虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

シンガポールの沿線昆虫ガイド⓹ 虫捕りで禁固刑?

 シンガポールは罰金大国なので、虫捕りは危険行為です。ラブラドール自然保護区は、保護区なので、当然虫捕りは禁止です。昆虫記者は虫捕りでなく、虫撮りが稼業なので「昆虫記者、違法採集で逮捕」といった緊急事態は起きないと思いますが、不安はぬぐえませんね。

 

 ちゃんとこんな警告が表示されています。

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自然保護区や国立公園は昆虫採集禁止です

 虫捕り禁止は、禁止事項のほんの一部。喫煙やゴミの投げ捨てはもちろんですが、ペットの連れ込み、動物への餌やり、生き物のリリースなども禁止です。違反した場合の罰がすごいです。表示によれば、5万Sドル以下の罰金か、6カ月以下の禁固刑、あるいはその両方となっています。

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罰金は最高400万円

 5万Sドルって、約400万円ですよ。「ウッソー」とか、「マジかよ」とか、つい品のない言葉を発しそうになりますね。

 

 そんな危険を冒してまでラブラドールに行く必要があるのでしょうか。もちろんあります。

 

 フォレストウォークの出口から数百メートル坂を下ると、MRTのラブラドールパーク駅。セントーサ島の玄関口のハーバーフロント駅からだと2駅です。こんな都市部の海岸線に、小さいながら貴重なマングローブ林が残されているのです。潮が引くと、サンゴ礁が顔を出すらしいです。

 まずは水辺の景観をご覧ください。

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こんな素敵な水辺のボードウォークがあります

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小さいながらマングローブ林もあります

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潮が引くとサンゴ礁が顔を出すそうです

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マングローブ林沿いの木道です

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トビハゼがいました

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カブトガニは残骸だけ

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ワニ!と思ったら、いつものミズオオトカゲでした。でもトカゲの近くいる魚がきになります。どこかの水族館で見たような。

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この魚はもしかして、あの有名なテッポウウオでは

 なんと、このマングローブ林にはテッポウウオがいるのです。口から水鉄砲のように水を吹き出して、近くの枝先にいる虫を撃ち落として食べるあの技で有名な魚ですね。英語では弓の名手アーチャー・フィッシュと呼ばれます。テッポウウオなんて、NHK特集に出てくるような重装備、特大予算の探検隊でないと出会えない生き物かと思っていましたが、こんな都会の片隅の水辺にもいるんですね。シンガポールの自然がすごいのか、それともテッポウウオが全然すごくない当たり前の魚なのでしょうか。

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夕暮れ時だったのできれいに撮れませんでしたが、確かにテッポウウオです

 罰金の恐怖さえなければ、なかなかいい公園ですね。でも日本からの観光客は、まず絶対にこんなところには来ません。つまりここは、「超穴場の観光地」なのです。それは「超不人気の観光地」とも言えますね。

 蝶も少々いたので、次回紹介します。

グレタ・トゥンベリさんの国連スピーチを全訳してみました

 地球温暖化問題への対策を求める世界的ムーブメントを起こしたスウェーデンの16歳の女の子、グレタ・トゥンベリさんの国連気候行動サミットでのスピーチは、すごい迫力でしたね。環境問題は、昆虫を含めた生態系の問題でもあるので、心を動かされました。

 そこで、トゥンベリさんのスピーチを全訳してみました。稚拙な訳(一応英語翻訳歴は結構長いんです)ではありますが、トゥンベリさんの気持ちは十分伝わると思います。

 

◆2019年9月23日、ニューヨークでの国連気候行動サミットにて。講演者 グレタ・トゥンベリ

 

 私が伝えたいメッセージは「私たちはあなたたちのことを注視している」ということです。

 すべてが間違っています。私がここにいるのは、おかしいのです。わたしは、海の向こうで学校に戻っているべきなのです。しかし、あなたたちは、希望を求めて、私たち若者のところへやってきます。あなたたちは、そんなことをしていていいのですか!。(注=力を込めて強調したあのhow dare you!という言葉です)

