虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

今冬も越冬中のタテジマカミキリ、1匹発見。隠れ身の術、敗れたり。「勝った!」

 今冬も千葉市の公園のカクレミノの木で、越冬中のタテジマ化キリを1匹発見。「カクレミノ」の木を「隠れ蓑」にする「隠れ身の」術、敗れたり。

 「勝った!」と叫びたいところですが、必死で1時間ほど探して、見つけたのはたったの1匹。「負けた」に近い勝利ですね。

今冬のタテジマカミキリの越冬姿。明るくすると正体バレバレですね。

 

暗い状態では特に擬態を見破りにくい。

今冬いたのはこんな所。タテジマカミキリが小さく写っているのですが、どこにいるか分かるでしょうか。

 今年はもう一カ所、八王子市でもタテジマカミキリがいる場所を見つけたので、来年からは勝率が少し上がるかもしれません。

 越冬する位置、体勢とかが分かってくると、だいぶ有利になりますね。

昨冬に越冬していた場所を夏に撮影。この木にタテジマカミキリがいる証拠ですね。

こういう幼虫の食痕もタテジマカミキリがいる証拠です。

 

晩秋の可愛い蛾「ミノウスバ」。庭にマサキ、マユミ、ニシキギを植えている人はイモムシ被害に要注意

 11月後半の新治市民の森。虫が減って寂しい季節ですが、ミノウスバは見頃。マユミの木で何組か交尾に精を出していました。

 胴体を覆う黄色い毛(蓑=ミノ)と半透明の翅(ウスバ)を持った、ちょっとおしゃれで可愛い蛾ですね。

交尾中のミノウスバ。体の下にはすでに卵がびっしり。

ミノウスバのメスの毛はまさに蓑。お尻の毛束は、卵を覆うのに使うのだと思われます。

ミノウスバのオス。触覚が立派。

 でも大量の卵を産み付けられた枝を放っておくと、翌春にうじゃうじゃ幼虫が出てきて、庭木、生垣のマサキ、マユミ、ニシキギなどが丸坊主にされてしまうので、植栽を管理する人にとっては大問題です。卵のうちに駆除してしまうのが得策ですが、ミノウスバの産卵を観察して喜ぶ虫好きは、どこに卵があるのか、教えてあげようなどとは全然思いません。

マユミをボロボロにするミノウスバの幼虫集団。

 ミノウスバ以外では、しぶとく生き残っていたヒメアカタテハツマグロヒョウモンオオカマキリキボシカミキリなどが見られました。温暖化のせいなのか、夏、秋の虫が長生きするようになりましたね。

センダングサの花にヒメアカタテハ

ツマグロヒョウモン

瀕死のキボシカミキリ

瀕死のオオカマキリとその卵

たぶんモンキアゲハの幼虫

越冬態勢に入ったツヤアオカメムシ

 

カブトムシの幼虫探し。堆肥の中なら、畑に撒かれる前の冬に探さないと手遅れに。

 カブトムシの幼虫探しの季節がやってきました。田園地帯にお住まいの方なら、近所の農家で堆肥を使っている所に頼むと、堆肥の中に潜っている巨大な幼虫をたくさんゲットできます。近くにクヌギ、コナラなど樹液の出る木の多い森があれば、堆肥の中には、ほぼ確実に大量の幼虫がいます。

 堆肥は作物の作付け前に畑に撒かれてしまうので、幼虫を救出するチャンスはその前の冬ですね。堆肥とともに畑に撒かれた幼虫の大半は、畑を耕す過程で死んでしまうと思うので、堆肥の中の幼虫を持ち帰ると、カブトの命の恩人になれるかも。

カブトムシの幼虫は11月には既に、こんなに大きくなっている。

堆肥の中からゴロゴロ出てくるカブトの巨大な幼虫。左の小さいコガネムシの幼虫はおまけ。

 今頃の季節になると、幼虫がいる堆肥の上には、幼虫の糞が積みあがっているはず。逆に言えば、今頃の季節に糞が見当たらなければ、そこには幼虫がいないと思われます。

 森の中の伐採木、朽木の下でも、カブトの幼虫が良く見つかります。この場合は、伐採木をひっくり返すと、すぐ下に幼虫がいるので、土を掘り返す手間が不要になりますが、幼虫の数は1つの材の下に1~2匹と少なくなりますね。

