虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

この渦巻の正体は?ヌルデの葉を芸術的に巻く、あまり芸術的でないイモムシ。

 しつこく、しつこく、ヌルデの虫シリーズを続けたいと思います。今回は、ウスマダラマドガ。見どころは、幼虫がヌルデの葉で作る作品です。

 幼虫も、成虫も、外見上はあまり取りえがないのですが、幼虫の作品はちょっと芸術的で、ちょっとおもしろいです。

 まずはその作品を渦巻の正面から見て見ましょう。何が何だか分かりませんね。

ウスマダラマドガの幼虫がヌルデの葉で作った不思議な芸術作品。こんな角度で撮ると何が何だかよく分かりませんね。

ちょっと離れたところから見たウスマダラマドガ幼虫の作品。

ヌルデの葉を下から見上げると、ウスマダラマドガ幼虫の作品はこんなふうに見えます。

 マドガもこれと同じような渦巻を作りますが、マドガの場合は素材がセンニンソウやボタンヅルという小さな植物の葉なので、作品も小さく、目立たなくなります。

 それに対し、ウスマダラマドガの渦巻きの素材は、そここそ大きな木で、わりと大きな葉を持つヌルデなので、作品もそこそこ迫力のあるものになります。

 そしてなぜか、ウスマダラマドガの幼虫がヌルデの葉を巻く際には、左右に1対の渦巻き(単独のものや、左右2対のものもある)になることがよくあり、その場合は渦巻の芸術性が高まります。

 しかし、ウスマダラマドガの見どころはここまで。渦巻をほぐすと出てくる幼虫は、非常に地味です。そして成虫もかなり地味です。なので、ウスマダラマドガの幼虫を飼育しようなどと考える人は(昆虫記者以外)、ほとんどいません。それに、以前書いたようにヌルデはウルシの仲間なので、かぶれやすい人は手を触れない方がいいですね。

地味なウスマダラマドガの幼虫。

ウスマダラマドガの蛹。

ウスマダラマドガの成虫。普通はもう少し翅の筋模様がはっきりしていて、もう少しきれい。

 

ヤマカマスの超小型版、ハイイロリンガの繭作りは職人技。

 かなり前に予告していたハイイロリンガの繭作りです。

 ウスタビガの繭のヤマカマスに非常に良く似ていますが、ずっと、ずっと小さいです。ウスタビガの幼虫、繭作りの観察は大変ですが、ハイイロリンガの繭作りの観察はずっと、ずっと容易です。

 ハイイロリンガの場合、まず、春から夏にかけて、幼虫がたくさんいる(ウスタビガの幼虫は少ない)。そして幼虫がたくさんいる場所が、どこにでもあるヌルデの幼木(背丈0.5~2メートルぐらい)なので、捕獲が容易(ウスタビガの幼虫はたいてい高いところにいる)。

 小さいイモムシなので、餌の確保が容易な上、小さい容器で飼える。

 ということで、ハイイロリンガの繭作りの観察の始まり、始まり。

足場を固定したあと、おおまかな筒状の薄い繭を作り始めます。

幼虫の頭は上向き。繭の上方の横に突き出た部分を作っているようです。

幼虫の頭は下向き。繭の下方の尖った部分を成形しているようです。繭の基本形はぼぼできた感じ。

体をくねくねさせながら、繭を厚くして強度を高めている段階のようです。

ここでも繭が出来上がりつつあります。右に別の幼虫が写っています。

完成間近の繭。

繭が完成しました。葉と同じ緑色の繭です。

繭から出てきたハイイロリンガの成虫。繭上部をジッパーのように開けて出てくるようです。この頃には繭は茶色になります。

成虫が出た後の繭。上部が開いているのが分かります。

 ウスタビガもほぼ同じように繭を作って、ほぼ同じように繭から出てくるようですが、その観察は大変。ハイイロリンガなら、同じような過程をお手軽に観察できるので、是非お試しあれ。







 

子ども時代に戻って夏の定番虫撮り。やっぱりカブトとクワガタですね。

 このところずっと、イモムシ系になっていましたが、8月も中旬に入って、真夏も終わりかけてきたので、イモムシなどのついでに撮った夏の定番、カブト、クワガタを紹介します。

