虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

虫グルメフェスで昆虫記者憧れのサゴワームを食す

 11月下旬、東京駅のスクエアゼロで開かれていた虫グルメフェスに行ってきました。知らなかったけど、スクエアゼロは駅構内なので、東京経由の定期券とかない人は入場券(140円)が必要なんです(涙)。

 でも、ボルネオで探して見つからず、食べられなかったヤシオオオサゾウムシの幼虫「サゴワーム」をついに食すことができただけで、大満足でした。このサゴワームはサゴヤシの木の中に食い込んで枯らしてしまうという大害虫なので、食べても罪悪感を持たずに済みます。サゴヤシの幹から取れるデンプンは、ボルネオの一部では重要な食料になっているらしく、それを食べるサゴワームは、非常に美味しいと評判です。

 コロナ禍が過ぎ去ったら、いつの日にかボルネオでサゴワームの串焼きを食べたいというのが、昆虫記者の夢です。

 

 昆虫食と言うとゲテモノ感を持つ人が多いですが、虫グルメフェスの店先に並んだ品々は、おしゃれな料理や、可愛いパッケージ入りの食材が多くて、原宿あたりの店で誰でも(JK、JD、OLでも)気軽に食べられそうな雰囲気でした。

 

 まずは憧れのサゴワームです。オオスズメバチの幼虫とのセットで、バターソテーで提供されていました。豪華ですね。

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左の黒っぽい集団は試食用に提供されていたコオロギの素揚げです。

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サゴワームとオオスズメバチ幼虫のソテー。はまる食品さんで食材購入できます。

 サゴワームもオオスズメバチもナッツ系の味でとても美味しいです。サゴワームの方が歯ごたえがあっていい感じ。オオスズメバチは、中身がツブツブ感がありますが、サゴワームはなめらかなクリーム状でした。

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冷凍されたサゴワーム

 はまる食品さんのホームページでは、冷凍サゴワームは45グラムで1150円でした。一度食べたら「はまる」かも。って、頼まれてもいないのに、はまる食品さんの宣伝してしまいました。

 サゴワームは非常に美味しかったのですが、絵的には、サゴワームをトップバッターにしたのは失敗ですね。原宿系のJC、JK、JDやおしゃれなOLさんは一斉に引いてしまったことでしょう。

 

 でもその他の食材昆虫は、そんなにゲテモノ風でもグロでもありません。

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コオロギのゴーフレットなんて、お子様のおやつに喜ばれそうですね。

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ジビエと昆虫食で有名なチェーン店、米とサーカスさんのメニューです

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おにぎりやお茶漬けも

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昆虫系の飲み物も豊富です

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タガメサイダー。タガメはタイでは、香辛料、調味料として利用されていて、特に♂は洋ナシ風の素敵な香りがします。

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タランチュラ、シロアリなんかも食材になるんですね

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サソリも食べちゃう。人間の食への探求心はすさまじい。

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大切なあの人に、記憶に残るギフト。すごいキャッチフレーズですね。確かに記憶には残るでしょう。ただし贈り先を選ぶ際には慎重さが求められます。

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東京農大の学生さんたちがやっていたブースには、生きたコオロギの姿も。コオロギは生産コストが低く、栄養豊富で、味も良く、一番将来性のある昆虫食材です。頑張って研究して下さい。応援しています。

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生きたコオロギさん

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虫グルメフェスはそこそこ賑わっていました。昆虫食の夜明けは近い?

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昆虫食の講演。こういう美しい方々とご一緒できるなら、一層食欲が増すでしょう。

 

3密回避の静かな観光地チバニアンで化石と晩秋の虫撮り

 GO TOトラベルの影響もあって、この3連休は各地の観光地が芋の子を洗う3密のすごい人出になってますね。新型コロナの感染者が急増していて、また緊急事態宣言とか、完全テレワークとかなるのは嫌ですよね。しかし観光地だからすべて大混雑というわけではありません。地磁気逆転の地層で世界的に有名になったチバニアンは、静かで、落ち着いた観光地でした。

 

