虫好きにとって、図鑑は必需品。特にネット上の無料の図鑑は本当にありがたい。いくら感謝しても、感謝し切れないですね。それに比べて、虫記者のブログは…。
少しは役に立ちたくて、このジャンルの書庫を始めたのですが、面倒くささが先に立って、全然進みません。やっぱり偉い、ネットの虫図鑑を作っている人は本当に偉い。爪のアカでも煎じて飲むべきですね。
と、いうことで、ちょっとだけ爪のアカを煎じて、ツツジの虫図鑑です。ツツジの生垣なんて、どこにでもあるので、意外に見過ごしていますよね。
ツツジの虫たちは人気が今一つですが、虫記者的には、ツツジトゲムネサルゾウムシが一押しです。
これは今年4月17日に京都で撮った交尾姿。別に京都でなくとも、いいんです。東京都内でも、北の丸公園のツツジとかにもいっぱいいます。ただ、時期が割と短いので、見逃している人が多いかもしれませんね。
ツツジトゲムネサルゾウムシの活躍場所は、あのベタベタしたツツジのつぼみの上。ここで食事をし、交尾をし、産卵するようです。なので、ツツジの花が咲く前、3月末から4月中が見ごろということになります。
蠅取り紙のようにベタベタしたつぼみの上でも平気で歩ける特別な足を持っているんですね。
トゲムネの名の由来は、小楯板の上を覆う胸部の小さなトゲ。虫メガネがないと分かりません。
次にお勧めなのが、ベニモンアオリンガ。都会にもいます。銀座や江東区内の道端にもいました。今年は葛西臨海公園で見かけました。年に何回か発生するので、春から秋まで楽しめますね。
頬紅をさした乙女のような姿。虫好きでなくとも、つい見とれてしまいますね。なんて、そんなことないか。
幼虫は全然可愛くもなく、ツツジの新芽、花芽を食害するらしいので、花を愛でる一般の善良な人々にとっては、悪魔のような存在です。
しかも、この幼虫を大事に育てても、必ずピンクの頬紅が見られるというわけではありません。無紋型のただの黄色の蛾になったりしたら、ムラムラと怒りがわいてくることでしょう。
続いては、ツツジコブハムシ、別名ツツジムシクソハムシです。これこそ、本当にどこにでもいます。ツツジやサツキの長い生垣があれば、ほぼ確実に生息しています。ですが、あまりにも小さく、その名の通り、虫のクソ、芋虫の糞そっくりなので、一般人の目にとまることはありません。
「何の写真撮ってるんですか」などと、善良な市民に問われても、正直に、「この虫のクソみたいなものです」などと答えてはいけません。正気を疑われるだけです。
ツツジムシクソハムシは、幼虫も見ごたえがあります。見ごたえと言うには、あまりにも小さいのですが、とんがり帽子のような家を背負った姿は、メルヘンの世界です。ところが、この家は、自分の糞で作ったものなのです。メルヘンの世界は一気にゲゲゲーな世界に変わりますね。
そしてルリチュウレンジ。瑠璃は瑠璃色。ウレンジあたりは中国語で花娘子と解説している資料もあり、どんな素敵な虫かと期待が膨らむわけですが、実はただの目立たないハバチです。
問題はチュのあたりらしいです。このあたりに、掘ったり穴をあけたりという意味があって、園芸家にとって、いやらしい害虫であることがうかがわれます。
しかし、このルリチュウレンジには、素晴らしい技があります。ツツジの葉のへりに沿って、整然と卵を埋め込んでいくのです。
産卵中のルリチュウレンジ。
産卵直後の葉。
しばらくすると産卵痕が、葉を縁取るきれいな模様になります。
そして幼虫が出てきます。大量発生すると、ツツジは無残な姿になります。
ツツジの虫で、一番の嫌われ者は恐らく、ツツジグンバイでしょう。ツツジの葉の表面が、砂埃をかぶったような生気のない姿になっていたら、葉裏には、ツツジグンバイの幼虫がびっしりと張り付いている可能性大です。
あまり見たくない系統の虫ですね。でも成虫は、他の多くのグンバイと同様に、妖精のような姿です。頭の上の網目模様のドームが見事ですね。
このほかに、ツツジには雑食のゾウムシも色々います。実はツツジ専門の虫よりも、こっちの方が圧倒的に多いです。雑草のような生命力の強いやつらということでしょう。
これは一番多いゾウムシ。たぶんツノヒゲボソゾウムシというやつです。
名前にあるツノはどこにあるかというと、たぶんこれ。口の左右が尖っています。顕微鏡が必要なサイズですね。
丸っこいスグリゾウムシも、ツツジでよく見かけますね。
さらに、つぼみの時期には、ベトベトのツツジ・トラップに捕獲された小さな虫たちの地獄絵を見ることができます。
たぶんツツジは、美しい花をこうして害虫から守っているのでしょう。しかし、捕まっているクモガタテントウは益虫なんですが。
美しい花を眺めるついでに、小さな虫にも愛を注いでやっていただけるとありがたいです。でも、みんな害虫ですから、あまり愛されないだろうなと思います。