虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

皇居にヒナカマキリの季節到来

 9月をすっ飛ばして、いきなり10月半ばの皇居周辺です。そしていきなり、日本最小のカマキリの「ヒナカマキリ」が登場です。いるんです、皇居にはヒナカマキリが。それもかなりたくさん。

 毎年のように、冬にヒナカマキリの卵(卵鞘)を確認していたので、かなりの数が生息していることは分かっていたので、今回は成虫の最盛期と思われる10月中旬に捜索に行きました。

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オミナエシとヒナカマキリ。右はヒナカマキリの卵(卵鞘)

 最初の写真は「東御苑のオミナエシの上で獲物を待ち構えるヒナカマキリの図」ですが、そう都合良く、秋の風景とヒナカマキリが一緒に撮れるわけないです。

 本当は最初の1匹を見つけたのは東御苑のトイレの中です。しかし、トイレではあまりにも絵にならないし、臭い。それに、トイレの中でカメラを構えていたり、フラッシュ光らせていたりしたら、絶対に不審者です。皇宮警察に逮捕されて、「変態記者、皇居の男子トイレでわいせつ行為か=虫を撮ってましたと言い逃れ」なんて見出しで、3面記事になりかねません。

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右の方の小さな黒い点がトイレにいたヒナカマキリ

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小便器前のヒナカマキリ。絵にならないし、臭い。

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下が♀、上が後で見つけた♂。羽が退化しているので幼虫のように見えますが、たぶんこれで成虫です。

 

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極小のヒナカマキリもアップにすると勇ましく見える。

 そこですぐに外へ連れ出して、オミナエシの花の上に乗せて、撮影会を開催したのです。オミナエシの花を取っている人は、変態とみなされることはありません。

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 その後は、ちゃんと自然の中で、♂と♀1匹ずつを見つけました。卵鞘も2つ発見。来年も豊作まちがいなしですね。

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皇居の自然の中で見つけたヒナカマキリ♀

 しかし、彼らには恐ろしい天敵がたくさんいます。まずはヤモリです。たぶんトイレは、小さな蛾やヨコバイなど餌が多いという理由からヒナカマキリの穴場になっています。いつもヒナカマキリがたくさんいる三浦半島の某所でも、必ずトイレで何匹かヒナカマキリが待ち構えています。しかし、トイレの暗がりには、たいていヤモリも潜んでいるのです。やつらに狙われたら、ヒナカマキリの小さなカマなど、何の役にも立たないでしょう。

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ヒナカマキリの天敵、ヤモリ

 そして次なる天敵は、下の三色国旗を掲げている虫です。余談ですが、黒白赤の三色国旗は、シリア、イラク、エジプトなど中東のアラブ諸国に多いようです。中でも何の文字、絵柄も入っていない黒白赤の三色旗はイエメンの旗。

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この3色旗の持ち主は誰?

 そんな三色旗の腕を振り上げているのは、コカマキリです。コカマキリはイエメン応援団のような虫というわけです。

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コカマキリの特徴はカマの三色旗

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ヒナカマキリと比べると巨大に見えるコカマキリ

 皇居周辺にはコカマキリもたくさんいます。オオカマキリハラビロカマキリと違って、コカマキリは薄暗い環境が好みで、産卵場所も目立たない暗がりが多いですね。そんな場所は、ヒナカマキリの生息場所ともろにバッティングするのです。

 そしてコカマキリの体長は、オオカマキリと比べれば小さくても、ヒナカマキリにとっては巨大です。奴らに狙われたら、やはりヒナカマキリはひとたまりもないでしょう。合掌。