虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

鎌倉の休日の7不思議

 先日GWの最中に鎌倉へ行ってきました。と言ってももちろん、寺社巡りではありません。昆虫写真家の森上信夫さんと、イモムシ専門家のイノウエケイコさんがご一緒という面子ですから、グルメ旅でないことも明らかですね。

 鎌倉の休日の7不思議というタイトルなら、普通歴史秘話が語られるところですが、筆者が昆虫記者なので、そうは問屋が卸しません。歴史秘話など、全く知らないので、書きようがありません。

 では、何の7不思議なのかというと、単なる駄洒落とこじつけです。

 まず第1の不思議はナナフシ擬態。ほーら、ちゃんと「ナナフシギ」が入っていますね。ナナフシは大きくなると枝に擬態しますが、小さい幼虫は、木の葉の上にチョコンと乗っているので、恐らく葉脈に擬態しているのでしょう。

 でも2匹並んでしまうと、葉脈としては不自然ですね。

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葉脈に擬態しているつもりのナナフシですが、2匹並んだら無理がある

 

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こんな感じだと、葉脈に似ています。

 続いて2つ目の不思議はナナフシギテントウ。そんなの、いません。ただのナナホシテントウですが、それが7匹いる偶然が不思議ですね。本当は10匹以上写っていた写真をトリミングしただけなので、何の不思議でもありません。それに、よーく見ると、7匹のつもりが、8匹目、9匹目がかすかに写ってしまっていました。

 

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ナナフシギテントウなんていません

 3つ目の不思議は、エゴフシギゾウムシ。そんなのもいません。本当の名前はエゴシギゾウムシです。エゴの木にいるシギのように口の長いゾウムシなので、合わせてエゴシギゾウムシです。何の不思議もないですね。

 

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エゴフシギゾウムシなんてのもいません。

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エゴの実を食べるエゴシギゾウムシ

 4つ目の不思議は、同じエゴの木にいるエゴツルクビオトシブミです。交尾中のカップルで、後ろから攻撃しているのが当然オスです。そのオスの首が鶴のように長いので、ツルクビ。メスが必死にエゴの葉を巻いて作っているのが、卵を包む揺籃、通称「落とし文」です。」交尾しながら、揺籃を作り続けるなんて、不思議ですね。

 たぶんこれは、メスが一心不乱に作業していたところ、オスが後から飛んできて「今だ、チャンスだ」とばかり、交尾におよんだということでしょう。単にどさくさ紛れの行動ということで、実は全然不思議ではないですね。

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メスが揺籃を作っているどさくさに紛れて交尾するエゴツルクビオトシブミのオス

 

 5つ目の不思議は、ツチイナゴ。春にこんな大きなバッタがいるなんて、不思議ですね。実はツチイナゴは、成虫で越冬する変わり者のバッタなのです。越冬明けの春に産卵するので、春に大きいツチイナゴがいるのは当然。これも全く不思議ではありません。ほかのバッタと生活サイクルが違うので、成虫が恐ろしい天敵のカマキリに襲われることがないというメリットがあります。

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成虫で越冬するツチイナゴ。春先に大きなバッタがいたら、それは私です。

 オオカマキリはようやく、卵から孵化したばかりで、大きなツチイナゴを襲うことなど、とてもできそうにないですね。

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春に孵化したオオカマキリ

 

 6つ目の不思議は、この黒いかたまり。イモムシの糞のように見えますが、これでもハムシです。その名もムシクソハムシ。虫の糞(ムシクソ)に見えるので、こんな恥ずかしい名前で呼ばれています。

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イモムシの糞に見えるムシクソハムシ

 

 7つ目の不思議は…。ここまで来るとさすがに、こじつけも苦しくなってきます。モモブトカミキリモドキあたりで、ごまかしておこうと思います。オスの後ろ足の腿が太いからモモブト。虫のオスには、前足か後ろ足が長かったり、太かったりするのが多くいます。たいていは、メスを抑え込んだり、ライバルのオスを蹴散らしたりするのに都合がいいからで、全然不思議ではありません。人間でも昔は腕力の強いオスが、メスを獲得したものです。最近はイケメンかどうかの方が重要なようではありますが。