 あなたたちは、私の夢を、私の子供としての生活を、あなたたちの空虚な言葉によって奪ったのです。それでも私は、幸運な人の1人です。苦しんでいる人々がいます。死んでいく人々がいます。生態系全体が崩壊しつつあります。私たちは、大量絶滅の始まりを目にしているのに、あなたたちの話題はお金のことと、永遠に続く経済成長のおとぎ話ばかりです。あなたたちは、そんなことをしていて平気なのですか。(注=ここもhow dare you!です)

 30年以上前から、科学が示していることは、極めて明確でした。なぜあなたたちは、見て見ぬふりをし続けて、ここに集まって、十分な仕事しているなどと言えるのですか。必要な政策も解決策も、まだどこにも見つからないというのに。

 あなたたちは、私たちの声に耳を傾けており、事態の緊急性を理解していると説明します。しかし、私はそれを信じません。信じられないことが、どれほどの悲しみと怒りを伴うものであっても。なぜなら、もしあなたたちが本当に状況を理解していながら、行動を起こしていないのならば、あなたたちは不道徳な人ということになるからです。そんなことを私は信じたくありません。

 私たちの温室効果ガス排出量を10年間で半分にするというポピュラーな計画では、気温上昇をセ氏1.5度以下に抑制できる可能性は50%にすぎず、人間の管理能力を超える不可逆的な連鎖反応を引き起こす恐れがあります。

 50%のチャンスはあなたたちにとって容認できるものかもしれません。しかし、こうした数値は、分岐点となる水準や、大半のフィードバックループ(フィードバックを繰り返すことで増幅されていく過程)、有害な大気汚染による隠れた温暖化の追加的効果などを考慮していません。また、公正さや、温暖化の加害・被害の公平性の観点も含まれていません。さらにこうした数値予測は、まだほとんど形になっていない技術を用いて、私たちの世代になってから、何千億トンもの二酸化炭素を空気中から吸い取ることを前提にしているのです。

 だから私たちは、50%のリスクを容認することはできません。温暖化の影響が広がった世界で生きていかななければならないのは私たちなのです。

 気候変動に関する政府間パネルIPCC)が示している最善のシナリオでは、気温上昇幅を1.5度以下に抑制できる確率は67%となっています。このシナリオでは、2018年1月1日時点で、将来排出可能な二酸化炭素の量は420ギガトンとされていました。現在ではその量は既に350ギガトン以下になっています。

 こうした問題が、「これまでと変わらない対応」や何らかの技術的対策だけで解決できるふりをしているのは、何たることでしょうか。現在の排出水準が続けば、残された二酸化炭素排出許容量は、8年半以内に全くなくなってしまいます。

 こうした数値に対応した何らかの解決策や計画が、今日この場で示されることはないでしょう。それは、こうした数値があまりにも不都合なものだからです。そしてあなたたちは、事実を事実として語れるほど、成熟していないのです。

 あなたたちは、私たちを失望させています。しかし、若者たちはあなたたちの裏切りを理解し始めています。未来を担う世代の視線は、あなたたちに注がれています。そして、もしあなたたちが私たちを裏切ることを選択するなら、私はこう言います。「私たちは、あなたたちを決して許さない」。

 わたしたちは、あなたたちの行為を見逃しません。今こそ一線を画すべき時なのです。世界は目覚めつつあります。あなたたちが、望むと望まざるにかかわらず、変化が起きようとしているのです。

 ありがとうございました。

 

以下は英語版 日本語への誤訳があったらお知らせください

"My message is that we'll be watching you.

"This is all wrong. I shouldn't be up here. I should be back in school on the other side of the ocean. Yet you all come to us young people for hope. How dare you!

"You have stolen my dreams and my childhood with your empty words. And yet I'm one of the lucky ones. People are suffering. People are dying. Entire ecosystems are collapsing. We are in the beginning of a mass extinction, and all you can talk about is money and fairy tales of eternal economic growth. How dare you!

"For more than 30 years, the science has been crystal clear. How dare you continue to look away and come here saying that you're doing enough, when the politics and solutions needed are still nowhere in sight.

