キュランダ高原列車のバロンフォールズ駅は、たった10分間の記念撮影停車だけで終わってはもったいないロケーションです。などと考えるの極めて少数派。その中でも、虫撮りのために再訪しようなどと考える人は、さらに少数派です。
大雨の後とかでないと、滝の水量が少なくて「期待してたのにがっかり」というケースも多いようです。
たいていは、こんな感じで、あまり迫力はありません。「そんなにがっかりでもないじゃない」と慰めてくれる人もいるでしょうが、虫記者の超絶写真テクニックを駆使して、これが精いっぱいというところです。
数年前までは、キュランダ村からバロンフォールズまでシャトルバスが運行されていたのですが、現在は廃止されています。宿の古いパンフレットには、まだシャトルバスのサービスが載っていて、「もしや」と思って電話してみたのですが、やっぱり駄目でした。よほど人気がなかったのでしょう。
まあ、普通はここで諦めますよね。でも虫記者はそんなことではくじけないのです。実はキュランダ村には、貸自転車屋があるのです。しかし、非常に目立たないところにあって、その存在を知っている人はよほどの情報通です。
その場所は、オリジナル・マーケットの一番奥。正面から入ったら絶対たどり着けないでしょう。でも、裏口からだと、入ってすぐに自転車が並んでいるのが目に入ります。
裏口はこんなところです。裏口前の道は一部しか舗装されていない、非常に怪しい感じの裏道ですが、ここは幸せの青い蝶ユリシス(オオルリアゲハ)がよく飛んでくる道なので、メモしておきましょう。
客はだれもいなかったので、虫記者の出現に、貸自転車屋のお姉さんはホクホク顔。値段をきいてみると、1時間5豪ドル。500円もしません。
ところが、「バロン滝まで行く」と告げると、お姉さんの顔色が突然変わりました。「アップダウンが多くて厳しいよ」と再考をうながします。「こんなしょぼいおっさんには無理」と判断したようです。
どれくらい時間がかかるか尋ねると、「若くて体力があれば、片道20分。観光して、往復して、1時間」との返答。「若ければ」なんて、頭に来ますよね。ママチャリで鍛えた日本オヤジの実力を完全に見くびっています。
お姉さんの静止を振り切って、さっそうとマウンテンバイクにまたがり、力強くペダルを踏みこみます。ところがすぐにフラフラ。ママチャリでなく、乗り慣れないマウンテンバイクというところが問題なのです。なんで海外の観光地の自転車はすべて、マウンテンバイクなのでしょうか。許せないですね。
お姉さんは「それ見たことか」という顔をして、「ちょっと待って。私の車で送り迎えしてあげる。20ドルでいい」と、助け舟を出してきます。
20ドルは格安。甘い誘いに一瞬動揺しましたが、すぐに我に返り、毅然として助けを断りました。
しかし、数分後にはもう後悔することに。炎天下の上り坂は地獄。とてもペダルをこいでは上れず、自転車を押して歩くことに。
結局、30分以上かかって、ようやく散策路の入り口の駐車場にたどり着いきました。自転車で来ている者など誰もいません。自家用車で来ているオーストラリア人ばかりです。
これが難物のマウンテンバイク。ママチャリにしてくれー。
でも、ここは絶対に来るべきです。キュランダで虫を探すなら、一番の場所でしょう。バロンフォールズ駅まで続く散策路の手すりのあちこちに虫がいます。「森の小道の手すりは昆虫大通り」というのは、虫撮りの常識ですね。
多いのはゾウムシの仲間です。
このボコボコ背中のゾウムシは至る所に出没します。
タマゾウムシ系?
シロコブゾウムシに似てる
ミツギリゾウムシの仲間。
グリーンアントはかなり凶暴です。元気な虫がグリーンアントの集団に引きちぎられる惨劇を何度か見かけました。痛そうです。こんな死に方は絶対に嫌です。
トゲグモもあちこちにいます。
赤いサシガメは緑によく映えます。