 

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筋肉質の太ももを誇るモモブトカミキリモドキのオス

 ついでに不思議な行動を取っている人々です。鎌倉虫撮り旅に同行してもらった、昆虫写真家の森上信夫さんと、イモムシ専門家で、最近「キモカワ!イモムシ超百科」という本を出したイノウエケイコさんです。ただの木の葉の写真を撮っているように見えますが、小さなエゴシギゾウムシを相手に、真剣勝負の最中です。本人は必死ですが、周囲からは「不思議な人たち」に見えるでしょうね。

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何を撮っているのか分からない不思議な人たち

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カメラのレンズの前に小さなゾウムシがいるのが分かるでしょうか。

 最後は昆虫記者らしくない歴史秘話です。源氏山の近くで見つけた太田道灌の墓です。江戸城築城の偉業で知られる太田道灌の墓が、こんな人目につかない奥の細道に、目立たず、ひっそりとただずんでいました。

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あまり知られていない太田道灌の墓です。

 

富豪マリーナで地味なハムシを撮る貧乏人

 ヨットやクルーザーが無数に浮かぶ夢の島マリーナ。素敵ですね。どんなお金持ちがオーナーなんだろうかと、想像してしまいます。うらやましいですね。そして、悲しいですね。貧富の差をひしひしと感じます。

 羨んでばかりいても仕方がないので、地味にハムシなど探します。夢の島ユーカリの森です。まるで、オーストラリアにいるような気分になります。でも日本なので、コアラはいません。

 しかし、オーストラリアから入ってきた虫、ユーカリハムシがいるのです。コアラはさすがにユーカリに紛れ込んで密入国できないでしょうが、小さなハムシは簡単に、餌のユーカリに紛れて密入国できるのです。

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後ろ足だけで立ち上がった変な姿勢のユーカリハムシ。実は樹皮裏に産卵中です。

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すぐ近くには、ヨット、クルーザーが並ぶ夢の島マリーナ

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ユーカリハムシは長い産卵管を樹皮の下に伸ばして、卵を産み付けます。

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近くのマリーンセンターではクルーズ仲間でバーベキューが楽しめるようです。昆虫記者は縁がないです。


 地球の反対側にいたハムシなので、性格も日本のハムシとは対照的で、夜行性のようです。しかも、ハムシらしく葉に卵を産むのではなくて、ユーカリのはがれかけた樹皮の裏側に産卵します。

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樹皮裏に産み付けられたユーカリハムシの卵をちょっと拝見

 

 幼虫は完全に夜行性で、昼間は樹皮裏などに隠れていて、夜にこっそりと葉を食べに出てくるようです。

 

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以前に撮影した幼虫の写真。昼間は樹皮裏に隠れているので、葉の上を探しても見つかりません。

 こんな変な性格のハムシ、恐らく日本にはいないと思います。有袋類とか、カモノハシとか、変な生き物の多いオーストラリアらしいですね。

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熱帯植物館もありますが、有料施設なので入りません。

 

 あとは日本のハムシ。ネズミモチの木があれば、たいていどこにでもいるクロボシトビハムシです。

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小さなクロボシトビハムシ。手前にある白い点のようなのが、恐らく食痕。

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「えっ、見たことない」。当然です。なにせ、体長2ミリぐらいの小さなハムシですから、誰も気づきません。でもたいてい、どのネズミモチにもいます。葉に針で突いたような小さな穴がたくさん開いていたら、それがクロボシトビハムシの犯行の跡です。

 

 エノキハムシはまだ幼虫でした。

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エノキがあるところ必ずいるエノキハムシの幼虫

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エノキハムシ幼虫が発生すると、エノキの葉はこんな丸い穴だらけになります。

 エノキの葉が穴だらけになっているのは、たいていこの幼虫のせいですね。今頃はもう姿を消しているので、犯人を捜しても無駄です。でも、もうすぐ成虫が出てくるので、逮捕するのはそれからにしましょう。