"You say you hear us and that you understand the urgency. But no matter how sad and angry I am, I do not want to believe that. Because if you really understood the situation and still kept on failing to act, then you would be evil. And that I refuse to believe.

"The popular idea of cutting our emissions in half in 10 years only gives us a 50% chance of staying below 1.5 degrees [Celsius], and the risk of setting off irreversible chain reactions beyond human control.

"Fifty percent may be acceptable to you. But those numbers do not include tipping points, most feedback loops, additional warming hidden by toxic air pollution or the aspects of equity and climate justice. They also rely on my generation sucking hundreds of billions of tons of your CO2 out of the air with technologies that barely exist.

"So a 50% risk is simply not acceptable to us — we who have to live with the consequences.

"To have a 67% chance of staying below a 1.5 degrees global temperature rise – the best odds given by the [Intergovernmental Panel on Climate Change] – the world had 420 gigatons of CO2 left to emit back on Jan. 1st, 2018. Today that figure is already down to less than 350 gigatons.

"How dare you pretend that this can be solved with just 'business as usual' and some technical solutions? With today's emissions levels, that remaining CO2 budget will be entirely gone within less than 8 1/2 years.

"There will not be any solutions or plans presented in line with these figures here today, because these numbers are too uncomfortable. And you are still not mature enough to tell it like it is.

"You are failing us. But the young people are starting to understand your betrayal. The eyes of all future generations are upon you. And if you choose to fail us, I say: We will never forgive you.

"We will not let you get away with this. Right here, right now is where we draw the line. The world is waking up. And change is coming, whether you like it or not.

"Thank you."

 

翻訳は以上です。誤訳があったらすいません。でもネット上の他の翻訳にも誤訳がありました。他の翻訳と比べても、かなり丁寧な訳になっていると思います。

 以下は個人的な感想です。決して所属団体の意見を反映したものではありません。

 強い信念を持った少女が発する力はすごいですね。先進諸国の政治家や首脳は、支持基盤の経済界の反発を恐れて、こんな大胆な発言はできないでしょう。もちろん昆虫記者もできません。小泉進次郎環境相は、「セクシー」とかではなくて、いつかこういう発言をしてもらいたいですね。期待しています。

 金曜に学校を休んでスウェーデン議会の前に座り込んで温暖化への対応の遅れに抗議する「学校ストライキ」という活動をたった一人で始めたトゥンベリさん。世界各地で、何十万人もの学生が参加する大きなムーブメントを起こしました。

 でも日本では、福島の原発事故があったにもかかわらず、環境保護運動が盛り上がらないのはなぜなのか、不思議に思っています。環境政党が国会議席を持っていないのも不思議ですね。豊かな自然が身近にあり過ぎるせいなのかもしれませんが、そんな日本だからこそ、世界の先頭に立って環境保護を訴えるべきだと思います。

 そんなことを言いながらも、昆虫記者は飛行機にも乗るし、トイレの電気はしょっちゅう消し忘れるし、温暖化防止に全く貢献していない状況です。トゥンベリさんはNYに行く際にも、飛行機ではなくヨットを使ったとか。昆虫記者も彼女の爪の垢を煎じて飲むべきですね。

 

 ナガサキアゲハとかクマゼミとか、東京でも普通に見られるようになった時は、嬉しかったものですが、それも温暖化の影響と思うと、喜んでばかりはいられませんね。

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温暖化の影響か、クマゼミが東京でも普通に見られるようになった

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ナガサキアゲハが東京で普通種になったのはいつごろだったか。でもこれは尾状突起があるので、南国産です。

 