堆肥の表面にこんな糞がたくさん見られれば、その下には確実にカブトの幼虫がいる。

こんな小さな伐採木の下にもカブトの幼虫がいることがある。

前の写真の伐採木の下にいたカブトムシの幼虫。

同じ伐採木の下では、コクワガタが越冬していた。


 カブトの幼虫は大食漢なので、多く飼い過ぎないよう注意しましょう。中型のプラケースなら2匹、大型のケースなら4匹ぐらいがいいかも。もっと多く飼うと、あっという間にケース内が糞だらけになって、生育が悪くなります。

 餌はホームセンターで腐葉土を調達すればいいですが、最近は腐葉土の値段が高くなっているので、コスト面からも多く飼い過ぎないのが賢明です。

 

カレハガの見どころは抹茶ミルク飴のような卵と、枯葉擬態の成虫。幼虫は嫌な毒毛虫。

 今年はカレハガとその黄色版のようなホシカレハを羽化させるという偉業?を成し遂げていたのにブログへのアップを忘れていたようです。

 今更ながらですが、まずはカレハガをご紹介。何と言ってもカレハガの見どころは卵ですね。白地に緑色の渦巻き模様の卵は、抹茶を練り込んだミルク飴のような芸術作品でした。

カレハガの卵はグルグル模様。抹茶を練り込んだミルク飴のように見える。

 ずっと以前からこの卵を見たいと願っていたのですが、5月下旬に千葉市の公園でようやく念願がかないました。背の低い桃の木についていたのを、他の虫を探していた際に偶然見つけました。

 早速持ち帰って桜の葉で飼育することに。ところが、たくさんの卵のうち孵化したのは2つだけ。2匹の幼虫のうち、1匹はすぐに行方不明になり、結局1匹だけにすべての願いを託すことに。

 幼虫は、一般人なら誰もが嫌悪感を抱くような、毛むくじゃらの毒毛虫です。一部の虫好き猛者の中には、「カレハガの幼虫の毒針毛はこけおどしで、ほとんど実害がない」として、触って見せる人もいますが、私はそんな恐ろしいことはしません。

カレハガの幼虫は毛むくじゃらの毒毛虫。

黒い部分にあるという毒針毛には触らないのが無難。

カレハガ幼虫の正面顔。

 そして、このたった1匹の幼虫が、7月下旬に羽化までこぎつけました。毒毛虫をいじめたりせず、愛情を込めて育てたおかげですね。

 この成虫は、まさにカレハガの名にふさわしい、見事な枯葉擬態を披露してくれます。毒毛虫を敬遠せず、皆様も是非飼育してみてください。

カレハガ成虫。翅の周囲のギザギザはまさに枯葉。

翅を広げると全然擬態になっていないカレハガ成虫。

カレハガ成虫は、野外ではこんな感じ。

 卵を見つけるのは難しいですが、冬にサクラなどの幹に張り付いた越冬幼虫を見つけるのは比較的容易だと、ある虫好きの猛者の方が教えてくれたので、獲物が少なくなる冬の虫探しのテーマの一つにしてもいいでしょう。

 

コミスジ幼虫が冬支度。クズの葉の揺りかごで越冬準備?

 昨日の多摩丘陵。コミスジの幼虫がクズの葉先で作った揺りかごの中に隠れていました。

 遠目には、クズの葉の先の方が枯れて、千切れかけているようにしか見えませんね。しかし、この状態は、コミスジの幼虫が関係している気配濃厚で、非常に怪しい。

 近づいてみると、やっぱり。葉先が枯れて丸まった中に、コミスジの幼虫が隠れていました。この段階でも、「えっ、どこにいるの?」と戸惑う人もいるでしょう。

もしかしてコミスジの幼虫の隠れ家か。

葉先の枯れた部分の中に幼虫の姿?

枯葉部分を広げてみると、コミスジ幼虫の姿があらわに。

 コミスジの幼虫は、色合い、形状ともに、葉の食べ残し部分にそっくりなので、この擬態を知らない人には全く見つかりません。でも、逆にこの擬態を知っている人には、特徴的な食べ残しが存在証明になって、すぐに見つかってしまいますね。

 特に小さい幼虫は、ゴミくずの中にゴミくずのような幼虫が隠れている状況のことが良くあります。

ゴミの中にゴミのようなコミスジ幼虫。これは相当高度な擬態。

 この日見つけた幼虫は、かなり大きかったので、このまま越冬するかもしれません。コミスジは幼虫越冬で、一度越冬態勢に入ると、その後は何も食べずに冬を過ごし、春に蛹化、羽化します。

 でも今年は秋になっても暖かいので、晩秋に蛹化、羽化する可能性もありそうです。地球温暖化と異常気象による生活サイクルの変化は、昆虫界でも大問題なのかも。

お馴染みのコミスジ成虫。

 

アシベニカギバとクロスジカギバ、見分け方は?

