虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

都会の園芸家の大敵ハバチは虫好きのアイドル。可愛ければ許してもらえる?

 都会の園芸家の大敵と言えば、イモムシ、毛虫が真っ先に思い浮かびますね。イモムシ、毛虫と言えば、たいていの人が思い浮かべるのは、蝶や蛾の幼虫です。しかし、植物に甚大な被害を及ぼすイモムシとして忘れてならないのがハバチの幼虫です。何と、芋虫を駆除したり、授粉を助けたり、益虫の代表のように思われている蜂の仲間なに、大害虫なのです。

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シモツケマルハバチの幼虫(左)と産卵の様子

 特に被害がひどいのはバラですね。チュウレンジバチ、アカスジチュウレンジバチというのが、バラの茎を切り裂くように産卵し、孵化した幼虫はバラの葉を見事にボロボロにします。

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バラの茎を切り裂いて産卵するアカスジチュウレンジバチ。背中の赤い部分が目印

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こちらは背中が真っ黒なチュウレンジバチの産卵

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集団でバラを食害するチュウレンジバチの仲間の幼虫。バラの葉がボロボロになっていたら大抵こいつらの仕業

 園芸家にとっては憎きチュウレンジバチの仲間の幼虫ですが、虫好きは結構こいつらのことも好きだったりします。幼虫の群れを驚かせると、一斉にお尻を突き上げて、威嚇ポーズを取るのですが、これが結構楽しいのです。

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お尻を突き上げて威嚇ポーズをとるチュウレンジバチ系の幼虫

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チュウレンジバチが群れていたのはこんな場所。このバラが枯れたら園芸家は嘆くでしょう。

 そして最近のお気に入り(やはり園芸家にとっては八つ裂きにしたい大敵です)は、シモツケマルハバチの幼虫です。粉砂糖をまぶしたような、スゥイートでキュートで愛らしい芋虫なのです。幼虫は春にしか見られないようで、チャンスが限られるので、見逃さないようにしましょう。しかし、こいつらの被害も結構甚大で、銀座の小学校のシモツケ(花は非常に可憐です)は、一時期無残な姿になっていました。でも、シモツケマルハバチは年1回の発生(年1化)なので、やがてシモツケは復活します。

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可憐なシモツケの花に、さらに可憐なシモツケマルハバチの幼虫。

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花を食べ尽くして、葉を攻撃し始めるシモツケマルハバチの幼虫集団

 ルリチュウレンジバチというのは、ツツジの害虫として有名です。このハバチは、ツツジの葉の周辺部に産卵するのですが、その産卵痕がなかなかに芸術的なので見逃さないように(もちろんルリチュウレンジも園芸家にとっては爆殺したいほど憎い相手です)。

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ルリチュウレンジバチの産卵

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葉の周囲を芸術的に縁取るルリチュウレンジバチの産卵痕

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ツツジの葉を食べ始めた孵化したばかりのルリチュウレンジバチ幼虫

 このほかのハバチも、そこそこの害虫が多いですが、見た目は結構かわいらしいのが多くて、イモムシ好きの女子などには結構人気があります。

 

 

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カエデにいるハバチの幼虫。ヨウロウヒラクチハバチと言うらしい。

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名前調べてません。とぐろを巻いたうんちのようですが、それでもかわいい。

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同じとぐろ巻きでも、こちらはソフトクリーム風

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ギシギシの葉裏にいつも山ほどいるハグロハバチの幼虫も、捨てがたい魅力がある。

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モコモコの毛糸にくるまれたようなクルミマルハバチの幼虫

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鳥の糞に擬態していると思われるオウトウナメクジハバチの幼虫

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同じナメクジハバチ系でも、水まんじゅうのように涼し気なのはケヤキナメクジハバチの幼虫

 こういう可愛い姿を見ると、園芸家の人々もきっと、ハバチたちの悪行を許したい気持ちになることでしょう…なんてことはないな、きっと。