東京以外に住んでいる人たちは、東京都心には自然がない、緑がないと思っているかもしれませんが、そんなことはありません。明治神宮、神宮外苑、新宿御苑などわりと大きな森があり、東京駅にほど近い一大オフィス街の大手町前には、皇居東御苑の大手門があり、会社の昼休みにふらっと森林浴なんてこともできるのです。
昆虫記者も、ときどきふらっと皇居に吸い込まれます。以前は平日はガラガラだったのに、最近は外国人観光客がどっと押し寄せて、平日もかなりの賑わいです。
東御苑の隣は吹上御所。道を挟んで北の丸公園、靖国神社と広大な森が広がるので、昆虫もかなりの賑わいです。
かなり大型で真っ赤な虫がいました。ホシベニカミキリですね。めちゃくちゃ目立つ虫で、なおかつ都会にもはびこっているので、目にした人も多いかも。
なぜホシベニカミキリが都会に多いかというと、街路樹として植えられることの多いタブノキの大害虫だからです。タブノキの幹にボコボコと穴が開いて、汚らしくなっていたら、それはたいてい、幹に食い込んでいたホシベニカミキリ幼虫の仕業ですね。大量発生すると、大木でも簡単に枯れてしまいます。
成虫は5月前半にはもう出現していました。6月にふらっと東御苑に立ち寄った際にも見かけました。成虫による被害は大したことはなく、若い枝をカジカジして、枝先を枯らしてしまう程度です。葉が茶色く枯れて、だらりとぶら下がった状態の枝がたくさんあれば、ホシベニカミキリがいる証拠。そんなタブノキは、幹にたくさん穴が開いているはずです。皇居周辺でこんな悪行をはたらくとは、とんでもない不届き者ですね。
そんな不届き者の発生を毎年楽しみにしている昆虫記者も、かなりの不届き者です。
6月上旬、ハナショウブが花盛りの東御苑・二の丸庭園です。こんな庭園が入園無料って、うれしいじゃないですか。
二の丸庭園では、山菜のタラの芽で知られるタラノキがボロボロになっていまいた。ここでタラの芽を摘んでいる不届き者のおばさんを見かけたことがありますが、今回の犯人は、人間ではなくカミキリムシのようです。
よく見ると、おいしい若芽の付近に大型のカミキリが食らいついています。センノカミキリです。
センノキ(ハリギリの別名)を食べるのでセンノカミキリの名があるようですが、よく見かけるのは、背の低いタラノキを食い荒らす姿です。都会にも普通にいて、新宿御苑のタラノキでもお見掛けしました。
しかし、二の丸庭園で犯行に及ぶとは、センノカミキリもかなりの不届き者です。
コナラの葉を食い荒らしていたのは、オオトビモンシャチホコの幼虫。こいつも毎年、二の丸庭園で大発生します。
イタドリの葉にも、大きなイモムシがいました。なかなかに個性的な水玉模様のアヤモクメキリガの幼虫です。
ヒイラギナンテンの実の上では、クチナガチョッキリが食事中でした。
まあ、このあたりの面々は、植物の被害も大したことはないので、頻繁に見回りに来る皇宮警察も大目に見ているようです。
しかし、皇居の不届き者は虫だけではありません。東御苑内の堀で、鯉を密猟していたのはアオサギです。
人目に付かないところまで運んで、ゴクリと丸呑みにしてしまいました。犯行が発覚するのを恐れて、急いで獲物を飲み込んだのかと思うかもしれませんが、アオサギはカエルでもザリガニでも何でも丸呑みします。
鳥は歯がないので、獲物を噛まずに丸呑みして、胃に相当する砂嚢(焼き鳥の砂肝ですね)で、ため込んだ砂礫と強靭な筋肉ですりつぶすらしいです。鯉を丸呑みなんて、アオサギならではの芸当ですね。人間はまねしない方がいいです。人間が食用ガエルとか丸呑みしたら、のどが詰まって死にます。