 男の子の夏の虫捕りといえば、やっぱりカブトとクワガタ。カブクワを見ると、童心に戻りますね。最近は遠出していないので、東京町田市と神奈川県川崎市のカブクワです。都会の一角の公園にも、まだカブクワが健在って、嬉しいですね。

 まずは町田市のカブト、クワガタです。

町田市のカブトムシ。昼間なので蝶やカナブンとの共演が見られます。

今年一番の大物ノコギリクワガタ

大物だとつい、子ども時代のように、大きさを誇示したくなりますね。

メスを守る男気のあるノコギリクワガタもいました。

 以下は川崎市の公園の樹液酒場の様子です。

夏も後半になると、カナブンよりクロカナブンが目立つようになりますね。

交尾中のカブトのカップル。近くには戦いに敗れた痛々しい姿のオスもいました。子孫を残す競争は厳しいですね。

 

今年はヌルデの虫にちょっとこだわってみた。まずはハイイロリンガ。

 今年はヌルデの虫にちょっとこだわってみようと思います。ただし、ヌルデはウルシ科の植物なので、かぶれやすい人は注意しましょう(毒性はかなり弱いようで、たいていの人は軽く触れる程度でかぶれることはないようです)。

 まずは、ハイイロリンガ。成虫の翅の繊細な模様は、まるでモザイク画のようです。ハイイロリンガというパッとしない名前を付けられて、かわいそうになるくらいです。しかし、わりと小さい蛾なので、成虫を見つけるのは難しいかも(数は多いので灯火採集をやる人なら簡単かも)。

モザイク画のような繊細な柄のハイイロリンガ成虫。

サイズはこんな感じ。かなり小さい蛾ですね。

羽化後、蛹にしがみ付くハイイロリンガ。

 なので、この繊細なモザイク画をどうしても見たいと言う人は、ヌルデの葉裏にたくさんいる幼虫を飼育するのがいいです(しつこいですが、かぶれやすい人は注意)。

 食痕のある葉が、下方に向けて少し丸まっていたら、その裏側に幼虫がいる可能性が高いです。

ヌルデの幼木の葉がこんな感じになっていたら、裏側にハイイロリンガの幼虫がいる可能性大。

非常に地味なハイイロリンガ幼虫。

 ただし幼虫は非常に地味で、飼育意欲がわきにくいです。きれいな成虫の姿を想像しながら、我慢して飼育しましょう。

 さらに、ハイイロリンガの幼虫を飼育すると、ちょっとした「おまけ」をゲットできます。それは奇妙な形状の蛹。蛹作成の過程も面白いので、その様子は次回(最近なまけ気味なのでいつになるのやら)のお楽しみに。

あっ、スカシカギバをアップし忘れてた。冬のイモムシ探し。

 冬のイモムシ探し、全部アップし終わったと思ったら、大事なスカシカギバを忘れてました。ずっと前にyahooに記事を書いたので、終わった気になってました。

スカシカギバ成虫。見事な透かし模様は芸術的ですが、見方によっては破れ障子のようでもあります。

 ほぼ真夏なのに、いまさら3月初めの話です。横浜市の某公園のシラカシの幼木に、小さな鳥の糞のような物が付着していました。それがスカシカギバの若齢幼虫でした。

スカシカギバの若齢幼虫。

スカシカギバ若齢幼虫を拡大。葉の表面を削って食べていた。

 カギバの仲間の多くと同様に、スカシカギバの幼虫も、基本的に葉の表側にいます(葉をひっくり返して探す面倒がない)。若齢幼虫は、葉の表面を削るように食べていました。

 

 少し大きくなると、葉全体をバリバリ食べるようになります。

スカシカギバ幼虫は汚い鳥の糞のようですが、これでもイモムシです。

こういう折りたたまれた姿勢をとっていることが多い。

終齢幼虫の正面顔はちょっと怖い。

 ちょっと面白いのが蛹室の作り方。葉を前後に2分割して、葉柄に近い方を筒状に巻いた中で蛹になりました。先の方は巻かないので、結果的に葉が銛(もり)のような、矢印のような形になります。2匹の幼虫が同じ形の蛹室を作ったので、気まぐれではないようです。

銛のような、矢印のような変な形の蛹室。

 そして羽化。成虫の見事な透かし模様を見ると、どうしてもステンドグラス遊びをしたくなりますね。

スカシカギバ成虫の透かし模様を使ってステンドグラス遊び。

 