夢の島の福竜丸展示館の蛾で思い起こす水爆とモスラの関係

 夢の島第五福竜丸展示館と、その近くにいた迷彩模様の蛾は、原水爆実験と大怪獣モスラの関係を思い起こさせます。(いかにも社会派の記事ですね。記者を名乗るだけのことはあります)

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迷彩柄の蛾はウンモンスズメ

 

 モスラ映画第1作は、原水爆実験場近くの放射能に汚染された島に流れ着いた沈没船の船員の話から始まります。船の名前が第二玄洋丸というのも、第五福竜丸を連想させますね。映画では核実験をした国は、ロリシカ国となっていますが、これはロシアとアメリカを合わせた名前だとすぐに分かります。第五福竜丸は米国の水爆実験場となったビキニ環礁近くで被爆しました。

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ビキニ環礁付近で被爆した第五福竜丸

 福竜丸展示施設の前にモスラがいたら良かったのですが。そうすべてうまくは行きません。モスラのモデルはヤママユガとかヨナグニサンとか言われています。ヨナグニサンは日本では与那国島まで行かないと見られません。

 今回、展示施設の前にいたのは、ウンモンスズメです。ヤママユ系ではなくて、スズメガの仲間ですが、迷彩服の模様が戦争を思い起こさせます、と言うのはもちろんこじつけです。

 オスメスのカップルが腹部を寄せ合うようにとまっていたので、恐らく交尾後の余韻を楽しむ至福の時だったのでしょう。邪魔してしまいました。人の恋路の邪魔するやつは、というシチュエーションですね。昆虫記者は犬に食われるか、馬に蹴られて死ぬ運命です。

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ウンモンスズメの♂♀カップル。この右手に第五福竜丸展示館があります

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ウンモンスズメ・カップルの至福の時。交尾後の余韻を楽しんでいるようです。

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上から見るとこんな感じ

 

 これが第五福竜丸展示施設。無料(これが重要)なので、是非訪れて下さい。夢の島公園は、半蔵門線京葉線新木場駅の目の前にあります。

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三角屋根の第五福竜丸展示館

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 福島の原発メルトダウン、水素爆発という世界史上最悪級の原発事故があったため、忘れ去られがちですが、第五福竜丸は戦後の日本人の被ばく事件としては最初のものでしょう。実験に使われた水爆の威力は、広島の原爆の1000倍だったと言います。改めて、原子力兵器、原発事故の恐ろしさを感じますね。

 などと社会派のコメントを吐きながら、実は蛾の撮影に夢中になっていた昆虫記者です。

 モスラは幼虫のカッコよさが印象に残っている人が多いのではないでしょうか。あれは、たぶんカイコ(蚕)がモデルですね。

 今回は蚕系のイモムシは見つかりませんでした。代わりに、フジの葉を食べるキシタバのイモムシを見つけました。結構大きくて迫力があります。顔がなかなかに怪獣的。

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フジの葉を食べるキシタバの幼虫

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キシタバの幼虫はかなり大きなイモムシです

 

 こちらはオビカレハの毛虫です。これも展示館前にいました。

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きれいな縦縞模様のオビカレハ幼虫

 

 エノキの若葉の間に枯れ葉が一枚。これも蛾です。チャハマキと言います。

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どう見ても枯れ葉に見えるチャハマキ。ハマキガの仲間です。

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接近すると蛾だと分かりますね

 

 ツマジロエダシャクはどこにでもいる蛾なので、相手にされませんが、そこそこカッコいい蛾です。

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ツマジロエダシャク

 

葛西のカニ釣りと股舐め猫とテントを張るイモムシ

 葛西臨海公園では、カニ釣りが大盛況。老いも若きも、男も女も、カニ釣りに興じておりました。

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葛西の海辺はカニ釣りで大盛況

 要領は、かつて男の子ならだれでも経験したザリガニ釣りと同じようです。棒の先にひもを付けて、紐の先に裂きイカを付けて、海辺の石垣の隙間を探ります。

 がっついカニはハサミで裂きイカをつかみ、釣り上げられてもイカを離そうとしません。

 結構たくさん釣れるようですね。ザリガニ釣りより効率がいい感じです。それに、ザリガニ釣りと比べて、服が泥だらけにならずに済んで、保護者は洗濯の手間が省けます。

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本日の収穫のカニ

 やはり、カニ釣りという遊びの性格上、親子連れが主流ですが、夢中になっているのは、子供より親の方ということがよくあります。これはザリガニ釣りでも時折見られる光景ですね。親としては、子供に負けるわけにはいきません。昔取った杵柄。親の威厳を示すのはこういう時です。

