キュランダ高原列車のバロンフォールズ駅へと続く遊歩道は、小さな美術館でもあります。
歩道の手すりには、虫もたくさんいますが、虫嫌いな人でも楽しめる芸術作品も点在しています。さすがは芸術家の村キュランダです。
でも、作品のモチーフは虫が多いので、芸術とは縁のない虫好きでも十分楽しめます。
まずは蛇。薄暗い時間だったらかなりドキッとしますね。これぐらいのサイズのヘビがいてもおかしくないジャングルですから。
次はヒメカブト。日本のカブトとちがって、胸部がピラミッドのように盛り上がって、大きな角になっているのが特徴です。
これはセミを食べるカマキリの図でしょう。
そしてアリです。このあたりのジャングルはいかにも虫がいそうですね。セミの声がこだまする涼しい散策路です。こんな化け物のようなアリがいてもおかしくありません。
ちょうど列車が到着しました。この散策路は駅のホームまで続いています。もちろん、改札はなく、駅員さんもいないので、出入り自由です。
列車が出たあと、誰もいない静かなホームで、小鳥のさえずりを聞きながらお弁当なんてのもいいですね。しかし、のんびりしてばかりはいられません。こんな絶好の環境で、虫を探さずしてどうする。
散策路を引き返しながらまた、虫探しです。ところが、何ということでしょう。せっかくの虫だらけの散策路を、きれいに掃除している人がいるではありませんか。
さすが先進国オーストラリア、管理が行き届いていてすごい、なんて感心している場合ではありません。散策路の虫たちは、強力なブロワーでみんな遠くへ吹き飛ばされてしましました。
きれいに清掃された散策路を、泣きながら帰ります。セミも悲し気に泣いています。
しかし、駐車場にたどり着いたところで、すごい光景に出会いました。
駐車場の端にポツンと1本だけ生えた人の背丈ほどの小さな木。葉は無残に食い荒らされ、裸に近い状態です。こんなボロボロの状態の木をみつけると大喜びするのは、虫好きだけですね。
「ボロボロの木は虫の宝庫と思え」。これもまた虫撮りの鉄則です。どこにも虫などいそうには見えませんが…
この木は、ナナフシの宝庫でした。
すごいですね。何がすごいって、この擬態を見抜く虫記者の眼力がすごいです。ばれないと思っているナナフシのあさはかさ。
なーんてうぬぼれていたら、太い枝と思って触ったところがグニャリと曲がりました。もう一匹、大きなメスのナナフシが枝に紛れていたんです。完全にやれれました。ナナフシの擬態を侮ってはいけません。あさはかなのは虫記者の方でした。
右が大きなメスのストロング・ナナフシ(たぶん)、その左に小さな幼虫がいます。
刺激すると、羽を広げて威嚇します。でもメスの羽は小さいので、飛ぶことはできません。威嚇専用です。
近くにいた観光客に頼んで、「ナナフシと戯れるアホな虫記者」の写真を撮ってもらいました。
すると、駐車場のあちこちから人々が集まってくるではありませんか。そしてカメラを向けて、バシバシ写真を撮りまくります。「キャー、こっち向いて」とか、「もっと笑って」とか、言っていたのかどうか。英語なのでよくわかりませんが、スターになった気分です。もしかしたら、「ここが変だよ日本人」みたいなブログに載せるのかもしれません。だとしたら、スターどころか、日本人の恥さらし、アホ丸出しということになります。
自家用車で来ているようなので、駐車場にいた人々の大半がオーストラリア人だと思われます。オージーはナナフシLOVEな国民らしいとい情報は得ていたのですが、ガセネタでもないようです。キャーキャー言う声の中に、確かに「スティック・インセクト」とか、「ミミック」とか「カモフラ―ジュ」とかいう言葉が入り乱れていましたから。