〇シンガポールの沿線昆虫ガイド④ バードウォッチャー垂涎の長大な樹上遊歩道

シンガポールの沿線昆虫ガイド④ バードウォッチャー垂涎の長大な樹上遊歩道

 ヘンダーソンウェーブを渡り、チビフタオチョウのイモムシだらけの舗装道を少し下ると、道の左手に「フォレストウォーク」という長大な樹上の高架遊歩道の入口があります。

 樹冠(キャノピー)を眺めながら散歩ができるキャノビーウォークの一種ですが、キャノビーとしてはかなり道幅が広い上、ともかく距離が長い。全長1300メートル、地表からの高さ18メートル。これほど立派な樹上の散歩道は、これまで見たことがありません。こんな施設が無料で楽しめるとは、さすがは金持ちの国シンガポールですね。タイやマレーシアも見習って、貧乏な昆虫記者から入場料を巻き上げないようにしてほしい。

 

 こういうキャノビーはバードウォッチングに絶好です。でも自然の少ない大都会というシンガポールの印象が災いしているのか、たいていどこのキャノピーにも生息しているバードウォッチャーの姿が見えません。もちろんインセクトウォッチャーの姿も、昆虫記者以外はどこにもありません。もったいないですね。シンガポールに自然を満喫できるこんな立派な施設(しかも無料ですよ)があることが、あまり知られていないなんて。

 

 昆虫記者は本格バードウォッチャーではないし、夜行便で到着した当日の強行軍で疲れがピークに達していたので(言い訳がましいですね)、カメラに収められた鳥は少ないのですが、それでも、この派手派手しく目立つコウライウグイスは、何度もしつこく姿を見せたので、バッチリ撮ることができました。

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派手派手しいコウライウグイス

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こちらは町中の街路樹で撮ったコウライウグイス

 カワセミの仲間のナンヨウショウビンも多く見かけます。

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青い稲妻、ナンヨウショウビン

 

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長大な樹上遊歩道のフォレストウォーク。ここ絶対お勧めです。

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こんなキャノピーウォークが無料ってすごい

 

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このあたりに一番多い地味な蝶、イワサキタテハモドキ(チョコレートパンジー

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大型のカメムシの幼虫。キャノピーの弱点は、虫を見つけても近寄れないこと。身を乗り出すとキャノピーから落下して死亡することに。

 この日は、ここからさらに、かつて英国軍の要塞があった海辺のラブラドール自然保護区まで足を延ばす予定なのですが、もはや足が棒。果たしてたどり着けるのか。頑張れ中高年。

シンガポールの沿線昆虫ガイド③ 一寸の虫にも五分の魂って言っても小さすぎるでしょ

 

 シンガポール南岸、マウントフェーバー付近の虫探しは、ドラゴン顔のチビフタオチョウ幼虫に集中しすぎたため、視界が顕微鏡モードになってしまい、イモムシ以外は異常に小さな虫しか見つかりませんでした。

 

 まずはトゲアワフキの仲間。

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トゲアワフキの仲間。かっこいいが、如何せん小さすぎる

 そしてハゴロモの幼虫。

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ハゴロモの仲間の幼虫。きれいだが小さすぎ

 どちらも5ミリに満たないような、ゴミのような虫です。一寸の虫にも五分の魂と言いますが、1寸は3センチぐらいだそうな。3センチもあれば、虫としたはかなり大型の部類に入ります。3センチもある虫をバカにするのは許せない。しかし、5ミリ以下となると、バカにされるのも仕方ないですね。

 

 蝶も、ベニモンシロチョウとか、ヤエヤマシロチョウとか、セセリの仲間とか、地味な顔触ればかり。次回からは、顕微鏡モードから広角と望遠モードに切り替えないといけませんね。

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ベニモンシロチョウ

 

シンガポールの沿線昆虫ガイド② ドラゴンに占拠されたマウントフェーバー

シンガポールの沿線昆虫ガイド② ドラゴンに占拠されたマウントフェーバー

 

 夜行便でシンガポールに到着した昆虫記者。安ホテルに荷物を預けたら、早朝からマウントフェーバーでドラゴン(チビフタオチョウ幼虫)探しです。結論から先に言うと、ドラゴンフェイスのイモムシは大豊作でした。どのくらい豊作だったかと言うと、こんな感じ。