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蝶の蛹と養老川の緩やかな流れ

 養老川のゆったりした流れと、蝶の蛹。昆虫記者ならではの、全くちぐはぐな組み合わせですね。羽化間近の羽の模様で何の蝶か分かったら、あなたももう、こちら側の世界の人間です。普通の世界には戻れません。

 

 チバニアンには車で行くのが便利ですが、小湊鉄道月崎駅から、ひなびた田舎道の雰囲気をのんびりと味わいながら行くのもいいものです。

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こんな田舎の駅(月崎)から出発

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ひなびた田舎道をテクテクと30分ほどの行程です

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途中、こんな光景も。オオッ、今時菜の花畑が!などと血迷ってはいけません。セイタカアワダチソウです。

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小湊鉄道の車窓から見えたのも、菜の花ではなくセイタカアワダチソウ

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あのきれいな黄色い花は何?、菜の花かしら?、と言っている観光客もいました

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ようやくチバニアンビジターセンターの駐車場に到着。アユの塩焼き、ソフトクリームなども売られています。

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ビジターセンター。勉強熱心な人はここでパンフをもらうのがいいようです。

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駐車場奥、ビジターセンターの後ろからの、ユウガオ畑の上のこの道が近道

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ユウガオ(カンピョウの原料)の実がたくさん転がっていました

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途中にもチバニアンの説明があるので、勉強熱心な人は読みましょう

 そしてチバニアン到着。車で来ると駐車場からあっという間の到着なので、時間を持て余しそう。車の無い昆虫記者のような貧乏人の旅の方が、全行程を半日ほど楽しめてお勧めです。ボランティアのオジサン(下の写真の右端)が代わる代わるやってきて無料で解説してくれるので、オジサンがいない時は、ちょっと待ってみましょう。ただし平日はいないかも。

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チバニアン地層の説明に熱心に聞き入る人々。偉いですね。昆虫記者は傍観です。

 77万年前、最後の地磁気逆転が起きた時期の地層の位置が、火山灰の狭い層のお陰で誰にでも簡単に分かるというところが、チバニアン時代という千葉を世界に知らしめる時代名称が採用された大きな理由のようです。ほーら、昆虫記者もちゃんと勉強しているのです。今また突然地磁気が逆転すると、航空機がまともに飛べなくなったり、とんでもないことが起きるそうです。なんかワクワクしてしまうのは変でしょうか。

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左の倒れた木のあたりから右に伸びる黒い線(所々緑の苔が生えている)が77万年前という時代を決定付ける白尾火山灰層です。昆虫記者って結構勉強熱心なんだなーと感心して下さい

 川底が柔らかい石でできていて平らなので、化石が露出しているところも多いです。大抵の人はチバニアン地層だけ見て帰ってしまいますが、それではもったいない。77万年前、ここが水深500メートル以上の海の底だった時の化石ですよ!。三葉虫みたいなカッコイイ化石ではありませんが、少しは感動しましょう。

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浅い川底にはたくさんの貝類の化石が

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サザエみたいな巻貝の化石らしいです。

 海底で生活していた生物の巣穴や移動の跡を示す生痕化石という、さらに地味な化石もあります。うーん、これで感動しろと言われても、ちょっと難しいかも。

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これが生痕化石。うーん、相当に地味だ

 川の浅瀬に入るためには、こんな雨除け靴カバーを持っていくといいかも。昆虫記者は雨の日のジャングルのために、これを常備しています。

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雨除け靴カバーがあると運動靴でも川に入れる。何と準備の良いことよ

 オオーッ!アンモナイトの化石が!なーんて真っ赤な嘘です。近くにあったアオツヅラフジの実から取り出した種です。この種はアンモナイトに似ていることで有名ですよね。

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アンモナイトの化石が!というのは嘘。アオツヅラフジの種です。

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アオツヅラフジの実。秋の野山にたくさんあります。

 川の中には魚の姿も。アユ!と思ったら大間違い。今時アユはいません。どこにでもいるオイカワ(ヤマベ)ですね。昆虫記者はかつては釣りも趣味だったので、魚の知識も多少あります。何て偉いんだ!

