虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

東京でも結構生き残っている国蝶オオムラサキ

 本日の話題は地味です。まあ、越冬している虫というのは、地味なのが多いものですから、諦めましょう。

 成虫は日本の国蝶です。ということは、オオムラサキですね。日本の国花は、一般には桜と菊だそうです。国鳥はキジですね。何の役にも立たない知識ですが、知っていると何だか賢そうでいいですね。

 

 オオムラサキの幼虫の食樹はエノキです。東京の街中でも至る所にある木ですが、オオムラサキは東京都心など都市近郊では激減していて、準絶滅危惧種になっています。都会で生き残れない大きな理由の1つが、エノキの大木の根元のフカフカした落ち葉の中で、幼虫で越冬することです。そういう環境は、都会には少ないですよね。

 

 でもまだ、多摩市や町田市には、かなりの数のオオムラサキがいます。成虫を目にする機会は少なくなっていますが、冬に幼虫を探すと、まだまだ結構見つかるので、ホッと一安心。国蝶なのに東京で絶滅なんて嫌ですよね。

 

 で、その地味な越冬幼虫です。まずは千葉市の公園で今年1月末に観察したオオムラサキ越冬幼虫。この公園は生息密度が高いです。

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千葉市の公園のオオムラサキ幼虫

 そして、昨年12月に東京多摩市で見つけたオオムラサキ幼虫。今冬はなんだか数が少ない感じで、ちょっと心配になりますね。この木の下で見つけたのは1匹だけでした。

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東京・多摩市のオオムラサキ幼虫

 面倒なことに、オオムラサキと同じエノキの根元で越冬していて、オオムラサキそっくりな幼虫がいます。それはアカボシゴマダラとゴマダラチョウ

 

 下の3匹はゴマダラチョウの幼虫です。オオムラサキゴマダラチョウの見分け方は、慣れると簡単。ゴマダラチョウの幼虫は背中の突起が左右3対しかありません。これに対し、オオムラサキとアカボシゴマダラは4対です。

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ゴマダラチョウの越冬幼虫

 たまたま、オオムラサキと、ゴマダラチョウの幼虫が一枚の葉裏で一緒に越冬していました。まるで見分け方の教材のようですね。左がオオムラサキ、右がゴマダラチョウです。

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オオムラサキ幼虫とゴマダラチョウ幼虫が一枚の葉裏で仲良く越冬中

 そこで問題になるのは、オオムラサキとアカボシゴマダラの幼虫をどう見分けるかですね。ポイントはお尻の先。お尻の先が牛の角のように2つに分かれていればオオムラサキ、くっついて1本角のようになっていればアカボシゴマダラです。ゴマダラチョウの幼虫のお尻の先は2つに分かれていますが、オオムラサキとの見分けは前述の背中の突起で分かりますね。

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アカボシゴマダラの幼虫はお尻の先が、くっついて一本角のようになっている

 あと、アカボシゴマダラの幼虫は低木やヒコバエを好む傾向がある感じがします。都心の低木で見つかる幼虫は、圧倒的にアカボシゴマダラが多いですね。オオムラサキの幼虫は、大食いのせいなのか、大木に多いようです。ゴマダラチョウも比較的大木が好みのような気がします。

 

 なので、大きな森でエノキの大木の根元の落ち葉の中を探すと、オオムラサキの幼虫に遭遇する機会が多くなります。次いで多いのがゴマダラチョウで、アカボシゴマダラはかなり少数派になります。ある程度の住み分けができているのかも。

 

 分かりやすいよう、3種類を一緒に並べてみました。左からオオムラサキ、アカボシゴマダラ、ゴマダラチョウです。何て親切なのでしょう。成虫の蝶ならまだしも、ほとんどの人々は地味な越冬幼虫になど興味がないので、せっかくの苦労も「無駄骨」という意見もあります。

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左からオオムラサキ、アカボシゴマダラ、ゴマダラチョウの越冬幼虫