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ドラゴン顔のイモムシ曼荼羅

 どうです。すごいでしょ。仏像曼荼羅、あるいは妖怪曼荼羅のようですね。「何バカなことやってるんだ」という意見が多いでしょうが、言い得て妙です。シンガポール旅と言えば、マリーナベイサンズに代表される豪華なホテルと、オーチャードロードに代表されるショッピング街と、ラウバサなどのフードコートに代表されるグルメが定番。開発の進んだシンガポールに来て、自然の魅力を味わおうなんて考える人はほとんどいないのです。

 

 でも考えてみて下さい。シンガポールはほぼ赤道直下の熱帯です。先進国だけに、自然保護区はきちんと管理されているので、安全かつ安易に、熱帯の自然を楽しめる場所が意外に多いのです。つまり、熱帯ジャングル探検の初心者体験コースとして、シンガポールは最適なのです。

 

 では、初心者コースを歩き始めることにしましょう。マウントフェーバーのケーブル駅から、頂上のフェーバ―ポイントの散策路に入り、見晴らし台を越えて、反対側に降りると、すぐにシャクトリ虫のようにうねうねと曲がりくねったヘンダーソンウェーブという橋が有ります。この橋は地表からの高さが36メートルもあるシンガポールで一番の高さを誇る歩道橋。遠くに海を臨むこともできて、夕暮れ時はカップルが愛を語り合う姿が多く見られるそうです。

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うねうねと波打つヘンダーソンウェーブ

 なーんてことは、昆虫記者には全く関係のないことです。ドランゴンフェイスのイモムシが山ほどいたのは、この橋を渡った先でした。探すべき食樹はナンバンアカアズキ。ニセアカシアによく似たマメ科の木で、道端に幼木がたくさん生えています。

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これがナンバンアカアズキ。道端にたくさん幼木が生えています

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ナンバンアカアズキの名前は、この赤い実が由来だろう

 幼虫は拍子抜けするほど簡単に見つかりました。事前学習の成果ですね。見つけ方は非常に簡単。幼虫はナンバンアカアズキの枝先の葉を2、3枚糸でつないで作った台座の上に、ドンと座っています。アカボシゴマダラとか、オオムラサキとかの幼虫を探したことのある人なら、この台座の雰囲気がよく分かると思います。

 

 台座の上に鎮座しているチビフタオチョウの幼虫です。

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3枚の葉をつないだ台座の上でくつろぐチビフタオチョウの幼虫

 その後もたくさん見つかりました。一般観光客には、雑草の葉を執拗に撮り続けるいる変な男と思われたようで、何度も奇異の視線を向けられました。

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道端の木にたくさん幼虫がいるが、誰も関心を示さない

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イモムシの写真を撮っていると奇異な視線を向けられた

 小さい幼虫は、ドラゴンフェイスが黒くて、これまた悪魔的ないい味を出しています。

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若齢のチビフタオチョウ幼虫

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小さい幼虫の悪魔的容貌

 蛹の抜け殻もありました。

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チビフタオチョウの蛹の抜け殻

 寄生バチの繭のホウネンダワラがぶら下がっていました。チビフタオチョウの幼虫も、大半はこうした寄生バチなどの天敵の餌食になるのでしょう。

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イモムシに寄生するアメバチの仲間の繭、ホウネンダワラ

 ここはたぶん、自然保護区ではないと思うので、虫を捕まえて刑務所に入れられることはないと思いますが、あらゆる不品行な行為に対する厳しい罰則で知られるシンガポールですから、危険は冒さない方が身のためです。シンガポールでは、ごみのポイ捨て、路上でのつば吐き、チューインガムの国内持ち込み、電車内での飲食など、ちょっとしたマナー違反で、500S(シンガポール)ドル、1000Sドルといった巨額の罰金を取られます。1Sドルは80円ぐらいですから、1000Sドルはかなりの大金。薄給の昆虫記者などは、翌日から食費もなくなって、路頭に迷うことになります。

 

 

シンガポールの沿線虫ガイド① マウントフェーバーでドラゴンクエスト

シンガポールの沿線虫ガイド① マウントフェーバーでドラゴンクエスト

 

