皆様、明けましておめでとうございます。おめでたい年明けには、何か新春にふさわしい虫を登場させたいところですが、冬場に華やかな虫を見つけるのは、かなり難しいのです。
冬を代表する虫と言えばフユシャクですが、フユシャクで色味があるのは、イチモンジフユナミシャクのメスぐらいのもの。でもそんなに都合良く、出会えるものでもありません。
でもまあ、一応トライはしないといけないので、フユシャクのメッカ、生田緑地へ。今回はちょっと趣向を変えて、「とんもり谷戸」側を探索しました。中央広場や日本民家園、岡本太郎美術館などがある側を「表」とすれば、とんもり谷戸側は、ゴルフ場の周囲を取り囲むような人気薄の散策路で、いわば生田緑地の「裏」です。
やはり裏道はしょせん裏で、たいした出会いもないまま、とぼとぼ歩いていくと、木柵の目立つ位置にポッツリとフユシャク♀の姿が。近づいていくと、青い翅がキラリ。「オオー、何と、あの神々しいお姿は、まぎれもなくイチモンジフユナミシャクの♀」
イチモンジフユナミシャクの♀は、実際には非常に小さくて、こんなに大げさに褒めたたえるほど、大した虫ではないのです。一般の人々にとっては、木柵に張り付いたただのゴミですね。
でも、虫に飢えた冬場の昆虫愛好家にとっては、こんなちっぽけな出会いが、感動を呼ぶのです。虫好きの感動って、本当に安上がりで、お手軽でいいですね。
ただし、その感動を一般の人々に押し付けてはいけません。飾りのような小さな青い翅の「飛べない真冬の蛾」なんて、普通の分別ある人々にとっては、全く「どーでもいい」、人生にとって「何の意味もない」存在なので、そのへんのところをきちんとわきまえてこそ、真の虫好きと言えるのです。
でもやっぱり、「青い翅の飛べない真冬の蛾」は、美しくて、可愛くて、見事な神の造形なのです…って、ちっともわきまえてないんですけど。
生田緑地のとんもり谷戸側は、散策路として悪くないですが、表側に戻る最後の1キロぐらいが一般道になってしまうのがちょっと残念。