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ゆったりとした川の流れの中には魚の姿も

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橋の上から眺めると、たくさんの魚が確認できます

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この長い尻びれはオイカワですね。

 オッと忘れてました。甌穴(ポットホール)です。川底が柔らかいので、窪みに入り込んだ石などが長い間回転してこんな丸い穴ができると、昔科学番組で見たような。

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大小さまざまな甌穴が川岸や浅い川底に見られるのが、養老川の特徴の1つ

 そして虫です。冒頭の写真で登場した蛹は、カラムシの葉で作られた広い蛹室の中にあるアカタテハの蛹です。近くにたくさんありました。この時期、さすがにもう幼虫はいなくて、全部蛹でした。

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カラムシの葉で作られたアカタテハの蛹室

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蛹室の扉を開けると中に蛹があります

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羽化の時期が近づいている蛹も

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成虫のアカタテハもたくさん飛んでいました。成虫越冬なので真冬でも暖かい日には日向ぼっこする姿が見られます

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羽化直後のきれいなアカタテハはこんな感じ

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成虫越冬するテングチョウの姿も見られました

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ミスジは幼虫越冬なので、これは成虫の最後の雄姿。

 鳥系の方々にも配慮して、最後は農家の庭先でのモズの高鳴きです。キチキチバッタの音を100倍にしたような、キチ、キチ、キチ、キチと鳴き続ける声は本当にうるささい。

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キチキチキチとうるさいモズの高鳴き

 こんなつたない記事を読んで、チバニアンにいってみようと思った人がいれば嬉しいです。月崎から歩きがお勧めと書きましたが、電車の本数が非常に少ないので、本当は裕福な方々にとっては車がお勧めです。

小湊鉄道とチバニアンと新顔タマムシ

 虫ばかりだと虫バカと呼ばれそう(すでに呼ばれている)なので、たまには、地球の歴史にも踏み込んでみることにしました。地球の歴史で最近有名になったのは、地磁気のN極S極が逆転した時期の地層がはっきりと分かる千葉の新名所、チバニアンですね。地磁気が最後に逆転してのは今から77万年ぐらい前のことで、そのあたりの時代がこの露頭地層のお陰で、全世界的にチバニアン千葉時代)と呼ばれることになったのです。今や千葉県は、世界の千葉県なのですね。

 

 では、チバニアンを写真で紹介しましょう、と行きたいところなのですが、まずは近くで見つけた初見のタマムシです。やはり虫撮る人々、昆虫記者=虫バカということですね。

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チバニアン地層付近で見つけたトゲフタオタマムシの♀

 トゲフタオタマムシは♂なら上羽の先が二尾に分かれて、脚にトゲがあるらしいのですが、今回は♀なので、トゲもフタオもないトゲフタオです。

 

 それでもタマムシなので、よくよく見るときれいな虫ですね。

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背中はウバタマムシ風、裏返すと金色、羽の下は青く輝くトゲフタオタマムシ

 小湊鉄道月崎駅からチバニアンまでは歩いて30分ほどですが、昆虫記者はこんなところでも虫を探しながら歩くので、1~2時間はかかってしまいます。そして、その成果がこんなすばらしいタマムシとなって表れるのです。

 

 ついでに鉄道ファンの間で人気の高い小湊鉄道トロッコ列車も紹介しましょう。

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五井駅に停車していた小湊鉄道トロッコ列車

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ロッコの乗客は何だか楽しそう

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でも金欠の昆虫記者はトロッコでない普通の列車に乗ります

 トロッコ列車は追加料金が必要なので、貧乏な昆虫記者は乗りません。乗ってしまうと、列車の写真は撮りにくいので、撮り鉄ならば、乗らずに田園風景の中を走る列車の写真を撮るのがいいのです。

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田園風景の中を走るトロッコ列車

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チバニアン地層の最寄り駅「月崎」はこんな小さな無人

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月崎駅

 虫も、列車もいいけれど、チバニアンは一体どうなったんだという怒りの声が聞こえてきそうですが、明日は早起きなので、時間が無くなりました。残念ながらチバニアンは次回にお預けとなります。地層のみならず、化石、甌穴、美しい風景、そしてもちろんさらなる虫も出てくるはずですので、ご期待下さい。

