虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

夏の名残、今年最後のカブトムシと涙の別れ

〇夏の名残、今年最後のカブトムシと涙の別れ

 ああ、今年も夏が終わってしまいました。カブトムシとも最後のお別れです。涙、涙。なんて、今頃何を寝ぼけたことを言っているのかとお思いでしょう。もはや9月下旬、季節は秋です。

 

 今年最後のカブトムシとの出会いの場所は、横浜市の舞岡公園でした。8月31日のことでした。まさに小・中学生の夏休みの終わり。宿題追い込みの時期です。森にはもはや、カブトを探す子供たちの姿はありません。よくぞここまで生き延びたものです。でももうすぐ、その命も燃え尽きます。毎年のことながら、夏の終わりは悲しいですね。小学生の頃から、いや虫捕りを始めた幼稚園児の頃から、ずっとそうでした。

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今年最後のカブトムシの記録は8月31日

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夏休みが終わってしまう悲しみを背負ったカブトムシ

 舞岡公園のセミ世界は、9月に入ると、圧倒的にツクツクボウシの勢力圏になります。アブラゼミもミンミンゼミも、死にそうなガラガラ声になる中、ツクツクボーシ、ツクツクボーシというあの独特の歌声ばかりが元気に響き渡ります。

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ツクツクボウシ。下がオス、上がメスです

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新鮮なツクツクボウシは、銀色の粉をふりかけたような色合いが特徴

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都心では梅雨時から鳴き始めるニイニイゼミ。8月31日まで生き残っているのは貴重

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ニイニイの次に出てくるのはアブラゼミとミンミンゼミ

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セミの鳴きまね芸の定番はこのミンミンとツクツクですね

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夕刻に悲し気に鳴くヒグラシは、昼間は暗く涼しい杉林などに潜んでいます

 夏の終わりのコナラの森の中には、まだ青いドングリが枝ごとたくさん落ちています。台風被害?。いえいえ、これはハイイロチョッキリというゾウムシの仲間の仕業です。

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青いコナラドングリが小枝ごと道にたくさん落ちていたら、それはハイイロチョッキリの仕業

 青いドングリの帽子の部分を良く見ると、チョッキリが卵を産み付けた跡があります。蛆虫みたいな幼虫がドングリの中で育ちます。栗の中から出てくるあの栗虫とよく似た幼虫です。

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青いドングリの帽子部分にはハイイロチョッキリの産卵痕があります

 どんな幼虫か、気になりますね。「全然気にならないし、見たくもない」という意見も多いでしょうか、やはり昆虫記者としては確認する必要があります。持ち帰ったドングリを数週間後に割ってみると、中から出てきたのは、やはり栗虫と同じような蛆虫風の幼虫でした。やっぱり、見ない方が良かったですね。

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ドングリを割ってみると中には蛆虫風のハイイロチョッキリの幼虫

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セミが死に絶えた後の昆虫騒音公害の主役はアオマツムシになります

 そしてやがて、ツクツクボウシの声も途絶えると、東京近郊の都市公園は、リーリーとやかましいアオマツムシの声に占拠されます。アオマツムシはセミ以上にうるさいと感じる時もありますね。その正体はこんな小さな虫です。

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アオマツムシです。体は小さいですが、鳴き声は騒音公害レベル