ミドリシジミなどキラキラの蝶が多いゼフィルスの中で、ウラゴマダラシジミは一番地味な蝶と言ってもいいくらいですが、なぜか気になる蝶でもあるのです。
ヤマトシジミやルリシジミを巨大にしたような姿なので、過去にはミドリシジミよりルリシジミに近い種類と考えられていたこともあるようです。でも、そんなことよりも気になるのは、簡単に見つかるはずの幼虫が、なぜか昆虫記者の節穴の目では捉えられないという点でした。
シジミチョウとしては相当に大きな蝶なので、幼虫もかなり大きいはず。そして、その食樹はどこにでもある低木のイボタ。成虫を見かける場所なら、昆虫記者の目がよほどの節穴でない限り簡単に幼虫も見つかるはずなのですが、どうしても見つからない。
その謎が今年解けました。そして幼虫をたくさん見つけました(4月末のことです。成虫は5月後半から現れます)。
ウラゴマダラシジミの幼虫の擬態は、これまで目にしてきた擬態とはちょっと趣きが違っていたのです。
終齢の大きな幼虫と蛹は、イボタの葉を一回り小さくした程度の大きさで、イボタの葉裏にきれいに張り付いていたのです。その様子は、イボタの葉を裏側に膨らませたような感じで、芋虫の質感がほとんどなかったのです。
つまり昆虫記者はこれまで、普通のイモムシ探しの延長線上でウラゴマダラシジミの幼虫を探していたので、やつらを見つけられなかったというわけ。
今年も幼虫に出会えないだろうと半分諦めながら、ひっくり返したイボタの小枝をじっくり眺めていた時、この奇妙に膨れた葉の存在に気付いたのでした。そしてそれこそが、ウラゴマダラシジミの幼虫だったのです。
1匹見つけれはあとは楽勝。次々と幼虫や蛹を発見。これで来年からは、毎年幼虫の飼育や、成虫の羽化が楽しめるでしょう。