虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

新宿御苑の巨大リュウゼツラン開花。数十年に一度の花を咲かせて枯死する壮絶な生涯。

 カブト、クワガタ、タマムシなどで有名な(?)新宿御苑ですが、ここは植物観察にも貴重(虫より植物がメインという意見もあります)な場所です。

 

 8月8日に訪れた際には、アオノリュウゼツランが開花していました。テキーラの原料としても有名なアロエの巨大版のような植物ですが、そのサイズは超ビッグ。花を咲かせるための塔のような花茎は10メートル近い高さにもなります。しかも、開花するのは数十年に一度で、花を咲かせた後は、龍の舌のように強靭に見えた株全体が枯れてしまうというのです。これは見逃せない生命の大イベントですね。生きている間に御苑での次の開花を見られるかどうか分からないのです。

 

 7月下旬に訪れた際には、下の方の花がようやくほころびかけた段階でした。8月8日には、下の方の花は枯れて、中間部分が花盛り、最上部はまだつぼみという感じでした。中間部分が開花している今が満開ということかもしれません。

 

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7月下旬の新宿御苑リュウゼツラン。まだ下の葉も元気いっぱい。

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左端の写真を撮っている人と比べると、リュウゼツランの大きさが分かる

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7月下旬は一番下の花がほころびかけた段階だった

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8月8日の新宿御苑リュウゼツラン。中間部分が満開に。葉は既に枯れかけている。

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満開のリュウゼツランの花

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最上部はまだ開花待ち


 「昆虫記者がなぜ植物?」。バカを言ってはなりません。植物の知識なくして、昆虫なしと言われるほど(誰もそんなこと言ってない)、虫探しに植物の知識は欠かせないのです。

 

 ついでに、新宿御苑温室のウツボカズラ。これは食虫植物ですから、虫との関係大ありですね。

 

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 そして、本格的に虫と植物の関係に踏み込んでいきましょう。まずは小手調べに、あまりにも小さくて、ほとんど誰も気づかないけれど、実はなかなかに個性的な「タバゲササラゾウムシ」です。名前からして個性的ですね。毛の束がササラのようにびっしり生えているゾウムシということのようです。

 でも、まずはササラからして分からないですね。ササラ(簓)とは、竹や細い木などを束ねた道具で、洗浄器具、楽器、大衆舞踊の際の装身具などにもなるらしいです。勉強になりますね。

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タバゲササラゾウムシ。これだけ毛深いゾウムシも珍しい。

 クエスチョンはこのタバゲササラ(束毛簓)ゾウムシがいる植物です。だいたいササラも分からないし、タバゲササラゾウムシなんて、聞いたことも、見たことも、興味も何もないという人が99.9%なのに、餌の植物が何かなんて、質問すること自体が無意味ですね。なので、あっさり紹介しましょう。ここ新宿御苑では、クワ科のカジノキです。郊外の森では、圧倒的にヒメコウゾが好物のようです。

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カジノキやヒメコウゾにこんな食痕があれば、葉裏にタバゲササラゾウムシがいる

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葉を裏返すとすぐにポトリと落ちるタバゲササラゾウムシ。たまたま下の葉の上に落ちた交尾中のカップルです。

 また分からないですよね。カジノキとかヒメコウゾとか。実は和紙の原料として有名なコウゾは、このカジノキとヒメコウゾを掛け合わせたものらしいのです。勉強になりますね。そして、このヒメコウゾは野山ではクワと同じくらいたくさん生えていて、その実はクワの実よりもおいしい(個人の趣味によります)ので、是非来年の初夏には食してみて下さい。ちょっとベタベタして、糸を引くので、クワの実が腐っているのかと勘違いする人もいるかもしれませんが、勇気を出して食べてみましょう。間違って、本当に腐ったクワの実を食べてしまった人については、昆虫記者は責任を負いません。

 

 最後は帰りに見かけた満開の花のような新宿タイガーマスクさんです。新宿の平和のために今も頑張っているんですね。

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新宿タイガーマスクさん?