イモムシ、蛹、羽化シリーズ・クロヒカゲとヒカゲチョウのどうでもいい区別

 イモムシ・蛹・羽化シリーズ。今回はほとんどの人にとってどうでもいい、非常に紛らわしい2種類の蝶の区別です。その蝶は、クロヒカゲとヒカゲチョウ。どちらも日陰者で、一見蛾のように地味で、注目を浴びる事もない、虫好き以外の人々にとっては本当にどうでもいい蝶なので、全く期待しないで見て下さい。

 

 まずは成虫の蝶を並べて観察してみましょう。

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左がクロヒカゲ、右がヒカゲチョウ。ほとんど同じで、遠目には全く区別が付きません。

 写真は典型的なクロヒカゲとヒカゲチョウなので、その名の通りクロヒカゲの方が黒っぽいですが、実際はもっと薄い色のクロヒカゲとか、もっと濃い色のヒカゲチョウとかもいて「うーん、どっちなんだろう」と悩むことになります(普通の人は悩みません)。確実な見分け方は、下羽の眼状紋(目玉模様)の方へと食い込んでいる線が、眼状紋近くまでグッと食い込んでいるのがクロヒカゲで、わずかに折れ曲がっている程度なのがヒカゲチョウというものです。あと、前羽の下の方にある線が2本ならクロヒカゲ、1本ならヒカゲチョウという見分け方もあります。

 

 わざわざ見比べてくれた人には丁重にお礼を申し上げますが、「だから何なんだ。見分けられたからって、何かいいことがあるのか。全くどうでもいいじゃないか」と言われたら返す言葉がありません。

 

 しかーし、虫好きにとっては、これが重大事なのです。特にイモムシ好きにとっては、天と地ほどの差があるのです。

 

 実は成虫がこれほど似ているのに、幼虫は相当に見た目が違うのです。不思議ですよね。まず若齢の時から顔が全く違います。終齢になると、体の色と模様も全く違ってきます。

 まずはクロヒカゲの幼虫です。ヒカゲチョウと同様に笹の葉を食べます。どちらの顔も猫耳系ですが、クロヒカゲはウサギ耳に近いかも。

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クロヒカゲの若齢幼虫。頭が黒っぽくて、角が左右に長く幅広に突き出ています。

 

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ちょっと大きくなったクロヒカゲの幼虫。体が薄茶色に。遅くまで緑色のもいるらしい。

 そしてクロヒカゲの終齢幼虫と前蛹と蛹。

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 これに対してヒカゲチョウの幼虫は、小さいときからあまり様子が変わりません。ずっと緑色(たぶん)で、頭の真ん中寄りに小さい角があって、真上に伸びています。

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ヒカゲチョウの幼虫

 

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ヒカゲチョウの幼虫

 

 ヒカゲチョウの幼虫の中には胴体の左右側面に3つずつの紋が出るタイプもいます。こっちはちょっとだけオシャレ。

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 どうです?。幼虫を見ると、クロヒカゲとヒカゲチョウが全く違う蝶だということが分かりますね。「だから、それがどうした」と言われると、またしてもグーの音も出ないのですが、ともかく違うのです。

 

 ついでにクロヒカゲが羽化したら、黒バックで眼状紋を撮ってみましょう。羽が黒っぽいので、紋の青色が際立って、まるで夜空の星座、星雲のように見えてきれいですね。

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クロヒカゲの眼状紋を黒バックで撮ると、夜空の星のように見える

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 地味なクロヒカゲも撮りようによっては、きれいにもなる。お見合い写真の撮り方のようですね。

 「でも結局は地味な蝶なんでしょ」と言われれば、全くその通りなのですが。

 

今年のイモムシ、蛹、羽化シリーズ。トップはやっぱりアオバセセリ

 ライフワークは虫旅、虫撮りと豪語する昆虫記者としては、毎日でも虫探しに出かけたいのですが、家庭の財政事情からサラリーマンとしてデスクワークを週5日続けざるを得ないのが現実。そんな悲しい現実世界を癒してくれるのが、自宅に養子に向かえたイモムシたちです。彼らが立派に成長して、蝶や蛾として旅立っていくのは、里親として嬉しい限りです。寄生蜂や寄生バエにやられて非業の死を迎えることも多く、そんな時は悲しい限りですが、寄生する連中もたいていは昆虫なので、それはそれで、人生(虫生)でもあるわけで「人生色々なのだなー」と感慨にふけることができます。

