虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

秋にも見られる多摩川河川敷のクロトゲハムシ

 5月、6月頃には多摩川の河川敷のススキやオギでクロトゲハムシがたくさん見られますね。和泉多摩川や対岸の登戸周辺のススキ原は、都心の虫好きも会いたくなったらすぐ行けるの便利な生息地です。でも、今はもう秋。今年はもうクロトゲハムシに会えないと悲しみに暮れている人もいるかもしれません(絶対いない)。

 でも先週登戸周辺で、クロトゲハムシを見つけました。秋にも出てくるんですね。たぶん今年羽化した成虫が夏眠後、越冬前にちょっと腹ごしらえに出てくるのではないかと思います。

秋の多摩川河川敷でクロトゲハムシ発見。右のような食痕があれば近くにいる可能性大です。

クロトゲハムシの胸部の大きなトゲは兜のようです。

小さなトゲに囲まれた鞘翅は鎧ですね。

 コオロギの鳴き声も昼間に弱弱しく響くだけになり、虫の姿がめっきり減ってきたこの季節。小さくてかわいい上に、拡大すると甲冑姿の武者のようなクロトゲハムシに会えるなんて、嬉しいですね。

外来のきれいなハゴロモ「ヘリチャハゴロモ」、川崎市の公園で大量発生

 先週神奈川県川崎市の生田緑地で、外来のきれいなハゴロモをかなりの数見つけました。以前シンガポールで同じハゴロモをたくさん見たので、熱帯系のハゴロモだと思います。。

 2015年ごろから日本各地で報告があり、ヘリチャハゴロモという仮名が付けられているようです。学名はSalurnis marginellaというらしい。川崎にたくさんいるなら、既に東京都心部もかなり浸食されているでしょう。外来昆虫は、環境が合えば一気に増えるので、来年は近所でわんさと見られるかも。

南国風のきれいな外来ハゴロモ、ヘリチャハゴロモ川崎市に進出

 遠目にはアオバハゴロモに色も形も大きさも似ています。しかし近づいてみると、翅に水色から黄色の水玉模様が施されていて、頭の上から胸部背面にかけて水色の地に赤い筋が2本入るなど、南国風のカラフルな装いです。

 アオバハゴロモと生息環境が重なるならば、アオバハゴロモを駆逐する勢いで増えて生態系を乱す恐れがありますね。でもアオバハゴロモよりずっときれいなので「許しちゃおうかな」という気にもなります。

翅の水玉模様と茶色の縁取りが可愛いヘリチャハゴロモ

 川崎あたりはまだまだ暖かいので、今月末ぐらいまでは元気なヘリチャハゴロモが見られるかもしれません。是非見たいという人(まずいない)は、生田緑地へ急げ。でも、そのうちきっと、どこでも見られるようになります。

クルミの木の芋虫探し、地味なイモムシもスルーするべからず。アミメリンガの可能性もあり。

 クルミの木はイモムシ探しでは大切な木です。ムラサキシャチホコとか、モンホソバスズメとか、エゾスズメとか見応えのあるイモムシとの感動の出会いがあるかもしれません。ヤママユ系のイモムシも時々見かけますね。クルミは葉が大きいので、イモムシを探しやすいという利点もあります。

 しかし、見栄えのいいイモムシばかりを探していると、地味なイモムシをスルーしてしまう危険があります。例えばアミメリンガの幼虫。

 アミメリンガの幼虫は、モンシロチョウの幼虫に匹敵するぐらい地味。なので、虫好きであってもたいていの人は、このイモムシがあの美しいアミメリンガになると知らずに、完全無視してしまいます。

クルミにいるこんな地味なイモムシがアミメリンガの幼虫。

 もちろん昆虫記者は「アミメリンガかも」と期待して、そんな地味な幼虫も一応確保します。そして、地味な幼虫は繭をつくり、成虫になりました。

 成虫は確かにアミメリンガなのですが、「オオ―、憧れのアミメリンガだ!」と叫んだかというと、「あーあ、残念」とうなだれてしまったのでした。

アミメリンガ。残念ながら網目模様が薄い。(写真付け忘れたいたようです)



 実はアミメリンガは翅の模様の鮮明さがさまざまで、非常に美しい網目模様のもいれば、ほぼ白一色のようなのもいるのです。今回羽化したのは、ほぼ、ほぼ白一色でした(きれいなアミメリンガの姿はネット検索で確認してください)。

クルミの葉の上に作られたアミメリンガの繭。

いる場所は分かったので、「来年はリベンジするぞ」と心に誓ったのでした。

ポプラの芋虫、おまけのおまけはツマアカシャチホコ

 すいません、ポプラの芋虫、どんどん見栄えの悪いものになっていきます。オオモクメシャチホコ、オオキノメイガの次はツマアカシャチホコです。芋虫というより毛虫ですね。まあ、おまけのおまけなので、質が劣化していくのも仕方ないですね。なので、少しは見栄えのいい成虫の写真を先にアップします。

ツマアカシャチホコ成虫。

ツマアカシャチホコ幼虫

前の写真とかなり雰囲気が違うが、これもツマアカシャチホコ幼虫か。

 幼虫は全然シャチホコらしさがない、シャチホコの片隅にも置けないような、ただの毛虫です。シャチホコ・ファンとしては「なんでこいつがシャチホコなんだ」と言いたくなりますが、世中が鯱(しゃちほこ)の形状をしていないシャチホコもかなり多いようです。

