虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

春最初のカミキリ虫はキクスイカミキリ。菊愛好家はご用心

 つい先日、わが家のベランダの鉢植えで、キクスイ(菊吸)カミキリを見つけました。菊愛好家の間では有名な、菊の害虫ですね。

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菊の害虫として知られるキクスイカミキリがわが家のベランダに

 「ホー、昆虫記者は菊を育てる趣味があるのか。見かけによらず、乙女チック」などと思った人は、大間違いです。昆虫記者の植木鉢に植えられているのは、菊ではなくて、雑草のヨモギです。ヨモギハムシとかキクスイカミキリとかを飼育するために植えているのです。

 

 キク科の野草は山ほどありますが、なぜかキクスイカミキリは、観賞用として名高い普通の菊(たぶんノギクも)と、ヨモギが好み。花だけ見ると、似ても似つかない菊とヨモギですが、葉を見ると結構そっくりさんです。

 

 なので、きっと味もそっくりさんなのでしょう。昆虫記者のテリトリーである野山には圧倒的にヨモギが多いので、キクスイカミキリをみつけるのもヨモギばかり。菊で見つけたのは1度だけです。

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わが家のヨモギを食害するキクスイカミキリ

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 4~6月に多いキクスイカミキリの成虫を見つけるコツを伝授しましょう。と言っても、誰も教わりたくないでしょうが、それでも教えます。

 

 探す場所は、ヨモギの茎の先端の方の新葉。丸まった葉の中に隠れていることが多いです。

 

 5月頃からは、先端の方10~20センチぐらいの部分が、しおれたり、枯れかけているヨモギが何本もあったら、近くにキクスイカミキリがいる可能性大です。これはキクスイカミキリが産卵した証拠だからですね。

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こんな風にヨモギの先端の方だけがしおれていたら、キクスイカミキリが産卵した証拠

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キクスイカミキリが産卵して間もないとみられるヨモギ。リング状の噛み痕が二つ見られる

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リング状の噛み痕の上はしおれて、下は栄養がたまるためか太くなる

 しおれた部分のすぐ下に、リング状の噛み痕が二つあれば、その付近に卵が産みつけられています。

 

 そんなヨモギは、秋には枯れてしまいます。キクスイカミキリの幼虫が髄の部分を下に向かって食べ進むからです。なので、そんなヨモギを見つけたら、チョッキンして持ち帰っても、自然に大きな害を及ぼすことにはならないと思われます。

 

 などと言い訳をした上で、昆虫記者も昨年、そんなヨモギをチョッキンして持ち帰りました。なぜって?。尋ねるまでもないでしょう。幼虫を自宅で飼育するためですね。「なぜ、幼虫を育てるの。害虫の研究?」。そんなことも、尋ねるまでもないでしょう。害虫の研究なんて、全くやるつもりがありません。ただ単に、虫を飼育するのが好きなだけですね。

 

 産卵痕のあるヨモギは、根ごと持ち帰れば長持ちするのでしょうが、根っこを掘り返すのは大変な上、自然に多大な害を成しそうだし、周囲から奇異の目で見られること必至です。

 

 なので、適当な部分だけチョッキンして、周囲に見とがめられないうちにササッとリュックに放り込みます。

 

 この場合、しばらくすると茎が枯れてしまうので、枯れた茎から幼虫を取り出して、新たに調達した太目の茎に引っ越しさせるのが、お勧めです。新居には、入居しやすいよう、あらかじめピンドリルなどで、適当な深さの穴を開けておくと入居者に感謝されるようです。「なんでそんな面倒なことをするの」と尋ねる人もいるでしょう。真の虫好きは、手間を惜しまないのです。

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キクスイカミキリ幼虫が食べ進んだ後の茎の中は、スッカスカに

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幼虫がいまいた。下に向かって食べ進んでいるはずなのに、たいていカミキリの幼虫は上を向いています。不思議。

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小さなカミキリなので、幼虫も小さいです。

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秋にはもう茎の中で成虫になっているようです

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9月に無理やり起こしてしまったキクスイカミキリの成虫は、どこかでちゃんと越冬できたのだろうか。

  そして、鉢植えでキクスイカミキリを見つけるという、最初のシーンに戻ります。都会のマンションのベランダで、自然にキクスイカミキリが発生する可能性は、限りなくゼロに近いですね。実は、ヨモギを育てている鉢に、冬の間に飼育用の茎を突き刺しておいたのでした。

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 先日、鉢植えのヨモギの新芽が食害されているのに気づいて、探してみたら、キクスイカミキリ成虫がちゃっかり食事していたというわけです。いやー、長い説明でしたね。「ばかばかしくて、聞いてらんねー」って感じですね。失礼しました。