 しかし、カニ釣りはやるもので、見るものではありません。やっている人は夢中ですが、見ている方は飽きてきます。なにせ、ここのカニはちっこい。

 そろそろ虫撮りに繰り出すことにします。

 スイカズラの茎にバラのトゲのようなものが張り付いていました。昆虫記者はこれをツインピークスと呼んでいます。

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スイカズラツインピークススイカズラクチブサガの繭

 この不思議な物体は、スイカズラクチブサガという蛾の繭です。成虫の蛾は本当にどうでもいい感じのありきたりの蛾ですが、この繭はなかなか凝った作りですね。このツインピークスのテントの中に蛹が入っています。

 幼虫はスイカズラの新芽付近を食い荒らしています。新芽のあたりが、ぐしゃぐしゃと小汚くなっている中に幼虫が隠れています。

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スイカズラを食い荒らす幼虫

 

 取り出してみると、こんな幼虫です。これまたどうでもいい感じの幼虫ですね。

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スイカズラクチブサガ幼虫の全体像

 結局この蛾の取り柄は、繭だけということになります。それでも、何の取り柄もない昆虫記者よりはましです。

 

 キレイどころとしてはナナホシテントウが交尾していました。

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 こちらはベニヘリテントウ。カイガラムシの仲間を食べる益虫ですね。

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ベニヘリテントウ。小さいです。

 これもテントウムシに見えますが、テントウノミハムシというハムシです。益虫のテントウそっくりの害虫のハムシです。

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テントウそっくりの害虫、テントウノミハムシ

 テントウノミハムシは、生垣のヒイラギ、ヒイラギモクセイの大害虫です。ヒイラギの垣根がボロボロになっているのは、すべてこのハムシの被害です。こんな小さなハムシが、生垣が枯死するほどの大被害を与えるとは信じがたいですね。

 すさまじい被害をもたらすのは、成虫ではなく、幼虫です。テントウノミハムシの幼虫は、ヒイラギの葉の中に、こんなふうに潜り込んで、葉を内部から食べ進んで枯らします。

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葉の中に潜り込んで食い荒らすテントウノミハムシの幼虫。こういうのを潜葉性の幼虫と言います

 大きな幼虫は頭だけ葉の中に突っ込んで、お尻は外に出していることも多いですね。

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頭だけ葉の中に突っ込んだ幼虫

 ついでにマミジロハエトリ。正面から見ると、人間的な顔をしています。

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白い眉毛が特徴のマミジロハエトリ。ハエトリグモの仲間です。

 小さい虫ばかり見ていると、視野が狭くなるので、時々公園の風景を眺めます。鯉のぼりが泳いでいました。

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 そして、野良ネコが物欲しそうに鯉のぼりを眺めていましたが、何を思ったか、野良ネコは突然、股を舐め始めました。毛づくろいの一環のようですが、特に股舐めは気持ちがいいようで、飽きもせずいつまでも舐めていました。

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 人間だったらちょっと恥ずかしい姿勢ですが、しょせん猫ですから、恥も外聞もありません。

 

 人々は、バーベキューをしたり、海辺の広い芝生の上で、広い空を見上げたりして、くつろいでいます。

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 しかし、昆虫記者は近視眼的に茂みの中を覗き込みます。怪しい行動ですね。

