虫撮る人々

地球は人間の所有物と思ったら大間違い。虫も獣も鳥もいる。昆虫記者の私的ブログです。

昆虫芸術作品、マドガ幼虫のぺーバー・フラワーならぬリーフ・フラワー

 昆虫が作り出す芸術作品は数多いですが、最近になって作品の出来栄えにうならされたのが、マドガ幼虫のペーパー・フラワーならぬリーフ・フラワーです。

ドガ幼虫のアート作品(左)とマドガ成虫(右)

 なぜこれまでこの作品に気付かなかったのか。それは、彼らの作品が目立たず、ひっそりと展示されているからです。

 マドガの幼虫は、センニンソウ(ボタンヅルも巻くそうです)の葉に切れ込みを入れて、まるでペーパー・フラワー作家のように、きれいな渦巻状の造花を作り出します。しかし、その渦巻は地面の方に向いているので、葉をひっくり返さない限り、作品を鑑賞することができないのです。

探せば結構たくさんあるマドガ幼虫の芸術作品。この中だけで4つの渦巻が見られる。

非常に芸術的なマドガ幼虫の作品。作者の顔が見たくなりますね。

 

リーフ・フラワー作品の作者はこの方です。

ドガの蛹。地面に降りて蛹化するようです。

ドガ成虫の姿も芸術的。昼間に活動するので見かける機会は多い。

 

作品が人目に触れにくいのは残念ですが、作品が下を向いているのは、合理的なのです。上を向いていたら、雨水や自分の糞が造花の中に溜まってしまって、不衛生だし、敵にも見つかりやすいですね。

 マドガ幼虫の作品が目立つ時期は、関東では6月前半。マドガの成虫は小さいですが、これまた芸術的デザインなので、造花ごと幼虫を持ち帰って飼育するのも楽しいです。虫好きの皆様も、来年は是非、マドガ幼虫を飼育して、リーフ・フラワーの芸術作品と、成虫の芸術的姿をお楽しみください。

東京の気候は沖縄化しつつあるのか?。リュウキュウツヤハナムグリもヨツモンカメノコハムシも大繁殖。

 3月に紹介したリュウキュウツヤハナムグリが、その後夏に入ってどうなったか、確認してきました。やっぱり、すごいことになっていました。

 リュウキュウツヤハナムグリは、沖縄、奄美方面から東京湾岸に進出して急激に勢力を拡大している虫ですね。湾岸の幾つかの公園では、まさに馬に食わせるほどいます。

東京湾岸の公園で樹液に群れるリュウキュウツヤハナムグリ

カナブンが1匹、シロテンハナムグリが5、6匹いる以外はすべてリュウキュウツヤハナムグリです。

 なんと先日は銀座の歌舞伎座前の路上でも発見しました。きっと浜離宮あたりから進出してきたのでしょう。

通勤途中に銀座の歌舞伎座前で見つけたリュウキュウツヤハナムグリ

蛹室内のリュウキュウツヤハナムグリの前蛹。

蛹室内のリュウキュウツヤハナムグリの蛹。

 温暖化やヒートアイランド現象のせいもあって、最近の東京は、気候的に沖縄化してきていると言えるのかもしれません。以前は沖縄本島以南が生息地だったと言われるヨツモンカメノコハムシも、最近は都内のほとんどの公園に進出していますね。沖縄に行かなくても沖縄の虫が採集できるって、喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか、悩ましいです。

江東区木場公園のヨツモンカメノコハムシ。今やヒルガオにいるのはこいつらばかり。

 

ウチスズメの地味な上着の下に隠されたびっくり目玉

 ウチスズメは一見地味なスズメガです。しかし、この蛾を見くびってはいけません。ウチスズメの魅力は、普段は見せない下翅にあるのです。

 ウチスズメの下羽の模様は、色鮮やかなびっくり目玉。でも、この目玉模様は敵を威嚇するためのものらしく、平時には見せてくれません。

ウチスズメのびっくり目玉。これなら天敵も仰天するかも。

 その下翅見たさに、これまで2回、幼虫を飼育したのですが、寄生されていたり、羽化不全になったりで、いずれも失敗しました。そして今年、昆虫文学少女の麻由子ちゃん宅から幼虫を分けていただき、再挑戦。

 麻由子ちゃん、ありがとう!。今回は羽化に成功しました。しかし、脅してもすかしても、ほとんど下翅をみせてくれません。

 しかたなく1日プラケースに入れたままにして、翌日に再チャレンジ。狭いケースの中で、翅がかなり擦れて傷んでしまったのですが、それでも何とか、びっくり目玉を拝見できました。

ウチスズメは上翅だけ見ると非常に地味なスズメガです。

ようやく見られた憧れのびっくり目玉。かなり傷んでしまったのが残念。

 刑事コロンボの薄汚れたレインコートのような上翅の下から、突然現れる色鮮やかな目玉模様。天敵もびっくり仰天することでしょう。

 女性の前でコートを広げて一物を露出するフラッシャーの姿を一瞬思い浮かべましたが、ウチスズメのフラッシュは自己防衛のためのもので、公然わいせつ罪にはなりません。こんなフラッシュなら、いつでも大歓迎です。

