先日、東京のとある桜並木を歩いてきました。花見の季節でもないのに、なぜ桜並木?。それはクビアカツヤカミキリの被害を調査するためです。
虫好きとしては害虫にも愛を注ぎたいのですが、日本の春を彩る桜並木が大打撃を受けているとなると、昆虫愛などと言っていられない感じです。
桜を愛でる日本では、クビアカツヤカミキリへの警戒感、敵意は並大抵ではありません。クビアカを見つけたら即刻押しつぶす、踏みつぶすことが推奨されており、飼育はもちろん、移動も禁止されているようです。
今回訪れた桜並木は、クビアカによる深刻な被害が報告されている場所なので、到着後ほどなくして成虫を見つけました。
もちろん瞬殺しました…と報告したいところですが、研究者(誰が?)としては、まずは生態写真を撮って、駆除に役立つ情報を集めたいところです。
そんな甘い考えで数カット写真を撮ったところで、クビアカは「ブブーン」と飛び去ってしまいました。クビアカは動きが敏捷で、飛翔力もかなりのもののようです。
悠長に写真など撮っている場合ではなかったのです。捕殺、抹殺、瞬殺です。でも考えてみれば、クビアカは日本の桜並木の破壊を意図して来日したわけではありません。世界貿易が活発になる中で、木材や梱包材に食い込んでいた幼虫が日本に入り込んだようです。
たぶん誰かに捕殺されたクビアカツヤカミキリ。
これもクビアカの死骸。傷がないので自然死したものかもしれない;
桜の木の根元にたまったフラス(桜に食い込んだクビアカの幼虫が出す糞と木屑の混合物)。根元を集中的に攻撃されている木が多かった。そんな木は数年で枯死するかもしれない。
クビアカを封じ込めるため金網で覆われた桜の木。
恐らく世界一桜が多く、何キロも続く桜並木が各地で名所になっている日本は、はるばる海外からやってきたクビアカにとって天国のように思えたことでしょう。
しかし、だからと言ってクビアカに同情はできません。昆虫記者も今後は涙をしのんで、クビアカを瞬殺しようと思います。外来種ってある意味かわいそうな存在ですね。