 葛西臨海公園名物のアカスジキンカメムシがいました。これは越冬明けの終齢幼虫です。前から見ると、キンカメムシの片鱗の輝きが若干見受けられます。

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アカスジキンカメ幼虫。たいてい終齢幼虫で越冬します。

 後ろから見ると、大口を開けた変な笑い顔ですね。

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笑い顔の模様がアカスジキンカメ終齢幼虫の特徴

 もうすぐ赤と緑のピカピカの成虫になりますので、是非探して下さい。鳥類園の散策路に多いです。

葛西の巨大観覧車に託す巨大シャクトリムシと土瓶割りの夢

 春の葛西臨海公園。大型連休中に家族やカップルで訪れる人が多かったことでしょう。昆虫記者は、家族連れの明るい歓声が響く中、一人寂しく虫撮りをしておりました。

 葛西臨海公園と言えば、大観覧車が目玉施設の一つです。海辺の風景と、公園の緑、都会の街並みのすべてが一望できて、天気が良ければ富士山も見えるというサービス満点の乗り物なので、デートで乗れば恋が成就することでしょう。もちろん、幸薄い昆虫記者は乗ったことがありません。

 観覧車を背景に芸術的な虫写真を撮ってみました。

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巨大観覧車に託す巨大シャクトリムシの夢

 どこが芸術的なのか全く分かりませんね。左手から突き出ている棒きれのようなものは一体何なのでしょう。風景の邪魔でしかないですね。

 この棒きれはシャクトリムシです。色合いや猫耳が特徴の頭の形から、もしかすると「土瓶割り」として有名な巨大シャクトリムシのトビモンオオエダシャク幼虫ではないか、などと期待に胸を膨らませるのは、ごく少数派の虫好きの中でも、極めてまれなイモムシ好きだけでしょう。

 トビモンオオエダシャク幼虫は、最終的には全長9センチほどになるという巨大シャクトリムシですが、この時期はまだ小さくて、トビモン小エダシャクです。しかも、このサイズではトビモンかどうかさえ、不明確です。このままのサイズで蛹になって、小さな別の蛾になる可能性だってあります。さらに十中八九は、蜂などに寄生されていて、正体不明のまま死んでいきます。

 シルエットでない姿はこんな感じです。

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トビモンオオエダシャクであってほしい小エダシャク

 もっと小さいのもいました。

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 この場所では計4匹、同じシャクトリムシを確認しました。いつの日か、巨大シャクトリムシになって、土瓶を割ってほしいものです。

 「土瓶割り」とはトビモンオオエダシャク幼虫の愛称です。農家の人が野良仕事の際に、巨大シャクトリを木の枝と思って土瓶を掛けたところ、枝がグニャリと曲がって土瓶が落ち、粉々になったという逸話によるもののようです。

 全く農家の人をバカにした話ですね。農家の人は都会の人と違って、自然の知識が豊富なはず。従ってトビモンオオエダシャクのことも良く知っているので、こんな間違いは犯しません。

 農家の人に謝罪する気持ちで、もう一枚、観覧車の芸術的インスタ映え写真を撮ってみました。歩道橋の円形模様は観覧車をイメージしたものでしょうか。そこを自転車の車輪が通過することで、五輪の風景になりました。

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葛西の観覧車と歩道橋と自転車のインスタ映え写真

 たぶんまだ誰も、ここでインスタ映え写真を撮った人はいないのではないかと思います。(もしかしたらいるかも。いたらすいません)。今後ここがインスタ映えの名所になって、近隣の方々の大迷惑となっても、昆虫記者は責任を負いません。

 広い葛西臨海公園内を巡る園内周遊の機関車風バスも、名物の一つです。

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葛西の園内周遊機関車風バス

 周遊機関車をバックにトビモンオオエダシャクのインスタ映え写真を撮ってみました。こちらは誰も真似しないでしょう。

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トビモンオオエダシャクと周遊機関車のインスタ映え写真

 一匹だけ持ち帰ったトビモンオオエダシャク幼虫(希望的観測です)が少し大きくなって、猫の耳も大きくなりました。

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この猫顔を見ると、トビモンオオエダシャクの期待が高まります。

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 トビモンオオエダシャクであってほしいものです。(誰も期待してない)。

今年も懲りずにオオムラサキ飼育。東京都心の公園に雄姿を復活させたい

 今年も懲りずに、またオオムラサキツツジの種類ではありません。蝶です)の幼虫を4匹飼育しています。

 東京ではオオムラサキ(蝶です。日本の国蝶です)を目にする機会がめったになくなったので、オオムラサキオオムラサキとこれだけ連呼しても、何のことやら分からない人が多くなっていると思われます。