 ついでにウチスズメの幼虫もご紹介します。なかなかに器量良しです。主にヤナギにいるので、出会う機会がもっと多くてもいいと思うのですが、近所で見つけたのは2回だけ。来年はもっと丹念に探そうと思います。

なかなかに器量良しのウチスズメの幼虫

 

難敵コムラサキ、今年も幼虫飼育に失敗

 今年もコムラサキの幼虫が見つからなかったので、昆虫文学少女の麻由子ちゃん宅から1匹、若齢幼虫を分けてもらいました。

 しかし、順調に終齢幼虫、蛹にまでなったのに、羽化することなく★になってしまいました。悲しい。😢

コムラサキ幼虫(左)と成虫

今年も幼虫を探したのですが、見つかったのは抜け殻になった蛹だけ。

麻由子ちゃん宅からもらった幼虫。冒頭の写真の終齢までは順調だったのに。

コムラサキ蛹。今年はこのまま黒くなってお亡くなりになりました。

 そこで少しでも悲しみを癒そうと、コムラサキの成虫が結構多い水元公園へ。かなり翅が傷んでしまっていましたが、今年も水元コムラサキは健在でした。

 コムラサキは雄の翅が紫色に見える角度で撮らないと、全く絵になりませんが、これが結構難しい。コムラサキの紫色は構造色なので、光の当たる角度がよほど良くないと、翅全体が紫色にならないのです。

 これまでの経験では、やや後方から光が当たっている状態のコムラサキを、前方から撮るといい感じになることが多いかも。

この角度では、紫色に見えたのは、後翅の一部だけ。

この角度では前翅の片方だけが紫色に。

ようやく4分の3が紫色に。冒頭の写真が一番きれいに紫色が出ました。

 光の当たり方が悪いと、まるでキマダラヒカゲのような茶色の蝶になってしまいます。紫色の輝きを完璧に撮るには、やはり自宅で羽化させた方がいいのですが、その課題はまた来年に持ち越しです。「将来の課題があって、やりがいがある」というのは、負け惜しみです。く、く、悔しい。😢

昆虫記者の節穴の目では見つからなかったウラゴマダラシジミの幼虫

 ミドリシジミなどキラキラの蝶が多いゼフィルスの中で、ウラゴマダラシジミは一番地味な蝶と言ってもいいくらいですが、なぜか気になる蝶でもあるのです。

 ヤマトシジミやルリシジミを巨大にしたような姿なので、過去にはミドリシジミよりルリシジミに近い種類と考えられていたこともあるようです。でも、そんなことよりも気になるのは、簡単に見つかるはずの幼虫が、なぜか昆虫記者の節穴の目では捉えられないという点でした。

ウラゴマダラシジミ成虫(左)と終齢幼虫

 シジミチョウとしては相当に大きな蝶なので、幼虫もかなり大きいはず。そして、その食樹はどこにでもある低木のイボタ。成虫を見かける場所なら、昆虫記者の目がよほどの節穴でない限り簡単に幼虫も見つかるはずなのですが、どうしても見つからない。

 その謎が今年解けました。そして幼虫をたくさん見つけました(4月末のことです。成虫は5月後半から現れます)。

 ウラゴマダラシジミの幼虫の擬態は、これまで目にしてきた擬態とはちょっと趣きが違っていたのです。

 終齢の大きな幼虫と蛹は、イボタの葉を一回り小さくした程度の大きさで、イボタの葉裏にきれいに張り付いていたのです。その様子は、イボタの葉を裏側に膨らませたような感じで、芋虫の質感がほとんどなかったのです。

この葉裏にウラゴマダラシジミの幼虫がいます。

これが葉裏のウラゴマダラシジミ幼虫。もしかしたらもう蛹かも。

ウラゴマダラシジミ幼虫。葉が裏側に膨れたように見える。

 つまり昆虫記者はこれまで、普通のイモムシ探しの延長線上でウラゴマダラシジミの幼虫を探していたので、やつらを見つけられなかったというわけ。

 今年も幼虫に出会えないだろうと半分諦めながら、ひっくり返したイボタの小枝をじっくり眺めていた時、この奇妙に膨れた葉の存在に気付いたのでした。そしてそれこそが、ウラゴマダラシジミの幼虫だったのです。

翅になる部分が分かるので、これは確実にウラゴマダラシジミの蛹。

蛹を腹側から見ると、成虫の顔らしきものが見える。

これは確実に幼虫。

幼虫を腹側から見るとこんな感じ。芋虫であることがこれで分かる。

幼虫をひっくり返すとこんな感じ。

 1匹見つけれはあとは楽勝。次々と幼虫や蛹を発見。これで来年からは、毎年幼虫の飼育や、成虫の羽化が楽しめるでしょう。

ウラゴマダラシジミ成虫

 

イラガとイラガセイボウ、どっちが出るか、どっちが出たかは一目瞭然?