 「さあ、熱帯の超先進都市シンガポールにドラゴンを探しに行こう」などと未来形で語っていますが、実は半年も前の話です。1週間後に台湾虫旅というのに、今年3月のシンガポール虫旅をブログでは全く紹介していないというこの体たらく。実は昨年のタイ・サイヨークの虫旅レポートですら、まだ完結していないとは、一体どういうこと。

 

 一応はてなブログの旅行グループの片隅に置いてもらっているので、やはり海外旅行シリーズをほったらかしにしておくわけにはいきませんね。

 

 てなことで、シンガポール・シリーズを開始することにします。開始しても、いつ終わるか全く見当がつきませんが、とりあえずは挑戦することに意義があるということにして、まずはシンガポール旅の1日目。

 今回の目標は、何と「ドラゴンクエスト」です。と言っても、仮想空間のロールプレイングゲーム(RPG)ではありません。本物のドラゴンを探すのです。「そんなもん、シンガポールにいるんかい」と疑う人が多いでしょうが、いるのです。そして、出会える確率はかなり高い。

 

 ではまず、ドラゴンの顔から。

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生きたドラゴン、チビフタオチョウ幼虫を探す「ドラゴンクエスト」の旅

 どうです。まさにドラゴンですね。ドラゴン以外の何物でもないですね。でも「ちょっと、イモムシ風に見えないこともない」という意見もあるでしょう。詰問される前に告白しましょう。これはイモムシです。

 シンガポールは熱帯ですが、高度に都市化された島国。とてつもなく豊かな自然があるはずはなく、とてつもなく珍しい巨大昆虫がいるはずもありません。そこで、これまでの海外虫旅では主要ターゲットにしていなかったイモムシを集中攻撃することにしたのです。これまで見慣れた蝶でも、その幼虫にはお目にかかっていないというケースが多いので、とりあえずイモムシで目先を変えようという姑息な手段に打って出たというわけです。

 そして、かなり簡単に見つかりそうなイモムシの情報をネット上でピックアップ。すると、このドラゴンがヒットしたのです。

 

 日本語での正式名称チビフタオチョウという蝶は、シンガポールにもたくさん生息している普通種の蝶です。今回の旅の最初のターゲットであるドラゴンは、このチビフタオチョウの幼虫なのです。昆虫記者はこの幼虫に以前から憧れており、密かに「ドラゴンフェイス」という名を付けていたのでした。

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以前サイヨークの虫旅で紹介したチビフタオチョウ成虫

 

 まずは居場所。そして幼虫の食樹を調べます。たくさんいる場所は、サザンリッジというシンガポール南岸の丘陵地と分かりました。ここにはマウントフェーバーという有名な観光地があって、縦横無尽の散策路が整備されています。セントーサ島へのゴンドラ式ケーブルカーの始発駅があるので、いつも観光客であふれています。

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マウントフェーバーとセントーサ島を結ぶケーブルカー

 こんなところに本当にドラゴンはいるのか。不安になるほど賑やかな観光地です。まずは観光しましょう。なにせ、旅ブログですから。

 

 フェーバーポイントはマウントフェーバーの頂上です。マウント(山)と言いながら、標高は100メートルほどしかなく、ふもとの地下鉄(MRT)ハーバーフロント駅から、散策路を歩いて登っても15分ほどの距離です。

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マウントフェーバー頂上の見晴らし台、フェーバーポイント

 大していい眺めではないので、あまり期待しない方がいいです。ここには、小さなマーライオン像があります。シンガポールに数体しかない公式マーライオン像の一つですから、一応写真を撮っておきましょう。

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フェーバーポイントの小マーライオン

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見晴らし台の基部にはシンガポールの伝説を描いたレリーフがある

 ケーブルカー駅の近くには、鳴らすを幸せになれるという「ベル・オブ・ハピネス」があります。そんなに簡単に幸せは訪れないと知りながらも、昆虫記者も一応幸せのベルを鳴らしてみます。響くのはむなしい音がだけです。そして、金持ちで幸せそうな人々を乗せた観光バスが次々にやってきます。

