葛西臨海公園で鴫(シギ)を撮る人は多いですね。シギゾウムシを撮る人は少ないです。両方撮る人はめったにいない。
鴫とシギゾウムシが両方見られる場所は結構少ないし、両方撮りたいなんて思うおかしな人はもっと少ない(昆虫記者ぐらい)です。
では、ここでクイズです。次の連結写真のシギの名前は何でしょう。
昆虫記者は鳥には詳しくないので、間違っているかもしれませんが、葛西臨海公園にあった写真説明を参考にすると、一番上はたぶんキアシシギ、上から2番目はアオアシシギのようです。
では一番下は?。これはかなりの難問です。臨海公園の説明にも載っていません。それも当然。もう分かっていると思いますが、これがシギゾウムシの仲間です。
しかし、シギゾウムシの仲間は似たのが多くて、識別が難しいのです。ヒントになるのは、何の木に居たか。今回のシギゾウムシはグミの木の隣にいたので、ナツグミシギゾウムシだと思います。背中の3つの白い紋(うち一つは小楯板)が特徴です。
もちろんシギゾウムシのシギは鳥の鴫(シギ)から取られた名前です。クチバシが長ければ、何でもシギの名前を付けてやれという、安易な発想ですね。魚にもシギウナギという、長いクチバシを持ったのがいるらしいです。
では、食べ物では鴫焼きはなぜシギなのか。鴫焼きはナス田楽のことで、全然細長くないです。
調べてみると、昔は文字通り、鳥の鴫を焼いて食べたり、鴫とナスを一緒に焼いて食べたりしていたらしいのです。それがなぜか江戸時代ぐらいから、鴫の肉の代用品としてナスが使われるようになったようです。鴫の肉とナスの見た目とか食感が似ていたのでしょうか。
肉の代用品の豆腐ステーキとか、魚の代用品の刺身こんにゃくとかと同じようなものかもしれなません。ちなみに、鴫はヨーロッパでは結構高級なジビエのようです。
写真を撮ったのは5月。たいていのシギゾウムシは、ドングリとか、クリとかツバキとかの実ができ始めるころに出現するので、春にはいません。それでも、何とかしてシギつながりにしようという涙ぐましい努力を続けていると、やはり天は努力する者を見捨てないのです。
グミの茂みでグミチョッキリを撮っていた時に現れた見慣れぬシギゾウムシが、今回のナツグミシギゾウムシです。
グミチョッキリも、シギゾウムシほどではないですが、口吻はそこそこ長いですね。まあ鳥に例えるならサギぐらいのレベルでしょうか。やはりシギに例えるならシギゾウムシがいないと困る(誰も困らない)。
ものはついでなので、鳥と紛らわしい名前の虫を紹介しておきます。うっかり間違えると大変ですからね(誰もまちがえないし、間違えても何の問題もない)。
ツバメシジミは、語順からツバメのような尾状突起を持ったシジミチョウだろうと推察できますが、ムラサキツバメとなると、紫色をした鳥のツバメだと思われがちですね。
ミミズク、コミミズクなんてのは、鳥と虫が全くの同名なので、非常に紛らわしい。鳥の方は非常に人気があり、虫の方は全く不人気の雑虫なので、虫系の人が「オッ、ミミズク発見」などと叫ぶと、近くにいた鳥系の人々が、「エッ、どこだどこだ」とざわめく事態になります。
虫系の人は、虫のミミズクを見つけても声に出さない方がいいです。鳥系の人に説明するのも面倒だし、説明すると「なーんだ虫ケラか」と落胆されていまうので。