳さんは、遊びに行ったわけではないのです。真剣に台湾の将来を考えて、1票を投じに行ったのです。 

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2011年に行った台湾・高雄の蝶の谷として有名な茂林地区の紫蝶幽谷。ルリマダラの仲間の集団越冬地として有名です。ルリマダラの飛翔姿をご覧ください。

 昆虫記者はノンポリではありますが、蝶の国であり、昆虫大国である台湾が、いつまでも自由と人権を尊重する民主主義の国であり続け、虫撮り旅に支障が出ないことを望んでいます。昆虫趣味のような、国家目標に全く貢献しない活動は、共産主義下では迫害されかねないので、中国と距離を置く民進党政権の方が、親中派の国民党政権よりも、安心できるというわけです。

 中国では日本人が何人も、はっきりした理由も明らかにされないまま、拘束されていますよね。昆虫記者なんていう怪しい奴は、常に拘束の恐れがあります。カメラを3つも4つも持って、一般人が入り込まないような、森や原野に踏み込んでいくのは、相当に怪しい奴です。そんな場所に軍事機密が隠されていたら、スパイ容疑がかけられるでしょう。台湾がそんな場所になってほしくないですよね。

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紫蝶幽谷はこんなところ

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紫蝶幽谷のルリマダラの群れ

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画面中に何匹のルリマダラがいるでしょうか。

 中国政府は、中国本土、香港、台湾が「一つの中国」だと常に主張、台湾にも香港と同じ「一国二制度」を受け入れるよう求めています。それはつまり、いずれは台湾も共産主義の中国の一部になるべきだという主張ですね。その上、台湾が独立を企てるならば、統一のため武力行使も辞さないという立場を堅持しています。

 蔡氏は、現在の香港市民の民主主義支持の抗議行動について、「一国二制度」が失敗だったことを示していると分析。台湾は一国二制度の受け入れを拒否すると宣言しています。長年民主主義の下で自由を謳歌してきた2400万人近い台湾の人々は、常に共産主義の中国に飲み込まれる恐怖に直面しているのです。対中関係は台湾の行く末を左右する問題で、その対中関係が最大の争点になった台湾総統選に、市民が強い関心を持つのは当然なのです。

 

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カメラの前を飛び交うマダラチョウの仲間たち

 国民党の総統候補の韓国瑜氏は、中国との経済・貿易関係の拡大によって、台湾経済を活性化させると訴えていましたが、中国経済への依存度が大きくなればなるほど、政治的にも中国の影響力が大きくなるのは必然。その端的な例が、2019年8月からの台湾への個人旅行渡航許可の停止です。中国はそれ以前から、蔡政権下の台湾に経済的圧力をかけており、それが蔡氏と民進党の支持率低迷を招いていたのです。それなのに香港情勢を背景に蔡氏が支持を回復してきたことが、渡航停止という強硬策につながったのかもしれません。

 台湾の民進党政権が独立志向を持っていることを、中国政府は渡航停止の理由に挙げています。これを受けて中国から台湾への旅行者は、同年9月には前年同月比6割減になったとされています。

 2014,15年には台湾を訪れた中国人観光客は、300万人以上で、外国人観光客全体の40%以上を占めていました。つまり中国政府は、台湾の外国人観光客を一気にほぼ半減させる力を持っていたということです。中国に経済的に過度に依存するということは、こうしたリスクを伴うということです。

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ツマムラサキマダラの飛翔

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リュウキュウアサギマダラの飛翔

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コモンマダラの仲間

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ヒメアサギマダラ

 観光客の急減は、蔡政権にとっては大打撃です。総統選挙や立法院(議会)選挙で、独立志向の蔡氏と与党民進党を敗北させる要因になってもおかしくない状況でした。

 しかし、今回の選挙では、「今日の香港は明日の台湾」かもしれないという危機感が追い風となって蔡氏が勝利しました。

 今後も蔡政権への中国からの圧力は続くでしょう。中国人観光客が急減する中で台湾にとって希望の星は、日本人観光客です。2019年には前年比5%以上増加して、初めて200万人の大台に乗ったのです。

 みなさん、是非台湾に行きましょう。東日本大震災の際の、台湾からの官民合わせて200億円超という怒涛のような義援金を忘れてはなりません。台湾の経済規模から見ると、この額は、群を抜いて世界トップの額です。この台湾からの親愛の情に報いなければなりません。

 昆虫記者は去年を含め、既に3回台湾虫旅を敢行していますが、今年もまた行こうと思っています。台湾からの訪日観光客は年間500万人前後。日本から台湾への観光客も、是非500万人を達成したいところですね。