 

 グダグダ言ってないで、早く本題に入らないと、イモムシ、蛹、羽化シリーズの整理が付きません。もう11月で年末も迫ってきています。ウダウダしている場合ではないですね。

 

 では、まずはアオバセセリ。ほとんど毎年のように1匹ずつ羽化させているのですが、一向に飽きる気配はありません。成虫は、とてもセセリの仲間とは思えない、極彩色に包まれています。

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今年羽化したアオバセセリ。羽は青く見えたり、緑色に見えたり。

 

 幼虫の隠れ家も見事です。中南米の楽器オカリナを連想させますね。窓のような複数の穴から朝日が差し込んだりしたら、隠れ家の中は、どんな不思議な光景になるのか。アオバセセリの幼虫になってみないと分からいでしょう。山地のアワブキの木には、たいてい幾つか、こんな巣が付いています。

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オカリナを思わせるアオバセセリ幼虫の隠れ家

 

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こんな小さい隠れ家にも、ちゃんと明り取りのような穴が開いている

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これは1齢か2齢ぐらいの時に作った隠れ家だろうか

 そしてこの隠れ家の中の幼虫がまた、見事。

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隠れ家の中のアオバセセリの幼虫

 テントウムシを貼り付けたような頭、ロールケーキのような体。毎回、うわー、居たー、と思わず叫んでしまう姿です。

 

 他の蝶も続けて紹介しようと思ったのですが、今しがた妻が「お昼できたよ。食べるなら早くしろ。呼んだらすぐ来い」と叫んだので、続きは後でs。

カマキリを洗脳し入水自殺させる悪魔のようなハリガネムシも知恵の輪と思えばかわいいかも

 今回は、前回からのカマキリ繋がりです。ですが、前回の小さくてかわいいヒナカマキリから、今回の展開を連想すると、大間違いになりますので、ご注意下さい。

 

 食事中の方、気味悪いものが苦手な方は、ここから先はご遠慮下さい。まあ、元々が昆虫ブログですから、気味悪いものが苦手な人があえてここを覗くことはあまりないと思いますが、鎌とキリとか、針金とか、工具関係を検索していて何かの間違いで、ここにたどり着くこともあるかもしれません。そんな場合は「炎上させてやれ」なんて物騒なことは考えず、ひっそりと立ち去るのがいいと思います。

 

 すでに針金のヒントが出ているのでお分かりの方も多いことでしょう。そうです。今回はハリガネムシです。出会いの場は、京王よみうりランド駅付近の多摩丘陵を臨む川辺でした。

 

 カマキリの寄生虫で、カマキリの脳みそ(あるのか?)を支配して入水自殺へと誘う悪魔のような存在として知られるハリガネムシですが、手に取ってみると、複雑な知恵の輪のようにも見えます。そうです。何のことはない、健全な遊具の知恵の輪ですね。そう思えば、全然気持ち悪くないですね。

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まるで知恵の輪のようなハリガネムシ。全然気味悪くないですね。

 宿主だったハラビロカマキリがどんな状態だったかというと、下の写真のような感じ。便意に苦しんで身をよじり、一刻も早くトイレ(この場合は川の中)に飛び込みたいという感じです。ハリガネムシの寄生がこんなに分かりやすい状態のカマキリを見たのは、今回が初めてでした。

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一刻も早くトイレ(川の中)に飛び込みたいと身をよじるカマキリ

 あんまりかわいそうなので、捕まえてお腹をさすってやると、尻の穴からニュルニュルと出てきました。「うわー汚い」。と言っても糞ではありません。「うわっキモイ!」が正しい表現かもしれません。もちろん出て来たのはハリガネムシです。