 知らない人のために、以前に町田市で撮った成虫の写真を載せておきます。羽が紫色で大きいからオオムラサキ。分かりやすいですね。

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樹液を吸う東京産オオムラサキ


 日本最大級のタテハ蝶で、特にメスは、「デカい」ということばがふさわしいくらい大きいです。胴体の太さも半端ではなくて、力も強く、国蝶にふさわしい風格です。

 これが以前撮ったメス。

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埼玉産オオムラサキのメス

 「あれっ、紫色じゃないよ」。そうなんです。メスは茶色なんですね。ちょっと残念な国蝶ですね。

 以前撮った越冬中の幼虫です。もちろん、こんな分かりやすい状態で越冬してはいません。

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エノキの落ち葉の中で越冬するオオムラサキ幼虫

 積もった落ち葉の中に埋もれているので、落ち葉を際限なくひっくり返さないと見つかりません。

 このこげ茶色の体のまま、春になるとエノキの幹を上って行きます。幹の色と同じなので、擬態になります。

 今年見つけた春先の幼虫。幹の途中で休憩していました。

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春先にエノキの幹を上るオオムラサキ幼虫

 そして体が緑色に変わってくると、ようやく葉に移動して、食事を開始します。緑でギザギザの体は、エノキの葉と似ていて、これまた擬態になります。都合よくできてますね。

 そして現在。我が家の鉢植えの小さなエノキにいる幼虫です。かなり太ったのもいれば、まだまだ栄養不良なのもいます。

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わが家のオオムラサキ幼虫

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こんなやせ細ったのもいます。

 我が家の鉢植えのエノキはこんなに小さな木なので、幼虫が大きくなったら、近所の空き地からエノキの葉を調達してこないといけないでしょう。

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 東京だと、町田とか八王子近辺まで行かないと、オオムラサキはみつかりません。明治神宮とか、新宿御苑とか、都心の公園にもいると嬉しいのですが、一度いなくなると、容易には戻って来ませんね。

 こうして都会では、国蝶なのにオオムラサキを「見たことがない」とか、「知らない」とかいう人が増えていくわけです。昆虫記者としては非常に悲しい現実です。

 「八王子あたりの産地から人工的に移住させればいいのに」とか思う人もいるでしょう。しかし、蝶には地域別に遺伝子の特製とかあるらしく、生態系維持の観点からは、遠く離れたところから移住させるのは良くないとされています。

◆東京都心に国蝶オオムラサキを呼び戻す秘策

 従って、都心にオオムラサキを呼び戻すためには、八王子とか町田あたりから都心までエノキの並木を作って(クヌギとか、成虫の餌となる樹液の出る木も間に挟んで)、自主的に移住を促すしかないということになります。しかも、幼虫が越冬できるよう、エノキの落ち葉がたまる場所を作る必要があります。

 これは、昆虫記者が環境大臣にでもならない限り不可能でしょう。「日本国民が自然の中で国蝶に親しめる環境を整備すべき」が、今後国会議員に立候補する際の昆虫記者の公約です。(絶対当選しない)。

 去年飼っていたオオムラサキは幼虫段階で全滅しました。今年の4匹のうち何匹か羽化したとしても、それを都心に放すことは、良くない行為とのことなので、産地まで連れて行って放すか、死ぬまで飼うか、標本にするか、苦しい選択を迫られることになります。全部オスなら(圧倒的にオスの方が数が多いです)、繁殖しないので、放してもいいような気がしますが、どうなのでしょうか。環境省に聞いてみないといけないですね。

春の津久井湖、ハムシ、カミキリ、その他編

 春の津久井湖は新緑が美しく、目に優しいですね。でもこの新緑を「美しい」ではなく、「おいしい」と感じる者たちがいます。確かにワラビとかタラの芽とか山菜はおいしいですが、クルミとか、フジとか、エゴノキとかの若葉ってどんな味がするのか気になりますね。

