たまには童心に戻ってカブト、クワガタ探し。「県境を越えてのお出かけはお控えください」という新型コロナの緊急事態宣言下、都心の新宿区、渋谷区でも、大量にカブト、クワガタが見られるって、奇跡のような幸せですよね。ビルの大海の中の、小さな緑の島のような存在の明治神宮、新宿御苑ですが、江戸時代、明治時代からの森が大切に継承されているので、カブト虫、クワガタ虫も生き延び、繁栄を極めているというわけです。
郊外の緑地だと、虫取り少年たちの餌食になることも多いですが、明治神宮や新宿御苑は生物の採集が禁止されている上、あちこちに落ち葉や朽木が積まれていて、カブクワの繁殖に絶好の環境なので、毎年わんさとカブクワが発生するのです。
それにしても、大人になってもなお、カブクワを見ると妙に興奮するのはなぜでしょう。精神年齢の低さ、思考回路の単純さなど色々と昆虫記者の特性もかかわっているでしょうが、カブクワには何か、神秘的、霊的、神がかり的な力を感じずにはいられません。
そして、奴らが森に姿を見せ始めると、蝶、カミキリ虫、芋虫などなど、他の虫たちが目に入らなくなるのはなぜでしょう。それは昆虫界の王者に対する畏敬の念と言ってもいいでしょう(大げさ)。
ここからは1週間前の明治神宮の状況です。時期が早すぎたのか、カブクワはやや不作でした。
そして、奴らカブクワが樹液酒場を支配するようになると、日本の虫の最盛期はもう終わりに近づいています。虫の一番の季節は春から初夏。盛夏、晩夏になると、見られる種類はかなり減ってくるのです。つまりカブクワの盛りは、花火大会でのフィナーレの尺玉一斉爆発みたいなものです(これも大げさ)。
明治神宮の夕刻にはヒグラシの悲しげな声が響き、新宿御苑の昼下がりには、夏の終わりが近いことを告げるツクツクボウシの奇妙な節回しが聞かれます。