フレーザーズヒルのジュリアウ滝へのショートトリップでタクシー運転手を務めたのは、フレーザー在住のサミー氏。この村でタクシーを呼ぼうとすれば、ほぼ確実にサミー氏がやってきます。
フレーザー周辺の情報ならば、サミーにおまかせです。そこで、「アカエリトリバネアゲハ」が山ほどいる場所はないかとサミー氏を尋問。すると、あっさりと、秘密情報を漏らしたのでありました。
その場所は、フレーザーの山を下ってすぐのケーリング温泉。やはり温泉なのです。アカエリトリバネアゲハの♂は、たいていミネラル豊富な温泉地の河原に群れています。
サミー氏のタクシーに揺られながら、ケーリングとはどんな絶景の温泉地なのだろうと、想像をめぐらせます。
ケーリング温泉の標識が出てきました。
しかし、どうも変。目的地が近づいてきたようですが、周辺はあまり自然が豊かとは言えない、田舎の集落のまま。
そしてケーリング温泉に到着。「さあ着いたぞ」とサミー氏。「え、えっ、何これ。ただの田舎町の用水路じゃないの」と心の中で絶叫する虫記者。
コンクリートの護岸。あまりきれいとは言えない水。地元の村の子供たちが、数人水遊びをしています。
貯水槽のようなところに、子供たちが入っています。正面の看板には、中国語らしき文字で、「ケーリング熱水湖 歓迎光臨」、つまり「ケーリング温泉にようこそいらっしゃいませ」と書いてあります。
そうです。これが温泉なのです。東南アジアの熱帯の温泉は、情緒豊かな日本の温泉地とは全くの別物です。
こんなところにラジャ・ブルックがいるはずが…。ところが、いるのです。巨大な蝶が、緑の鱗粉を輝かせ、あちこちを飛び回っています。特に蝶の多い方向へ歩いていってみると、地面を掘り下げたゴミ焼き場のようなところにたどり着きました
まさかこんなところに…。中を覗き込むと、ドッヒャー。アカエリトリバネアゲハが群れているではありませんか。
きれいな蝶は、いつもきれいな花や、清流のほとりにいるとは限りません。これまでの経験から言うと、特に南国では、トイレの周辺とか、ゴミ捨て場とか、あまり美しくないところに集まっていることが多いのです。キャンプのゴミを燃やした後で、水をぶっかけたところなんてのは、穴場です。
確かにラジャ・ブルックはたくさんいました。しかし、絵的にあまりにも美しくないのです。美の探求者たる虫記者としては、これでは満足できません。