  最近ファーブル昆虫展(東京でなく名古屋の方です)関係の取材とかで忙しくて、全然更新できていなかったので、連休中に少しは遅れを取り戻したいと思います。

 まず今回は、イラガの繭からイラガとイラガセイボウのどちらが出てくるか、どちらが出た後の繭か、その違いについて考察(というほど大したものではない)します。

 今年は2つの繭からイラガ1匹、イラガセイボウ1匹が羽化しました。と言っても、気付いたのはイラガが羽化した時なので、イラガセイボウは既に死亡していました。 

 とりあえず、イラガとイラガセイボウ(すでに死亡)を並べて撮影してみました。

イラガ(左)とイラガセイボウ

 これまでの経験では、イラガセイボウは5月半ばぐらい、イラガは6月半ばぐらいに羽化することが多いようです。発生確率は半々ぐらいか。

 イラガの繭からの、イラガ成虫とイラガセイボウの脱出の仕方には大きな違いがあります。イラガは繭上部の蓋のような部分を押し上げて出てきますが、イラガセイボウは蓋を無視して、繭の壁の一部に適当に穴を開けて出てきます。

左がイラガセイボウが出た後、右がイラガが出た後の繭

イラガ成虫は繭の蓋を背負うような形で出てくる感じです。

 たぶん「スズメの小便タゴ」と呼ばれているのは、イラガ成虫が出た後のきれいに蓋が開いた繭の方だと思います。イラガセイボウが出た後の繭は、鳥の巣箱とでも呼んだ方がいい感じです。

 

 イラガ成虫が実際に出てくる瞬間は目撃していないので、繭と蛹の抜け殻の状況からおおよその状況を推測してください。

 

 セイボウの出てくる瞬間も目撃していないので、恐らくこんな感じではないかという、やらせのシミュレーション写真で想像してください。

イラガセイボウはたぶんこんな感じでイラガの繭から出てくるのでしょう。

 今回イラガセイボウが出てきた繭は、最初からイラガでなく、イラガセイボウが出てくることが分かっていました。はっきりとしたイラガセイボウの産卵痕があったからです。イラガセイボウだけを出したいなら、そういう繭を探すのがいいですね。

写真中央がイラガセイボウの産卵痕。これがあれば中からイラガセイボウが出てくる。

 でも産卵痕がはっきりしないのもあるので、イラガが出てくると思っていたら、イラガセイボウが出てきたというケースもあります。ガチャガチャ(カプセルトイ)のように、何が出てくるか分からないというのが、楽しいのかもしれませんね。

イラガセイボウ生前のお姿。

良い姿勢のイラガ成虫の姿。

 

今年はニジュウシトリバの当たり年?

 今年はなぜか、ニジュウシトリバ(正式名はマダラニジュウシトリバ)に良く出会います。これまでずっと探していたのが嘘のようです。最初は真冬のトイレで出会い、1%ぐらいの期待を抱いて持ち帰ったスイカズラの花からは2匹も羽化して、つい先日は初夏の長池公園で飛んでいるところを目撃、葉裏に止まった姿を撮影できました。

マダラニジュウシトリバ。この小さな蛾が飛んできた瞬間にニジュウシトリバだと気付く虫屋の勘。

拡大すると24本の羽根が確認できる。

 一度見つけると、その後は嘘のように簡単に何度でも見つかるというのが、虫探しの重要法則の1つです。生息環境や、姿かたちの特徴などの知識に加えて、虫屋独特の勘が獲得されるようです。

 長池公園では「南大沢昆虫便り」の鈴木氏との嬉しい出会いもありました。なんとかケブカカミキリという珍しいカミキリを、ヒメコウゾの茂みで探していたようです。今回は見つからなかったようですが、近くで発見例があるらしいので、そのうち長池でも見られるようになるかもしれません。

珍種カミキリを探す「南大沢昆虫便り」の鈴木氏

 昆虫記者の節穴の目で見つけられたカミキリは、クビアカトラカミキリと、朴の木の常連のフチグロヤツボシカミキリぐらいでした。

クビアカトラカミキリ。目立つ姿はハチ擬態なのかも。

朴の木の常連、フチグロヤツボシカミキリ。

 珍しい種ではないですが、ナミガタシロナミシャクを見つけると、造形美という言葉を思い出します。この蛾の模様は大理石のようでもあり、バームクーヘンのようでもあります。ナミガタシロナミシャクなんて舌を噛みそうな名前よりは、大理石シャクガ、とか、バームクーヘン・シャクガとか俗称で呼びたいですね。

バームクーヘン蛾、大理石蛾と呼びたいナミガタシロナミシャク。

この造形美は、いつ見ても感心する。

以下に今年のニジュウシトリバの記事のリンクを付けておきます。

mushikisya.hatenablog.com

mushikisya.hatenablog.com