 たぶん人間にとっては不味いのではないかと思われます。おいしかったという報告はどこにもありませんから。

 ではまず、クルミの若葉を食べてみましょう。「って、誰がそんなもん食べるかい!」

 ということで、まずはクルミの葉が大好きなクルミハムシです。

 オスがメス(体が大きく、腹が膨れている方)に言い寄っていますね。

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クルミハムシ。オスがメスに言い寄っています

 そして、メスがクルミの葉を食べるのに夢中になっている隙に、後背に回り込んで、ちゃっかり交尾。

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巨大なメスのお尻に噛り付くように交尾するクルミハムシのオス

 高い枝先で交尾しているのもいます。交尾していると言うよりは、巨大な饅頭に噛り付いている感じですね。スリムなスタイルがいいなんて言うオスはクルミハムシの世界にはいないのでしょう。豊満でポチャポチャで、お尻の大きなメスが大人気です。

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風船か、饅頭のように見えるのはクルミハムシのメスの巨大なお尻です

 一方、人間たちは、新緑を目で楽しみます。桜の小道を上っていくと、こんな素敵な展望台があります。

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 こちらはちょっときつい坂の近道。ここにクルミハムシがたくさんいます。

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 続いてはフジです。フジと言えばフジハムシ。美しい紫色のフジの花と絶妙のコントラストを成すオレンジ色の成虫ですね。

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フジハムシの成虫

 卵もオレンジがかったおいしそうな色です。

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フジハムシの卵

 でも幼虫は、全く美しくありません。ハムシの幼虫は概してあまり美しくはありません。そして、基本的に嫌われ者の害虫です。

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フジハムシの幼虫

 津久井湖城山公園にはバーベキュー場もあります。津久井湖観光センターの裏手ですね。その近くのフジが、フジハムシの餌場になっていました。

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 花の苑地も散歩するにはいいところです。八重桜が散って、ピンクの絨毯になっていました。

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津久井湖城山公園、花の苑地

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 こちらはシデの木にいたハムシの幼虫。シデなので、ズグロキハムシあたりかと思います。

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 エゴノキの葉を食べるのはエゴツルクビオトシブミ。メスが葉を巻いて、子供のための揺りかご、揺籃を作っています。エゴツルクビオトシブミの揺籃は、枝にぶら下がったままで、地面には落ちないので、落とし文(オトシブミ)にはなりません。ぶら下がり文です。この中心部に卵が産みつけられています。

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エゴツルクビオトシブミの揺籃、ほぼ完成です


 これはクロボシツツハムシ。色々な葉を食べます。

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クロボシツツハムシ

 ついでにカミキリです。まだ数は少ないですが、チラホラと材木置き場などに姿を見せはじめました。

 カラカネハナカミキリ。金属光沢が美しいカミキリですが、材木の陰にいたので、色合いは今一つです。

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金属光沢が美しいカラカネハナカミキリ

 杉の材があれば必ずいるヒメスギカミキリ。

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杉の材があるところ、ほぼ必ず現れるヒメスギカミキリ

 トラカミキリ系も出始めました。たぶんキンケトラカミキリですね。

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たぶんキンケトラカミキリ。青葉の上に鮮やかな虎模様

 あとは雑多な虫。

 太い髭が自慢のヒゲブトハナムグリ。小さい上にブンブン飛び回るので、撮りにくい虫です。春だけの虫ですので、撮りたい人(そんなのいない?)は急いだ方がいいです。芝生に雑草が混じった日当たりのいいところに多くいます。津久井湖城山公園では子供たちがワイワイ遊んでいる四季の広場付近にいます。

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太い髭が自慢のヒゲブトハナムグリ。普通の髭のメスにはめったに出会えません

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 ヒラタアオコガネもほぼ春限定のコガネムシです。

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春限定のヒラタアオコガネ

 ツマキアオジョウカイモドキは尻先の黄色が可愛いですが、小さい虫なので尻先を撮るのは大変。

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お尻の先がアクセントのツマキアオジョウカイモドキ

 ナナフシ(正式名はなぜかナナフシモドキです。全然もどきではなく、本筋のナナフシなのに)は孵化したばかりの今頃が、体長に比べて一番足が長い感じで、写真写りがいいです。6本足のキリンという感じですね。

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