虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

桑の木でキボシカミキリの交尾と、クワカミキリの食事をじっくり観察。

 桑の実って、無料で食べられる木の実の中では抜群においしいですよね。人間は桑の実を食べ、クワカミキリは桑の樹皮を食べ、キボシカミキリ桑の葉を食べる。全く無駄がないですね。桑の木は100%有効利用されるのです。利用される桑の木の方は、ちょっとかわいそうな気もしますが。

 最初に登場するのは、今頃の季節どこの野山に行っても大量に見られるキボシカミキリです。今まさに、交尾に入ろうとしている熱愛カップルがいたので、じっくり観察することに。

 まずは、交尾直前の様子。ドキドキする瞬間ですね…って、カミキリムシの交尾に何を興奮しているのでしょうか。

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交尾に入る直前のキボシカミキリカップ

 そしてドッキング。やったね。無事交尾にもちこめて、良かった、良かった。

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無事交尾に持ち込めて満足気なキボシカミキリの雄

 雄のお尻から飛び出ているのは交尾器の一部でしょうか。

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オスのお尻の先に見えるのは交尾器の一部か

 お取込み中のカップルをしつこく撮影していると、恥ずかしがって移動し始めました。すると、雄の交尾器の先がスルスルと伸びて、長いひも状に。

 

 ひもの中心が膨らんでいるので、たぶんそこが雄と雌の交尾器の接合点。接合点から雌寄りの部分はたぶん雌の交尾嚢とか受精嚢とか言うものでしょう。接合点は鍵と鍵穴のように、がっちりかみ合って、容易には抜けない構造になっているらしいです。人間のカップルより、ずっと一体感がありますね。

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移動を始めた交尾中のキボシカミキリカップル。お尻から出ているひも状の物体の真ん中の太い部分は、たぶん雄と雌の交尾器の結合部分。

 こちらは、別のキボシカミキリカップル。さきほどは熱愛の邪魔をしてしまったので、今度は暖かい気持ちで遠くから見守るだけにしました。

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別のキボシカミキリカップル。メスは性欲より食欲。

 上のカップルの雌は、交尾中も食事をやめませんでした。性欲より食欲というのは、昆虫のカップルではよくあることです。この雌の行動で分かるように、キボシカミキリの主食は桑、イチジク、イヌビワなどクワ科の植物の葉です。

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別のキボシカミキリ単独さん。

 これに対して、もっと大型のクワカミキリは、桑の枝の樹皮を主食としています。

 

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同じ桑の木でクワカミキリ発見

 

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クワカミキリは、桑の枝の樹皮を食べます

 

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クワカミキリの複眼。こんな変な目で世界はどう見えるのか。

 クワカミキリを探すなら、樹皮が削り取られて白っぽくなった枝が目印。キボシカミキリなら、食痕とフンで汚くなった葉が目印。などという知識は、虫好き以外の人々には何の役にもたちません。

 同じ桑の木にキボシカミキリとクワカミキリが同居していることも良くありますが、きちんと住み分け、食べ分けができているので、ケンカにならず平和的でいいですね。でも一般の人々の興味は、たぶんおいしい桑の実だけでしょう。でも残念、もう桑の実の季節はとっくに終わっていますよー。