 アシベニカギバとクロスジカギバは、もしかしたら同じ種なんじゃないかと思うくらい紛らわしいのがいます。

 

 成虫はまだ、何とか見分けがつきそうです。絶対にアシベニカギバだと言い切れるのは、黄色い紋が前翅、後翅の半分くらいに広がっているやつですね。

黄色い紋が翅の半分くらいを占めていたらアシベニカギバ。

野外で撮ったアシベニカギバ成虫。

アシベニというほど脚は赤くないかも。

裏側から見たアシベニカギバ。


 でも、この黄色い紋が全くないアシベニカギバの成虫もいるようです(昆虫記者はそういうのは全部クロスジカギバだと思い込んでいました)。

 

 次はクロスジカギバ(たぶん)の成虫です。前翅から後翅まで中央を貫くように走る黒い線がはっきりしていますね。

クロスジカギバの成虫

裏側からみたクロスジカギバ

クロスジカギバでも、脚が結構赤いのもいるので、それだけでは見分けは難しい。

 アシベニが脚が赤いという説明も、あちこちで見かけますが、これは決め手にはなりそうにありません。私が見た中には、アシベニよりも脚が赤い感じのクロスジカギバもいました。

 

 そして幼虫はもっと分かりにくいです。背中の突起の形状が違うという説明がいくつかありましたが、それほどはっきり違うわけでもない感じです。

 

 幼虫はアシベニもクロスジも、ゴマギ、ガマズミなどにいます(葉の表にいるので見つけやすい)。終齢幼虫の中には、全体が茶色のと、緑と茶のツートンカラーのがいますが、緑と茶色のは、どうやらクロスジカギバだけのようです(絶対と言い切れるかどうかは不明)。しかし、クロスジの幼虫は最後まで茶色のも多いので、茶色の幼虫はどちらなのか、ほとんど分かりません。

たぶんアシベニカギバの幼虫(これが1枚目の成虫になったと思われます)

アシベニカギバは葉を巻いた中で蛹になる。

緑と茶色のツートンカラーの幼虫は、ほぼ確実にクロスジカギバになるらしい。

クロスジカギバの前蛹。のちにクロスジカギバ成虫になった。


 結局のところ、茶色の幼虫がどちらなのかは、飼育して成虫にしないと分からないということ。でも、幼虫、成虫ともさして美しくもないこんな蛾を、幼虫から飼育して「アシベニかクロスジか」ドキドキしながら見守る人は、いないかもしれませんね。

「日本百名虫」は見応えと読み応えの二刀流の貴重な虫の本

 「日本百名虫」を献本していただきました。写真の見応えがあって、読み応えもある虫の本は数少ないですが、「日本百名虫」(坂爪慎吾氏著、文春文庫)はそんな数少ない虫の本の一つだと思います。

 写真の美しさは特筆もの。なにせ有名な昆虫写真家による虫写真がずらり100匹並んでいるのですから。一番多くの写真を提供しているのは、昆虫記者の虫撮り仲間の「森上信夫」氏。写真が素晴らしいのも、なるほどとうなずけます。

献本していただいた「日本百名虫」は2冊セットで読み応えあり。

 カブトムシ、オオムラサキといった定番の甲虫、蝶から、アオマダラタマムシ、サツマニシキといった憧れの超美麗種、オオチャイロハナムグリやオオトラフカミキリのような希少種まで、まさに昆虫各界を代表する100種が集合。

 昆虫研究の歴史から、採集のコツや苦労話、筆者の昆虫への思い入れまで、虫に絡む話題は多岐にわたり、秋の夜長に読みふけるのにもってこいの読み物です。

 昆虫の多様な分類全般にわたって、代表的な種、特徴ある種、美しい種、歴史的な種などが網羅されており、「あっ、この虫捕まえたことある」とか「いつかは絶対に見つけたい」とかいう顔ぶれに出会えるでしょう。

身近な美麗虫アカスジキンカメムシのページ(虫の写真は森上氏撮影のもの)。

憧れの美麗虫、アオマダラタマムシのページ(虫の写真は森上氏撮影のもの)。

 この本をきっかけに、自分なりの名虫100選をつくってみるのも面白いかもしれません。自分のお気に入り100種とか、自分の地域の100種とか、特定のマイフィールドの100種とかがあってもいいでしょう。