もう初夏だと言うのに、今頃イチモンジチョウの越冬幼虫の話です。単に怠けてアップし忘れていたのです。そしてあまりにも地味で目立たない越冬姿なので、時機を逸するとアップする気力が失せてしまったのでした。でも先日、昆虫写真家の森上信夫さんとご一緒した近場の虫撮りで、イチモンジチョウの終齢幼虫に出会ったので、この機会を逃すと、もはや永遠にアップできないと思い、意を決して(と言うほどではないですが)アップすることに。
まずは、越冬のための家づくりです。食草のスイカズラ(忍冬)の葉に切れ込みを入れて、下の方を筒状に巻いて、その中で寒さをしのぎながら越冬します。
これ見つけるの結構大変なんです。何年も探していて(バカですね)昨年11月に多摩丘陵でやっと見つけました。イチモンジチョウは珍しい蝶でも何でもないし、越冬幼虫は超地味だし、こんなの探している人はよほどの暇人ですね。
忍冬の葉を巻いた中で、冬を忍ぶというのは、俳句のようで風情がありますね。忍冬というのはスイカカズラから作る生薬の名でもあるようです。ちなみにスイカズラの名は、花を下から吸うとおいしい蜜が味わえるからとか。さらにちなみに、英語名のハニーサックル(honeysuckle)もたぶん、蜜を吸うという同じような意味から来ているのでしょう。こういう知識を振りかざす「うんちくオヤジ」は、誰からも好かれません。
越冬態勢の幼虫がなかなか見つからないのは、スイカズラが多すぎることが一因でしょう。これは超普通種のヤマトシジミの幼虫を、野原のカタバミで見つけるのが難しいのと一緒ですね(と言っても誰からも共感を得られないのは当然。誰もヤマトシジミの幼虫を探さないからです)。
何はともあれ、ついに念願の(バカですね)イチモンジチョウの越冬態勢の幼虫を見つけたのでした。
しかし、ここから越冬用の家(越冬巣などと呼ばれます)を完成させるまでは、相当な時間がかかりそう。日も暮れかけてきていたので、寒空の下で観察を続けるなど、とてもできません。
しかし何と、周辺を探すと、都合のいいことに、すでに完成した越冬巣があったのです。何という幸運。虫撮りの先々で神社があれば必ずお参りして、お賽銭を入れてきた(いつも5円か10円、ときどきけちって1円)信心が、こういう時に報われるのです。
筒状の越冬巣の中を覗くと、完全に越冬態勢に入ったイチモンジチョウの幼虫がいました。
これだけではあまりにも地味すぎるので、成長した幼虫、蛹、成虫の姿も載せておきます。ハリセンボンのような顔の幼虫、デビルマンのような蛹は、結構見ごたえがありますよ。
若齢幼虫の独特の食痕や糞塔作り、羽化の様子は過去記事をご覧ください。