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鳴らしても、簡単には幸せになれないベル・オブ・ハピネス

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ベルに続く階段で記念写真を撮る女子旅一行は幸せそうだった

 このあたりからセントーサ島を眺めると、同島の巨大マーライオン像が見えます。海をバックにした巨大マーライオン像を写真に収められる場所はここぐらいしかありません。公式マーライオンはこれで2体目となります。2体が一度に見られるなんて、お得ですね。

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セントーサ島の巨大マーライオンを海をバックに撮ることができる

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シンガポールの海はたいていこんな眺め。さすが貿易立国、停泊する船の数が半端ではない

 などと、どうでもいい話をしているうちに、眠くなってきました。本日はここまで。「えー、ドラゴンクエストはどうなったの」という声は無視して次回に続きます。

 

夏の名残、今年最後のカブトムシと涙の別れ

〇夏の名残、今年最後のカブトムシと涙の別れ

 ああ、今年も夏が終わってしまいました。カブトムシとも最後のお別れです。涙、涙。なんて、今頃何を寝ぼけたことを言っているのかとお思いでしょう。もはや9月下旬、季節は秋です。

 

 今年最後のカブトムシとの出会いの場所は、横浜市の舞岡公園でした。8月31日のことでした。まさに小・中学生の夏休みの終わり。宿題追い込みの時期です。森にはもはや、カブトを探す子供たちの姿はありません。よくぞここまで生き延びたものです。でももうすぐ、その命も燃え尽きます。毎年のことながら、夏の終わりは悲しいですね。小学生の頃から、いや虫捕りを始めた幼稚園児の頃から、ずっとそうでした。

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今年最後のカブトムシの記録は8月31日

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夏休みが終わってしまう悲しみを背負ったカブトムシ

 舞岡公園のセミ世界は、9月に入ると、圧倒的にツクツクボウシの勢力圏になります。アブラゼミもミンミンゼミも、死にそうなガラガラ声になる中、ツクツクボーシ、ツクツクボーシというあの独特の歌声ばかりが元気に響き渡ります。

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ツクツクボウシ。下がオス、上がメスです

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新鮮なツクツクボウシは、銀色の粉をふりかけたような色合いが特徴

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都心では梅雨時から鳴き始めるニイニイゼミ。8月31日まで生き残っているのは貴重

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ニイニイの次に出てくるのはアブラゼミとミンミンゼミ

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セミの鳴きまね芸の定番はこのミンミンとツクツクですね

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夕刻に悲し気に鳴くヒグラシは、昼間は暗く涼しい杉林などに潜んでいます

 夏の終わりのコナラの森の中には、まだ青いドングリが枝ごとたくさん落ちています。台風被害?。いえいえ、これはハイイロチョッキリというゾウムシの仲間の仕業です。

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青いコナラドングリが小枝ごと道にたくさん落ちていたら、それはハイイロチョッキリの仕業

 青いドングリの帽子の部分を良く見ると、チョッキリが卵を産み付けた跡があります。蛆虫みたいな幼虫がドングリの中で育ちます。栗の中から出てくるあの栗虫とよく似た幼虫です。

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青いドングリの帽子部分にはハイイロチョッキリの産卵痕があります

 どんな幼虫か、気になりますね。「全然気にならないし、見たくもない」という意見も多いでしょうか、やはり昆虫記者としては確認する必要があります。持ち帰ったドングリを数週間後に割ってみると、中から出てきたのは、やはり栗虫と同じような蛆虫風の幼虫でした。やっぱり、見ない方が良かったですね。

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ドングリを割ってみると中には蛆虫風のハイイロチョッキリの幼虫

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セミが死に絶えた後の昆虫騒音公害の主役はアオマツムシになります

 そしてやがて、ツクツクボウシの声も途絶えると、東京近郊の都市公園は、リーリーとやかましいアオマツムシの声に占拠されます。アオマツムシはセミ以上にうるさいと感じる時もありますね。その正体はこんな小さな虫です。

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アオマツムシです。体は小さいですが、鳴き声は騒音公害レベル