先日の日比谷公園でのヒメシロコブゾウムシ探しの後は、皇居の内堀へと移動。このあたりは桜の季節なら可憐なツマキチョウの舞い姿が見られます。しかし訪れたのは5月だったので、もうツマキチョウはいません。それでも諦めないのが昆虫記者です。
菜の花も咲き終わって、細長い実を付けている季節。ツマキチョウの幼虫がその実に擬態しながら、食事の最中かもしれないのです。
菜の花の葉を主に食するモンシロチョウの幼虫とは違って、ツマキチョウの幼虫は主に実を食べます。ツマキチョウは春だけの蝶、スプリング・エフェメラル(春のはかない命)なので、春だけの食材である菜の花の実だけで命をつなぐことができるんですね。
それで、幼虫は見つかったのか。執念で1匹だけ見つけました。皇居の内堀の土手は中には入れないため、道にはみ出している菜の花だけが頼りなので、幼虫を見つけるのは簡単ではないのです(苦しい言い訳です)。
まだ小さい幼虫だったのですが、菜種油の元である菜の花の実は栄養豊富なので、1週間後には幼虫は立派な終齢になり、木のトゲのような蛹へと変身しました。
あのフニャフニャしたイモムシが、バラのトゲのような鋭角な蛹に変身するのは何とも不思議ですね。
そしてそのトゲ型の蛹は、最初は緑色なのですが、何日かすると茶色に変色します。木々のトゲが若芽の時の緑色から、成長につれて茶色に変わっていくのに合わせているような、徹底した擬態ぶりです。自然界でこの茶色のトゲのような蛹を見つけるのは、至難の業でしょう。昆虫記者もこれまで、たまたまガードレールに張り付いていたのを見つけたことがあるだけで、木の枝など自然物に付いた蛹は見つけたことがありません。
そして困ったことに、この蛹は当分羽化しません。なにせスプリング・エフェメラルですから、来年の春まで待たないと蝶の姿は見られないのです。
なので、以前に撮った写真で、春の艶姿をご覧ください。