冬のイモムシ探し、いくらなんでもそろそろ終わりにしないと。ウスキツバメエダシャク、ヒメカギバアオシャク、ツマジロエダシャク。

 冬のイモムシ探し、いくらなんでもそろそろ終わりにしないとアホだと思われますよね。ということで、今回はまとめて一気出しです。

 まずは成虫の見栄えがいいウスキツバメエダシャク。幼虫は広食性のようで、今回は他にもいろいろな冬のイモムシがいるクスノキにいました。

ウスキツバメエダシャクの成虫。なかなか美しい蛾です。

顔面がすべて橙色ならウスキツバメエダシャク。シロツバメエダシャクは一部が白くなるようです。

ウスキツバメエダシャクの幼虫。

ウスキツバメエダシャク幼虫の特徴は、この潰れたような頭部。前から見るとジンベイザメの頭に似ているかも。

ウスキツバメエダシャク幼虫の正面顔をアップにしてみました。ツバメエダシャク系の幼虫はみんなこんな感じのようです。

 

 ついでと言っては何ですが、yahooニュースにとっくの昔に掲載したヒメカギバアオシャクです。冬場の幼虫はアラカシなどの新芽擬態で有名ですね。昆虫記者もずっと、擬態にほんろうされてきましたが、昨年から今年にかけての冬場にやっと、見つけるコツをつかんだ感じです。「これからはバンバン見つけるぞ」とか言って、きっとまた騙され続けるのでしょう。

これが有名なヒメカギバアオシャクの新芽擬態。

新芽以外の場所にいるとけっこう見つけやすいヒメカギバアオシャク幼虫。

カギバアオシャクには劣る感じですが、それでもなかなかに美しいヒメカギバアオシャク成虫。

ヒメカギバアオシャク成虫は、翅の裏側の色彩が鮮やか。

 ツマジロエダシャクの幼虫は、以前紹介したクスアオシャクと同様に、クスノキの常連ですね。

折り紙のヤッコさんに似ているツマジロエダシャクの成虫。

紙細工のようなツマジロエダシャク成虫を手のひらに載せてみた。

ツマジロエダシャク幼虫はあまり特徴がないので、同定するには羽化させるのが一番いい。

ツマジロエダシャク幼虫。こんな感じに黒い紋が入っていることも多い。

 

いまだに冬のイモムシ探し。ユズリハにいるアカウラカギバ。SNSの裏アカではありません。

 もう夏日、真夏日の季節なのに、いまだに冬のイモムシ探しです。今回はユズリハにいるアカウラカギバ。

 SNSのウラアカ(裏アカウント)とは違って、アカウラの幼虫はユズリハの葉の表側、中心付近に堂々と鎮座していることが多いです。カギバの仲間の幼虫の多くは、葉の表側にいるので、いちいち葉っぱをひっくり返す手間が省けて助かりますね。

アカウラカギバの成虫。頭部と胸部は結構赤い。

2月時点のアカウラカギバ幼虫。ユズリハの葉の表側、中心付近にいることが多いようだ。

少し大きくなった幼虫。依然として葉の中央にいる。

蛹化寸前のアカウラカギバ幼虫。このまま葉を巻いて、その中で蛹化する。

幼虫の正面顔はちょっと面白い。

 

 でも冬の幼虫は小さくて、葉の中央に溜まったゴミのように見えるので、丹念に探さないと見落とします。

 成虫は3月20日頃から羽化し始めました。アカウラ(赤裏)の名の割には、翅の裏側はそれほど赤くありませんでした。でも、頭部と胸部は結構赤いので、正面や裏側から見ると、まずまずの見栄えです。

アカウラカギバ成虫。翅の表側は非常に地味。

アカウラカギバ成虫。翅の表が地味なので、裏の「赤」の印象が強いのかも。

 ちなみに、街路樹にも多いユズリハは、新葉が伸びると、古い葉が一斉に落ちるので「譲り葉」なのだそうです。東京では葉の交代は4月下旬ぐらいの感じでした。なので、今ある葉はすべて春に伸びた新葉です。

4月下旬のユズリハ。「譲り葉」の名の通り、新葉が伸びると下の古い葉はすべて後進に道を譲って落ちていく。

 虫と一緒に植物についても学べるって、お得感があるブログですね(自画自賛)。