アブを好きな人はあまりいませんね。ハチに似ていて怖そうだし、口で刺すやつもいるし。幼虫は蛆虫体形で肉食のが多いし、嫌われ者の要素が満載です。そんな中で、比較的かわいいのが、春にだけ姿を見せる、ビロードツリアブ。ホバリングする姿は、宙に浮く毛玉かタワシ。ホバリングしながら花の蜜を吸う姿は、可憐といってもいいでしょう。
しかし、そんなビロードツリアブも、幼虫はやはり肉食らしいです。先日行った小石川植物園で、成虫がヒメハナバチの仲間の巣穴を産卵爆撃する様子を目撃しました。
日当たりのいい斜面にはアリの巣のようなヒメハナバチの巣穴がたくさん開いています。その穴めがけて、ビロードツリアブが次々とやってきて、空中から爆撃していきます。
実は、ビロードツリアブのこんな産卵については、この日まで全く知らなかったのです。それを教えてくれたのは東大植物園の腕章を付け、捕虫網を持った爽やかな若者カップル。そうです、ここは東京大学の植物園なのです。東大生の研究フィールドなのです。
カップルは二人とも、きっと東大生なのでしょう。爽やかな上に、頭脳明晰。そして捕虫網を持って野山を駆け回る虫好き。こんな理想的なカップルは、日本広しと言えども、数えるほどでしょう。日本の未来は明るいと確信した1日でした。