 飼うイモムシが枯渇して寂しい時には、こんな毛虫も飼ってみようかという気になるので、一応飼育してみました。そして成虫に。

ツマアカシャチホコ。成虫になるとちょっとシャチホコらしさが出てきました。

こんなポーズもなかなか可愛いツマアカシャチホコ成虫

 成虫はちょっと、お尻を突き上げたシャチホコ・ポーズの蛾になりました。多少は育てた甲斐があったというものです。どんな毛虫も一応飼育してみるのがいいですね。でも、どうにも絵にならない、人前に出せないような蛾になることも多いので、いちいち落胆しないおおらかな気持ちが必要です。

ポプラの芋虫第2弾は、ガクッとランクが落ちてオオキノメイガ

 ポプラ並木でオオモクメシャチホコの幼虫を探していると、別の芋虫が副産物として手に入ります。「おまけ」のようなものですね。おまけなので、大した価値はありません。おまけに大きな期待を寄せてはいけまんせんね。

 今回のおまけは、オオキノメイガです。初夏に折りたたまれたポプラの葉を広げると、そのの中には大抵オオキノメイガの幼虫がいます。

折りたたんだポプラの葉の中にいるオオキノメイガ幼虫。

 幼虫の姿は、他のノメイガと似た形態で、これと言って魅力があるわけではありません。なので、飼育しようなどと思う人もほとんどいません。

 それでもあえて飼育すると、大して魅力のないオオキノメイガ成虫になります。それでもあえてセールスポイントを挙げるとすれば、ノメイガの仲間としてはかなり大型という点ぐらいでしょうか。

 オオモクメシャチホコの幼虫が見つかった時の「おまけ」、見つからなかった時の「残念賞」のようなものです。

オオキノメイガ成虫。小さいようだが、ノメイガの仲間の中では大型。

 オオキノメイガの幼虫を飼育している人がもしいたら、それは大抵悲しい「残念賞」ですね。今年は嬉しい本命についてきた「おまけ」でした。

尻の角からミミズを出す不気味なイモムシ、オオモクメシャチホコ幼虫

 オオモクメシャチホコの幼虫は、刺激されると尻の角から、ミミズのような不気味な物体を出すことで知られています。

 この角は、尾脚と呼ばれるイモムシの一番後ろにある足が変化したものらしいです。シャチホコ蛾の仲間には、尾脚が角のように変化したものが多くいますが、そこから手品のようにミミズを出すという技を持っているのは、モクメシャチホコの仲間だけかもしれません(他にもあったら失礼)。

お尻の角(尾脚)からミミズのような物を出して威嚇するオオモクメシャチホコの幼虫。

角から出たミミズの部分を拡大。今回の幼虫は2本の角のうち1本だけしか機能していなかった。残念。

1方の角からだけミミズのような物体が出ている。

オオモクメシャチホコ幼虫の正面顔。

腹部中央の白黒の模様が腹脚近くまで達するのがオオモクメシャチホコ終齢幼虫の特徴のようだ。

 

 

 頭の後ろから肉角を出すアゲハ蝶の仲間の幼虫、尻の角からタンポポの種のような物を出すウラギンシジミの幼虫と並んで、モクメシャチホコの仲間の幼虫は、不思議なイモムシです。

 モクメシャチホコの仲間のもう一つの特徴は、木の幹に張り付いたドーム型のカチカチの繭です。羽化した成虫が脱出した後の、大きな穴の開いた繭は目立つので、多くの人が目にしたことがあるはず。

 あのカチカチの繭から、柔らかい蛾がどうやって脱出できるのか、不思議ですね。脱出する際の穴、脱出の際に取り除かれる蓋のような部分を見ると、容易に蓋を開けられる仕組みがあるように思えます。イラガの繭からイラガ成虫が出てくるのと同じ感じなのかもしれません。

成虫が出た後のオオモクメシャチホコの繭。岩のようにカチカチだ。

繭からの脱出口は蓋のようになっているので、脱出するのはそれほど大変ではないのかも。

オオモクメシャチホコの成虫。木目模様が鮮やか。

 モクメシャチホコの名は、成虫の翅の模様が木目調だからのようです。尻の角からミミズを出す幼虫、岩のようにカチカチの繭、素敵な木目調の成虫と、オオモクメシャチホコは成長過程ごとに楽しみの多い蛾ですね。今年は1匹だけしか見つけられませんでしたが、来年はポプラ、ヤナギ、ヤマナラシなどの木でもっと丹念に探そうと思います。

クルミの木で怪獣エレキング発見。モンホソバスズメの幼虫。

 クルミの木で先月、怪獣エレキングを発見しました。などと言っても、エレキング自体、今時知っている人はほとんどいないかもしれません。ウルトラセブンなどウルトラシリーズに登場した強力な電撃を発する怪獣です。

クルミの木で怪獣エレキング発見。モンホソバスズメの幼虫と思われます。

 あの奇抜なデザインは、一流ブランドのデザイナーも真っ青といった感じ。それが、クルミの幼木の葉を食べていたのです。調べてみると、どうやらモンホソバスズメの幼虫のようです。

 クルミの木は、いろいろと上物の虫がいるので、要チェックですね。今回のモンホソバスズメは、蛹までなったのですが羽化せず死亡してしまいました。来年また探します。

モンホソバスズメの幼虫。成長すると斑紋が大きくなりました。ますますエレキングですね。

 モンホソバスズメの幼虫のお尻には、スズメガの仲間特有の長いトゲのようなもの(尾角)がありますが、危険性はないのでご安心を。エレキングのように電撃を放つことはありません。