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カマキリの尻からニュルニュルと出て来たハリガネムシ

 たぶん、水に漬けてやっても出てくるのでしょうが、腹を横から少し圧迫すると、危険を感じるのか、ハリガネムシは自ら脱出を図ります。

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こんなに長い寄生虫を腹の中に抱えていたら、相当に苦しいことでしょう

  ハリガネムシはカマキリの腹から出た後は水中で生活するので、カマキリを巧みに誘導して入水自殺させ、自らは水中へと躍り出ます。なので昆虫記者は、カマキリにとっては命の恩人。ハリガネムシにとってはいい迷惑ということになりますね。

皇居にヒナカマキリの季節到来

 9月をすっ飛ばして、いきなり10月半ばの皇居周辺です。そしていきなり、日本最小のカマキリの「ヒナカマキリ」が登場です。いるんです、皇居にはヒナカマキリが。それもかなりたくさん。

 毎年のように、冬にヒナカマキリの卵(卵鞘)を確認していたので、かなりの数が生息していることは分かっていたので、今回は成虫の最盛期と思われる10月中旬に捜索に行きました。

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オミナエシとヒナカマキリ。右はヒナカマキリの卵(卵鞘)

 最初の写真は「東御苑のオミナエシの上で獲物を待ち構えるヒナカマキリの図」ですが、そう都合良く、秋の風景とヒナカマキリが一緒に撮れるわけないです。

 本当は最初の1匹を見つけたのは東御苑のトイレの中です。しかし、トイレではあまりにも絵にならないし、臭い。それに、トイレの中でカメラを構えていたり、フラッシュ光らせていたりしたら、絶対に不審者です。皇宮警察に逮捕されて、「変態記者、皇居の男子トイレでわいせつ行為か=虫を撮ってましたと言い逃れ」なんて見出しで、3面記事になりかねません。

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右の方の小さな黒い点がトイレにいたヒナカマキリ

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小便器前のヒナカマキリ。絵にならないし、臭い。

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下が♀、上が後で見つけた♂。羽が退化しているので幼虫のように見えますが、たぶんこれで成虫です。

 

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極小のヒナカマキリもアップにすると勇ましく見える。

 そこですぐに外へ連れ出して、オミナエシの花の上に乗せて、撮影会を開催したのです。オミナエシの花を取っている人は、変態とみなされることはありません。

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 その後は、ちゃんと自然の中で、♂と♀1匹ずつを見つけました。卵鞘も2つ発見。来年も豊作まちがいなしですね。

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皇居の自然の中で見つけたヒナカマキリ♀

 しかし、彼らには恐ろしい天敵がたくさんいます。まずはヤモリです。たぶんトイレは、小さな蛾やヨコバイなど餌が多いという理由からヒナカマキリの穴場になっています。いつもヒナカマキリがたくさんいる三浦半島の某所でも、必ずトイレで何匹かヒナカマキリが待ち構えています。しかし、トイレの暗がりには、たいていヤモリも潜んでいるのです。やつらに狙われたら、ヒナカマキリの小さなカマなど、何の役にも立たないでしょう。

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ヒナカマキリの天敵、ヤモリ

 そして次なる天敵は、下の三色国旗を掲げている虫です。余談ですが、黒白赤の三色国旗は、シリア、イラク、エジプトなど中東のアラブ諸国に多いようです。中でも何の文字、絵柄も入っていない黒白赤の三色旗はイエメンの旗。

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この3色旗の持ち主は誰?

 そんな三色旗の腕を振り上げているのは、コカマキリです。コカマキリはイエメン応援団のような虫というわけです。

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コカマキリの特徴はカマの三色旗

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ヒナカマキリと比べると巨大に見えるコカマキリ

 皇居周辺にはコカマキリもたくさんいます。オオカマキリハラビロカマキリと違って、コカマキリは薄暗い環境が好みで、産卵場所も目立たない暗がりが多いですね。そんな場所は、ヒナカマキリの生息場所ともろにバッティングするのです。

 そしてコカマキリの体長は、オオカマキリと比べれば小さくても、ヒナカマキリにとっては巨大です。奴らに狙われたら、やはりヒナカマキリはひとたまりもないでしょう。合掌。