アカスジキンカメ=おちゃめな子がいつの間にか歩く宝石に
前回のカメムシゴミ屋敷編で思い出しました。そういえば、アカスジキンカメムシのその後について、書いていかなかったことを。
嫌われ者のカメムシの中で、キンカメムシの仲間は別格です。甲虫界ナンバーワンの美貌を誇るタマムシより美しいかもしれません。そんな虫が、東京のあちこちの公園を闊歩しているのです。こんな虫に出会ったら、「ここは熱帯か」と叫びたくなりますね。
まずは、6月下旬に高尾で出会った成虫です。羽化後しばらく期間が経つと、美しさに磨きがかかって、宝石のようになります。歩く宝石などと呼ばれたりします。
しかし、アカスジキンカメをモデルにしたアクセサリーを見かけたことがないのはなぜでしょう。
そうです。いかに美しくとも、やはり臭いのです。こんなアクセサリーを付けていたら、だれも近づいてこないですね。
でも、この臭さゆえに、アカスジキンカメムシがこれまで生き残ってきて、都会でも繁栄を極めているというのは、虫好きにとっては喜ばしいことです。
昆虫記者の自宅から、都バス1路線で行けてしまう葛西臨海公園は、このアカスジキンカメムシの宝庫です。春に幼虫を紹介しましたが、その後はどうなったのでしょうか。
5月中旬に行ってみると、羽化のピークを迎えていました。
まだ終齢幼虫もいます。このおちゃめな子が歩く宝石に変わるとは信じ難いことです。
人間は服を着ることで、見た目を変えます。日焼けして皮が一枚めくれても、人の見かけはほとんど変わりません。
ところが、虫は皮を脱ぐたびに見た目が劇的に変わります。幼虫から、蛹、成虫の変化は、人間から見ると、とんでもないものがあります。最近は美容整形手術の進歩で、「えーっ、これ同一人物なの」という大変化を遂げる人も多くなりましたが、手術する度胸も金もない昆虫記者は、物心がついてから今日まで、ほぼ変わらずの控えめな見た目のままです。
蝶だとか、タマムシだとかが、イモムシやテッポウムシから宝石のような姿に変化するのはすごいですが、彼らは完全変態なので、成虫に変態する前は、完全に違う生き物と考えることもできます。
不完全変態のゴキブリとかバッタとかは、小さいころから、大人になるまで、あまり変化がないような気もしますね。でも不完全変態のくせに、脱皮するたびに、別人に大変身するのが、カメムシの仲間です。特にキンカメムシの仲間は、どんな美容整形でも不可能なほどの大変身を遂げます。
アカスジキンカメの羽化を毎年見に行きたくなるのは、そんな変身願望からかもしれませんね。
終齢幼虫は、それなりに魅力的ではありますが、それは人間で言えば、愛嬌があってかわいらしい、とか、素直でとってもいい人、とかいう評価に似ています。ハンサムとか美人とかいうカテゴリーではありません。
それが羽化して成虫になると、突然、2ランクも、3ランクも上の美男美女に変わってしまうのです。もっと若い頃から付き合っておけば良かったと後悔するタイプですね。名曲「なごり雪」の世界です。今春が来て、君はきれいになった~って感じです。
羽化直後は、まだ整形手術後の包帯グルグル巻きの状態のような感じです。
少し時間が経つと、次第に美男美女の模様が浮かびあがってきます。
そして、翌日になると。